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カテゴリ:韓国関連
2025年7月15日 PM1時30分 世田谷・君島の事務所
昨日の電話の通り大水建設の社長が役員を連れて君島の事務所を訪ねてきた。 「急な話でお邪魔して申し訳ありません、私大水建設の若原と申します、隣に居りますのが専務の田宮でございます」 「君島です、どうぞおかけください」 「ありがとうございます」 「今日お邪魔致しましたのは君島さんが今度携わられる韓国の事業の話です」 「はい・・・」 「18日には韓国に発たれると聞きまして、日本にいらっしゃるうちにと・・」 「実は私たちもどこまで関わるかまだはっきりしていない所もありまして」 「実は弊社の韓国のソウル支店からの情報だと、君島さんがトップになられる組織が開発事業に関する発注の権限を持たれるとか・・」 「いや、本当に分かりません、そうなるのかそうじゃないのか・・」 「メインの工事は、おそらく競争入札の形にはなろうかと思います、しかし周辺工事は任意発注の形になるのがこういった場合の流れなのですよ」 「そうなんですか?」 「はい、メイン工事は3~4社でのジョイントベンチャーの形になるのは間違いありません」 「やっぱりJVの形になるんでしょうね」 「そうなんです、しかし宿舎の工事や最初の土木工事は任意発注の形が多いのです」 「君島さん、何とか任意発注の部分で我が社を使っていただけないでしょうか?我が社は今まで海外での工事実績も数多くありますし、ご存知のように日本ではナンバーワンの総合ゼネコンです」 「大水建設さんのことは昔からよくお名前を聞いて知っています」 「そうですか、ありがとうございます」 「しかし、本当にまだ何も分からないのです、18日のソウルに行って実際に事業が動き始めれば少しは流れがつかめると思いますが・・・」 「田宮君、あれ、お渡しして」 「君島さん、些少ですが韓国に行かれる御餞別です」 「すみません、こういうことは無しにしましょう」 「いや、ホンの気持ですので」 「いやいや、こういうことで縛られたくないのですよ、本当にまだどうなるか分かりません、それにこんな物をいただかなくても、日本の土木工事は世界のトップレベルですから、普通に競争されれば勝てるでしょう」 「今、世界でも10年以上にわたって行われる大規模な工事はあまりありません、我が社の今後の10年を左右する工事と言っても大げさではないのです」 「心に留めておきます、私としても日本語で意思表示が出来る専門家が近くにいてくれた方がいいですからね、でも確約は出来ません」 「ではどうでしょう、我が社から土木・建設関係のスペシャリストを君島さんの秘書として派遣します、もちろん給料は我が社が払いますので君島さんにご負担はかかりません、君島さんさえよろしければ明日にでもお伺いさせますが・・」 「いい話ですが考えさせてください」 大水建設の社長も必死なのだろう、あの手この手で篭絡してこようと話をしてきた。 しかし技術者を派遣してもらうのは魅力的だ、技術的な専門家はいた方がいい、しかし大水建設のひも付きというのが気に入らない・・・何かいい方法はないものだろうか・・・ 「もしもし・・小村さんですか?君島です、はい、先日はお疲れ様でした・・実は・・・」 君島は小村に電話をかけ相談してみた。 小村の意見は、専門家を置く事は賛成である、しかし君島が思っているように一企業の援助を受けるのはよくないとの意見で、具体的には一旦会社を退職してもらいこちらで給料を払って来てもらっては?という考えであった。 やはり工事現場を管理するエキスパートは必要で、しかも日本語で意思の疎通が出来る人間が好ましい。 君島は大水建設の社長に連絡を取り、申し出をお受けすると伝えた。 だだし、小村と話した内容の条件を満たして欲しい事、できれば韓国語の日常会話が出来るレベルである人などこちら側の意向を伝えた。 「君島さんそれなら打って付けの人間がいます、一昨年までソウル支店に赴任していて今は本社の建設施工管理部の次長をやっている有能な人間がいます」 「一旦大水建設を退職して、と言うのは大丈夫ですか?」 