カテゴリ:誘水日記
高校野球の特待生がいけないって話、大波紋だ。
僕が中学のころだから35年ほど前の話になる。 小さな中学校だけど、僕らの世代は野球部がすごく強くて、県大会で優勝して、東海地区大会まで行った。 何のとりえもない田舎の中学校なので、とんでもない大ニュースだった。 ちなみに、1学年100人ちょっとの規模だったけど、2人東大へ行ったからね。スポーツも勉強もなかなかの粒ぞろいだったんだろうね。 野球部の連中、県内や隣の県の甲子園常連校からスカウトに来ていた。特待生という扱いで(授業料免除)で来ないかという話だったように思う。 結局、だれも行かなかったけど、特待生制度は、高校の経営戦略として昔からあったことで、急に、大問題にして、出場辞退に追い込むなんて話は、何か裏を感じるよね。 そもそも、高校野球というのは、まず指導者。いくらいい選手を集めても、指導者の人間性や指導力がないと、勝てない。 逆に、地元の子どもたちだけでも、指導者が良ければ甲子園へ行けるはず。 野球をやっている子どもたちが甲子園へ行って、活躍して、プロへ入って、さらに大リーグという夢をもつことはすごくいいと思う。そのためにも、強い高校へ行きたいと願うのも当然のこと。ただ、レベルの高い高校へ行ったら行ったで大変だと思うよ。中学校で優等生だった子どもが、超一流の進学校へ行って劣等性になってしまうのと同じで、10代には酷なくらいに厳しい環境が待っていると思う。 それを覚悟して行く必要があるけど。親もそうだよ。 ある高校にすごいピッチャーがいた。 でも、彼は勝負弱かった。 いいところまでいくのだけれども、勝負どころでフォアボールを出して自滅してしまう。1年からエースだったが、県の決勝で延長負け。二年も同じ。三年のとき、決勝まで勝ち残り、途中までリードしていた。甲子園がチラチラと見えてきた。ところが、8回に急に乱れる。また悪魔が近づいてきた。マウンド上の視線は宙を泳いでいた。彼は、自らマウンドを降り、監督に替えてほしいと頼んだ。もうこの時点で勝負は決していた。リリーフ投手が打たれた。負けた。 2度あることは3度あるだった。1年のとき、エースは号泣した。2年のとき、エースは仲間に抱えられるようにして学校へ帰った。3年のとき、エースはだれも声をかけられないほどの放心状態だった。 17歳の少年がすべての責任を背負って、宇宙の中にたった一人でたたずんでいたのだ。 そこへ一人の男性が血相を変えて飛び込んできた。 「謝れ! みんなに謝れ! お前のせいで負けたんだ。土下座して誤れ!」 男は泣いていた。 父だった。エースの父親だった。 エースは、もう30歳近い年齢になっている。きっと、家族があって、子どももいることだろう。まだ、野球を続けていると聞くが、彼にとって17歳の夏の経験はどんな形で残っているのだろうか。 彼らは人生をかけて野球をやっている。 もし、大人の思惑で振り回されるなら、彼らがあまりにもかわいそうだと思う。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[誘水日記] カテゴリの最新記事
|
|