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カテゴリ:水彩画紀行
9月13日に、ふたたび南米へ出立することになり、 その前に、季節の気配のする自然の中ですごしたくなった。 何気なく車を走らせてたどり着いた先は、静かなお花畑。 題して、「名残りの夏の楽園」 谷川岳に近い宝台樹の南斜面にひろがる、やすらぎの森。 山麓を切り開いた白樺のキャンプ場。 そこに森を切り開いた広大な自然花園があった。 夏の激しさを失った晩夏の光は優しく花弁を包みこみ、 盛りをすぎた花は、かえって静かな趣きをたたえる。 光背と言うように人も花も光を背にすると、いっそう輝きを増す。 風が花弁をなでて過ぎると、秋桜は可憐な笑みを浮かべる。 「この世で、もっとも素敵な場所はここですよ。」 そんな風に誘っているような白樺の木下の椅子。 名残りの夏は、そんな風に過ぎていきました。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 山の端に日が沈むまで、そこですごして、その夜は宝川温泉へ。 渓流沿いに広大な露天風呂が三つも広がる一軒宿の汪泉閣。 深夜、山菜を肴に酔った身体を運んで、再び入ると、 湯けむりの向こうに淡い白い人影があった。 この夜の顛末を、今昔物語風に述べると・・・ 「今は昔、武蔵野の方、清瀬なる里に男ありけり。 永き旅に出ずる前に心残りなからんと、 赤城の峠を越えゆき、水上の奥深き湯の里に遊べり。 夜半になり物の音静まれば、渓流の逆巻く音、なほしきりなり。 夜更けて丑三つ時の刻なるに、眠れざるままに、 酔いのつれづれ、ふたたび、渓流に下りて、 湧き出ずる湯船に身を沈めたり。 眼つむれば、満ち来るものありて心静かなりしに、 ふと、もののけの気配ありて、いざなうものあり。 振り返れば、湯けむりの奥に白い人影、 近寄れば、白樺かとまごう肌白き女人なりける。 おりふし慈しみたる面影に似て、静かなる笑み湛え、 水面に揺らぐ裸身、淡き夜の灯に朧なりける。 しばし時流れて、男、ふと眼をあければ、 はかなき夢や、うたかたもなく消えゆきたり。 淡き一条の夢か、うつつなりしか定かならず。 今はただ、水音ばかりしきりなりけり。」 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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