「はい、明日そちらに行かせますから、お会いになってみてください」 「わかりました、じゃあ明日午後3時ごろにお越しいただくようにお願いいたします」 「ありがとうございます、必ず行かせます、ご連絡ありがとうございました」 2025年7月16日 PM3時 世田谷・君島の事務所 「鎌ヶ谷さん、もうすぐ来ますのでじっくり観察していてください」 「任せてください」 君島は大水建設から来る人物の評価を鎌ヶ谷に頼んだ。 鎌ヶ谷の住まいは東京なので大阪の小村に来てもらうより来てもらいやすい、何より鎌ヶ谷は人を見る仕事を今まで長年やってきていたので目は確かだ。 「こんにちは、大水建設から来ました、佐伯雄二と申します」 「はじめまして君島です」 「鎌ヶ谷です」 「よろしくお願いいたします」 「ところで佐伯さん、まだお若いようですが・・」 「はい、37歳です」 「ご出身は?」 「三重県です、大学は名古屋工業大学、土木工学です」 「三重県のどちらですか?」 「菰野町という田舎です、今は四日市市に合併されましたが」 「菰野ですか?いい町ですよね、御在所のふもとで・・」 「良くご存知ですね、そうです御在所のふもとです」 「今回の話聞かれていますよね」 「はい」 「大水建設と言う大企業を退職する事になりますが、本当にいいのでしょうか?」 「はい、私は納得してまいりました、この事業に関われる事が自分のキャリアのステップアップになると判断しています」 「韓国に関しては?」 「はい、2年前までソウル支店にいまして、韓国の各都市はあちらこちらに行きました」 「何年ぐらい、いらっしゃったのですか?」 「はい、足掛け5年間いました」 「じゃあ韓国語は?」 「日常会話はこなせます」 「鎌ヶ谷さん、何か佐伯さんにお尋ねになりたいことはありませんか?」 「私からお伺いします」 「はい」 「佐伯さんは、韓国と言う国の印象はどうですか?」 「印象と言うと?」 「例えばこういう所がいいとか、悪いとか?」 「行く前からあまり言いたくないのですが、向こうの職人は手抜きがひどいのです、しっかり管理しないとすぐ手を抜きます、あのいい加減さは何とかならないかといつも思っていました」 「なるほど・・他には?」 「むこうの建設会社の強引な仕事のやり方でしょうか・・大きな工事の場合、土木部門、建築部門、設備部門、その他協力しながら仕事を進めないとかえって効率が悪くなります、しかし自分の会社の都合しか考えてくれない場合が多かったですね」 「あまり良い印象はないと・・・」 「いやそうでもありません、一緒に仕事をすると人懐っこさとか人間味あふれるというか、個人個人は非常に魅力的な人物が多いのです」 「そうですか」 「仕事を離れるといい友人になれそうな男は一杯いました」 鎌ヶ谷は少し考えていたが、佐伯についての評価が出たようである。 「君島さん」 「どうですか?」 「私は佐伯さんは戦力になると思いますよ」 「鎌ヶ谷さん、ありがとうございます、自分の持てる力を精一杯発揮して頑張らせてもらいます」 「鎌ヶ谷さんが太鼓判を押すなら間違いないでしょう、佐伯さん合格ですよ」 「君島さん、ありがとうございます」 「私たちは18日に韓国に行きますが、佐伯さんが来る段取りをつけてから連絡します、大水建設の引継ぎなど必要な事を2週間くらいを目処に済ませておいて下さい」 「承知しました、これからよろしくお願いいたします」 新たなメンバーが加わった、少しずつ体制が整ってきたように思える。 鎌ヶ谷も同じ気持だったようで、佐伯が帰ってから「いよいよですね」とつぶやいていた。 つづく お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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2009年02月27日 23時42分27秒
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