アメリカを売った男
ビリー・レイ監督「アメリカを売った男」は、FBIの対ロシア問題の専門分析官であったベテランFBI捜査官ロバート・ハンセンが、20年近くにわたりアメリカの最高国家機密を旧ソ連のKGBに流し続けたスキャンダルな実話を映画化した傑作である。出演:クリス・クーパー、ライアン・フィリップ、ローラ・リニー、デニス・ヘイスバート 監督:ビリー・レイ 原案:アダム・メイザー、ウィリアム・ロッコ クリスチャンとして信仰心が厚く、職務に誠実で無私無欲、やや偏屈ではあるが頭脳明晰できわめて有能、ある種、宗教的哲学者気質のロバート・ハンセンが、実はロシアのスパイをもやっていたという、まるでリヒャルト・ゾルゲそっくりの悲劇的な物語。アメリカ史上最大最悪のスパイ事件と言われハンセンの売った情報のためKGBに銃殺された人間が出るなどアメリカが20年間にわたり国家として蒙った損失は莫大なものでるしかし、映画は金のためにアメリカを売ったけしからぬ売国奴みたいなヒステリックな視点ではなく、複雑な矛盾に満ち、なをかつ独自の人間的魅力を放射し続ける謎につつまれたロバート・ハンセンの人間的実像をありのままに描写している。FBIという組織の官僚体質への反発、組織に埋没してしまった自己という社会的価値への存在証明願望、いろんな角度から映画はロバート・ハンセンの機密漏洩の動機を探ろうとしているが、最後には二重スパイの心の闇という結論以上には出ずやはり謎のまま。大罪を犯しつつも神を信じ、どこか切ない感じのする複雑な個性のロバート・ハンセン。この難しい役柄を完璧に演じるクリス・クーパーの存在感、演技力が圧倒的だ。ロバート・ハンセン逮捕のための「おとり捜査」を命じられた若手捜査官エリック・オニールを「父親たちの星条旗」のライアン・フィリップが演じていてロバート・ハンセンとの心理戦は熱演である。組織内部の敵を追跡するという共通テーマでは、最近見たこれも傑作の部類に入るであろうマーチン・スコセッシ監督の「ディパーテッド」がある。スピード感のあるストーリ展開、ど派手なアクションという観点からでは「ディパーテッド」がおもしろいが、政治や社会そのものに生きるどろどろした人間心理の深層という部分では「アメリカを売った男」のほうが興味深い。とりわけKGB、CIA、FBIの組織と戦術、ゾルゲ事件、陸軍中野学校、諜報戦や二重スパイなどの問題に興味ある向きには「アメリカを売った男」はお薦めである。近況めいた事柄一時はブログも書けないほど多忙状態が続く中、妻の病気の定期健診のため福島県会津若松へ。病状は全体としては快方に向かうも一進一退を繰り返す。断言はできぬも場合によったら再手術ありとのこと。比較的マイナーな病気のため、インターネット上で同じ病にかかった人たちとの情報交換からは実に得られるものが多い。数少ない専門サイトや掲示板など読むたびに勇気づけられたり希望がわいてきたりする。その中の重要文献を片っ端からプリントアウトして妻に渡し自分も熟読する。サプリを活用。ほぼ毎日、ニンジンジュースと鮫の肝油を飲む。仕事や私用も含めた雑用のため栃木の某山奥、東京へも何回か往復。忙しいことこのうえない。しばし目がまわる。多忙の最中、実にタイミング及び運悪く昔の友人から突如TELあり。とり急ぎ「あとで連絡しますから」と返答。私が実際にその友人にTELできたのはそれから2週間も経過した後だった。