中日新聞6・27夕刊映画靖国の特集記事に思う
中日新聞六月二十七日夕刊に映画靖国の特集があった。名古屋での映画上映延期についてのレポートである。二十八日の公開に向けてのタイムリーな企画というわけである。 このサブタイトルは『映画館のあり方を問う』三田村泰和、岩田真由子記者の記事。 名古屋唯一の上映予定館シネマテークは当初、五月三日の上映予定。「全国他館が上映中止の決定をなし、予定通りの上映は無理だと結論を出した。余りに負担が多すぎた」。平野支配人は振り返る。(中略) 上映中止の結論を出したのは四月一日。同じ日、映画の内容を疑問視した愛知県岡崎市の塾経営、杉田謙一さんが同館に電話した。翌二日、もう一人と館を訪ね、平野さんらと二時間話し合った。 杉田さんは『靖国神社を奉賛する個人の立場でうかがった』といい、『公序良俗に反しない限り、どんな映画も自由だ』と言論の自由を語る。『しかし、この映画は出演者の合意や自衛艦の肖像権、助成金の出し方などいくつも問題点がある』と疑問視する。『靖国神社のどこがいけないのか。シネマさん(シネマテーク)とはそのお話がしたかったのに、靖国神社に行かれたことすらなかった』直接訪れたのは杉田さんらだけだが、メディアが『靖国』を報じるたびに電話やメールが同館に計数十件寄せられた。(以下略) 今までの朝日やNHKの報道姿勢たる、映画側は善、クレーム側は表現の自由弾圧者で悪との対比報道とは異なり、やや客観的な表記であり、私のブログに訪問くださった多くの「私への批判者」のとげのある批判と比べ、事実経過は真実に近いものではある。その点では事実報道の姿勢として、記者に敬意を払いたい。 しかし、問題はまさにそこである。「電話やメールが同館に計数十件」とあるがほんとであるのか。嘘ではないのか。批判できる程関心を持ってくれていた人がそれほどあるならその1・2割は私の元に届いていてもおかしくない。保守派の方や、右とされる方に実はそれほど行動される方はいるのだろうか。あのとき朝日記事に載った際、おおくの知人は「またくだらん映画騒動が」との傍観視や『ブログ閉鎖』アドバイスのみ。抗議するにせよ匿名ではしないでしょう。ネットを開けばお分かりの如く映画側の立場の大合唱。 全国で、ほんの数人の抗議があった段階で朝日は『言論の自由への弾圧』とのトーンで報道。いまだに、待ち受けた『たった一つ?の抗議』にたより、言論表現の自由を標榜するメディアたる映画館を『ヒーロー』として登場させるのには無理があるのでは。言論を守る気概無きを批判すべきではないであろうか。 少なくとも当ブログ四月二十八日記載のシネマテークからの返事の【靖国YASUKUNI】上映に関する覚え書き 中に 某女性国会議員には先見の明があり、広告塔としての役割を担っていただいたおかげで、当館を含めて困窮する独立系映画館にとって、【靖国YASUKUNI】は救い神になるかも知れません。 とある。 いまだに、知人より、『杉田さんの名誉は回復されても、国家にとってよからぬ結果を生んだことに変わりはない』との言をいただくたび、残念な思いがする。結果責任を取れということなのだろうが。 朝日などによるこの映画への取り組みは引きつづき検証されねばならない。(四月初旬、朝日に全面広告の形で『映画靖国』の紹介が載る。数千万の広告料を朝日が負担した、あるいは二千万ほど減額したとの指摘もある。) 刀匠刈谷氏が削除を求めてみえないとする記事を載せるマスコミすらある。 今回の中日の記事は是枝裕和監督の言葉として、『文化の多様性を確保・成熟させるために助成金があるはず。使い道について議論があるのは構わないが、それはパブリック(公衆)の多様な価値観を保障するためであるべきだ。特定の政党や政治家が言うのは、逆に一つの価値基準に押し込めることになる。』とし、『今回は政治的権力の介入がそれを困難にしているということが如実に表れたと思う』と載せる。 中日もそれを結論づけている。 この結論が実に怖いあやまちである。捏造に近い。 税金たる助成金の支出基準は、政治的宗教的主張でないこと、日本映画であること、それに先立ち、加えるべきは捏造でないこと。これが資格である。「パブリック(公衆)の多様な価値観を保障するため」「特定の政党や政治家が言うのは、逆に一つの価値基準に押し込めることになる」の一般論には、たいした意味はない。 しかし、「今回は政治的権力の介入がそれを困難にしているということが如実に表れた」などは虚偽に近い主張である。 税金の使い方に議員がチェックするのは当然である。居酒屋タクシー。出張旅費ごまかしなどあるいは虚偽申請に基く生活保護費略取など、枚挙に暇がない。税金のこのましからざる使用をチェックできなければ議員のいる意味がないではないか。税金の使い方についての国会議員の当然果たすべき責務である。 『価値基準に押し込める』のではなく、これは「虚偽申請にもとづく税金略取」事件への調査ではないのか。 いまだ議論中の、今後議論すべき、重大なテーマであり、軽々に是枝裕和監督の言を、結論的に持ち出すのは大反対である。