ベイブ
おやっさんが壊れていくのを楽しむ作品? 羊泥棒に対処しているときは無茶苦茶カッコよかったのに、なにをトチ狂ったのか子豚相手にショットガンをもちだす行動にはたまげた。まぁ、最後はカッコいい彼でいてくれたから終わりよければすべてよし、か。 彼は言葉を知っていたというより朴訥な人柄――田舎者の高級表現――のため語彙が少ないことが幸いして言葉がでた気がするぞ。なにはとも、あれいうべきことをいうべきときに口にできるのは素晴らしいことだ。単純だが、とても大事で難しいことなので。 子豚ベイブの人生からいろいろ考えてみたものの、レックスのような障害を「排除」しなければ牧羊ブタなどになれるわけもなく、どうしても運か策略は必要という結論になってしまいそうで苦しい。家畜の機能を個性におきかえて考えようとすることに無理があり、そのように造ったものはそのようにしか使えないのが現実か。 それでもベイブの活躍にいちまつのリアリティがあるのはブタの前身がイノシシという神に奉られることすらあった勇ましい動物だからだろう。犬の前身であるオオカミも神に奉られていたことを思うと、二種の動物にあらわれた運命の差にため息がでる。 動物映画として、二種類以上の動物が思い通りに動くまで撮影をくりかえしたであろう根気を想像するだけで眩暈がする。よほど生態に詳しくなければできないのではないか。牧羊犬たちも見事なエキスパートぶりを発揮してくれたけど、画面の裏でも多くのエキスパートが活躍していたのだろうな。