ジェイ・グレイドン、AORのカリスマ的プロデューサー、ソングライター兼ギタリスト。
お正月にふさわしい、明るい音楽を紹介したいと思う。
JaRの『Scene 29』
さて、このユニットは何なのか。
JaR/SCENE 29
ポニーキャニオン JaR/SCENE 29
SCENE 29 / JaR
■送料無料■JaR HQ-CD 【SCENE 29】08/12/17発売
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まず、前置きが長いのだが、
AORというのは、もともと和製英語でAdult Oriented Rock(AOR)のことだが、英語では、むしろAdult Contemporary(AC)といった言い方が近いようだ。
AORは、どんな音楽かと言えば、
例えば、
ボズ・スキャッグス(初期を除く)、
ピーター・セテラがいた頃やビル・チャンプリンが加入してからのCHICAGO
マイケル・フランクス、
ジノ・ヴァネリ
ボビー・コールドウェル
などなど、やはり「大人」のテイストにあった洗練された音楽をいう。
ジェイ・グレイドンは、LAのスタジオ出身のミュージシャンで、そんな中で、
スティーリー・ダンの名曲「Peg」のギター・ソロで、
その他のなうてのギタリスト、例えば、
ラリー・カールトンや
スティーブ・ルカサー、
リー・リトナー
などのソロをおしぬけて採用された
独創的なソロで、その名を知られ、
マンハッタン・トランスファーの「Extentions」をプロデュースし、
Weather Reportの名曲にして分厚いサウンドの「Birdland」を、ボーカル4人で表現させたり、アルバム中、ちょっと異色の「トワイライト・ゾーン」という曲の間奏での、切り立ったエッジのきいたギター・ソロを披露するなど、その才能を開花していった。
その他、
アル・ジャロウ、
ディオンヌ・ワーウィック
などのアルバムをプロデュース。
しかし、一躍その名をとどろかせ、AORの金字塔的サウンドを確立したのが、
プロデューサー、コンポーザー兼ピアノ・プレイヤーのデビッド・フォスターと作り上げた、1枚限りのアルバム「Airplay」だ。(1980年)
このサウンドは、その後のAOR、フュージョン系の音楽の音作りに決定的な影響をあたえ、日本のミュージシャンも、好んで「Airplay的」なサウンドを取り入れていった。
ぼくは、一時、ジェイグレイドンのサウンドのとりこになり、彼がプロデュースしている他のアーティストのアルバムはもとより、彼が伝説的なギター・ソロを弾いている曲が1曲でも入っている他のアーティストの作品も出来る限りあつめて聴いた。
その後1990年代に一時、「Planet 3」というユニットをつくって、ジェイ・グレイドンのギター・ソロを楽しませてくれたが、正直言って、「Airplay」の時代のサウンドを超えるものではなかった。
一方、
今回の JaRのデュオ・プロジェクトの相方のランディ・グッドラム。
彼は、キーボード・プレイヤーにしてコンポーザー。
アン・マレーや
マイケル・ジャクソン、
スティーブ・ペリー(元ジャーニー)
TOTO
ジョージ・ベンソン
にも曲を提供し、自分のソロ作品も発表している。
そんな、ふたりが過去にもコラボレーションしており、
デバージ、アル・ジャロウなどで、一緒に作詞作曲していたりした。
それが、ここにきて、JaRという名義で『Scene 29』
という、とてつもないCDを発表した。
二人とも、作曲作詞し、歌い、ジェイがギターの他、シンセ、ドラムス
ランディが、ピアノ、キーボード、シンセ、ドラムス
で、すべての曲を作っている(2,3ゲスト・ミュージシャンはいるが)
アルバム1曲目の「Cure Kit」では、軽快なイントロから、ちょっと甘く抑え気味のランディのボーカルが響く。まるで、マイケル・フランクスを彷彿とさせる歌だ。まさに、これぞ典型的西海岸AOR。
ベースラインもカッコイイ。ドラムスが今風に硬い。
ジェイグレイドンのエフェクトのかかったコーラスも「Airplay風}
聴き始めたら、すぐにうきうきするサウンド。
キーボード・ソロ
出た、ジェイ・グレイドンの疾風感満点のギター・ソロ。
そう、このサウンドをぼくは待っていたんだ!
ジェイグレイドン・サウンド。あのころのAOR、でも、決してなつめろ的ではない、今のAOR
2曲目の「Call Donovan」では、サウンドがちょっとクールで、ステーリー・ダンを思わせるサウンド。
でも、二人のボーカル・コーラス、
ジェイ・グレイドンの表情をどんどん変えていく上昇流に乗ったギター・ソロ。
最後のコーラス奏法は、でも、スティーリ・ダンではなく、まさにジェイ・グレイドン流。
たしか、CDショップの店頭では、オススメ文に「Airplay Meets Steely Dan」とか「TOTO meets Steely Dan」と書いてあった気がする。
しかし、CDを聴き進むにつれて、これは、
スティーリー・ダンのオマージュ・アルバムでもなければ、TOTOでもAirplayでもなく、
まさに、新世紀のAOR、80年代のAORではなく、今の、まさに現在進行形のAORであることがわかる。
TOTOのスティーブ・ルカサーが
"You guys have taken the torch from Steely Dan
and have run miles and miles ahead"
「JaRのふたりは、スティーリー・ダンから灯火を受け取って、何マイルも何マイルも先へ進んでいった(サウンド)」
といっているが、これは、一面の真実であるけれども、すべてではないと思う。実際、ランディは
「僕らはちょっぴりジャジーなテイストを加えた、ハイ・クオリティなウェスト・コースト・ポップを書くためにベストを尽くした」
と言っているように、JaRの「Scene 29」は、日本流にいえば、21世紀の新しい西海岸AORの形を提示したのだと思う。
そして、それは、ぼくが待ち望んでいたサウンド。なつめろではないAOR、もしくはアダルト・コンテンポラリー。
サウンド、ボーカル・ワーク、コーラス、
ジェイ・グレイドンのまるで、ハンティントン・ビーチの波をサーフィンで、斜めに滑り降りるようなスリリングで痛快なギター・ソロ。
すべてが僕の好みだ。
ロックでもジャズでも、フュージョンでも、サーフ・ミュージックでもない、
でも、その要素のすべてが軽やかなポップ・サウンドに隠し味的にブレンドされた音楽。
難しいことは抜きにして、このCDをクルマのカーステレオのHDDに入れて、湘南の海沿いをドライブしたら、どんなに気持ちいだろうか。
国道134号線を逗子から江ノ島を通りこうして、辻堂方面に走る。
運転席からは、左側に海が見える。
正月休みの静かな海面に、低い位置にある太陽の光がキラキラ、テラテラと輝いている。
そんな情景が、すぐ目の奥に浮かぶ。
いつかはしった、LAの市街地から、ベニス・ビーチやマリブ方面に行くために走るルート○○。(何番か覚えていない)
あそこは、やっぱり午後になると、進行方面、真正面に太陽が傾いてきて、
運転できないくらい、すべてがキラキラに輝いていた。
そんな、カッコよくて、軽快で、明るくて、爽快で、うきうきするサウンドで、
疾風や波を滑り降りるごときスリリングなギター・ソロをすべての曲でたっぷり堪能できる、
どんなに言葉を尽くしても表しきれない、
LAからでなければ、生まれなかった、前向きで未来志向の、
21世紀になって生まれた最高のAORだと思う
超、ちょ~~オススメです。
追記
HQCD(High Quality CD)なので、音質がすごくいいですよ♪