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カテゴリ:韓国関連
朴鉄圭が裏道を抜け京城に向かった翌日、高宗と共に京城への道を海沿いに取って進む文次郎達に驚くべき知らせが届いた。
「若狭隊長、聞かれましたか?」 「うむ、しかし本当だろうか?」 「おい!安達君、高宗に・・・いや、王様に言ったのか?」 「向井副長、まだです」 文次郎が返事をする前に、若狭が安達に言った。 「まだ言うな、裏を取ってからだ・・・向井副長、秋山少将に事実確認をしてくれ」 「わかりました、では行ってきます」 「頼んだぞ!」 若狭は文次郎が秋山の元へ行くのを見届けると、安達を見て考えながらつぶやいた。 「おい、安達。閔王妃が死んだというのは本当か?」 「はい、三浦公使から秋山少将に書簡が届いたようです」 「どこで死んだんだ?」 「景福宮です、朝鮮軍の護衛軍と民衆がなだれ込み、混乱の中で行方不明になっていたらしいのですが、死体が見つかったと・・・」 「なんとなぁ~、2年ほど前に岡本参事官が王妃を亡き者にしようと井上公使に進言した事があったが、井上公使は”馬鹿者!”と岡本参事官を一喝したんだ・・・しかし王妃がなぁ~」 「宮殿を守っていた100名のロシア兵も、ほとんどが死んだか逃げたらしいです」 「我々にとって、いい出来事なのか悪い出来事なのか?・・・」 若狭が空を見上げて腕組みをしていると、文次郎が息をきらして戻ってきた。 「若狭隊長、どうやら事実のようです」 「そうか・・・安達、高宗を呼んで来い」 「はい」 「向井副長、宮殿は今どうなっているんだ?」 「それが・・・」 「うん?」 「大院君勢力が事を起こしたようですが、その中に岡本参事官らしき人物がいるといううわさが・・・」 「本当か?・・・まだあきらめていなかったんだなぁ~井上公使にあれほど怒られたのに・・・どうも岡本参事官は、他国の王族を軽んじる傾向があったからな、自分が朝鮮の実権を握りたいという野望を隠そうとしなかったからなぁ~」 「もう一つ、悪い知らせが」 「なんだ?」 「大院君勢力に協力した、日本人の浪人たちが居たそうです。日本刀を武器にして切り込んだ30人ほどの男達がいたらしいです」 「岡本参事官の差し金か?・・・それはまずい事になったぞ」 「はい、秋山好古少将も事態をどう収めるべきか、参謀長の児玉中将閣下に相談すると言っていらっしゃいました・・・それと王様には自分から説明するから余計な事は言わないようにと・・・」 「わかった」 高宗が安達源六に連れられ文次郎達に近づいてきた。 「何か騒がしいようだが何かあったのかね?」 「はい、詳しいことは秋山少将から申し上げます、向井副長、王様を秋山将軍の所へ案内してくれ」 「お前達は何も知らないのか?」 「はい、京城で少々問題が発生したという事しか・・・」 「京城で?・・・私の今後の行動に影響があるのか?」 「いや、それは秋山将軍から話があると思います」 「あい、わかった。秋山将軍の所へ連れて行ってくれ」 若狭が目で文次郎に合図を送った。 文次郎はうなずくと、王様のほうを向き言った。 「では王様、私がご案内いたします」 京城では撤退したロシア軍が議政府で体勢を立て直すべく、ミシャローノフ大佐が孤軍奮闘していたが、事態を軽く見ていたロシア軍の本体はまだ義州から動いていない。ロシアの朝鮮方面の責任者クリパトキン将軍は戦況を完全に見誤まっていた。 宮殿を制圧した大院君勢力は、大院君の摂政としての地位回復を宣言し、再び大院君閤下(ハッパ)としての地位を取り戻したのである。 高宗無事奪還の知らせは、岡本参事官を通じて大院君勢力に知らされていた。それが大院君を王様として即位する事をためらわせたのである。 大院君自身は高宗が帰ってこなければ自分が王様として実権を振るうつもりでいたし、大院君の取り巻きもそうなる事を望んでいたが、高宗が無事なら大院君が王様になる大義名分が無い。 「秋山将軍、朝鮮の王様をお連れいたしました」 秋山好古は高宗の姿を認めると、大きくお辞儀をし椅子をすすめた。 「将軍、騒がしいようだが何があったんだね?」 「はい、王様。非常に悲しい出来事ですが王妃様が御崩御されました」 「・・・?今なんと申した?」 「景福宮で王妃様がお亡くなりになりました」 「王妃が・・・なぜ死んだんじゃ?・・・病気か?それとも誰かに殺されたのか?」 「はい、王様、あなたのお父様が」 「なに?父上が?」 「はい、昨日の未明に総勢300名で宮殿を襲い、王妃を含め王妃派の大臣達など10名以上が殺された模様です」 「本当かそれは?」 「はい・・・王様の父上は、大院君閤下として王様の摂政を宣言なさったようです」 「・・・・」 「何を意味するのかお分かりになりますね?」 「私も命を狙われるという事か?」 「はい、お父様の大院君はそう思っていなくとも、取り巻き連中は王様がいると邪魔ですからね、どんなはねっかえりが現れないとも限りません」 「どうなっていくんだ我が国は?・・・私はこれからどうしたら良いのだ?」 「王様、予定通り明日金浦郡で我が国の軍隊と合流しましょう、その頃には私の上司から指示が届いているはずです、決して王様にとって悪い話にはならないと思います」 「そうだろうか・・・」 つづく お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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