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2022.08.07
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全5件 (5件中 1-5件目) 1 しのびよる貧困 子どもを救えるか
カテゴリ:しのびよる貧困 子どもを救えるか
セーフティーネットクライシス しのびよる貧困 子どもを救えるかの紹介(最終回)です。 神野直彦(関西学院教授) その意味では、「貧困問題(解決)」のスタートラインにまだ立っていない。
神野直彦(関西学院教授)
〔コメント〕 ゲストが交換した意見について特に付け加える必要もなさそうです。湯浅氏が『反貧困』などで提起してきた「深刻な現実(番組ではVTR・グラフ等を資料に)」を共有していけば、「将来も見通しつつ今何を大切にすべきか」という点については(企業経営者も含めて)おのずと合意が形成できるのではないでしょうか。 番組で示されたものと別のグラフ(紙屋さんのHPより)も下に紹介しておきます。
教育問題に関する特集も含めてHPしょうのページに
2009.10.24
カテゴリ:しのびよる貧困 子どもを救えるか
番組(『セーフティネットクライシス しのびよる貧困 子どもを救えるか』)の紹介を続けます。
神野直彦(関西学院教授) 日本ほど教育に(公的な)お金を使っていない国は(OECD諸国では)ない。そもそもヨーロッパでは教育費(授業料)がただの国が多い。家族支援=〔教育費支援〕(グラフ赤の部分)などヨーロッパの半分以下といっていい。 グラフを見ればわかるように、フィンランドは公費による教育支出・家族支援が大きい。大学まで学費無料、しかも2000年はPISAの学力テストで世界一。 司会者 フィンランドではなぜ、教育に多額の支出をしていくという国民的合意が成立したのか。 VTR フィンランドでは、子育ては親だけの責任ではなく社会全体の責任であるとみなされている。 ユーリアちゃんの家はお母さんと二人の母子家庭。しかし、学び育っていく上で経済的な不安はない。 フィンランドでは義務教育にお金がかからない。子どもに平等な教育を保障する義務は親ではなく政府にあると考えられている。ノートや鉛筆をはじめ、学習に必要なものはすべて教室にそろっている。 一クラスの生徒は20人前後。担任以外に大学院の専門課程で学んだ学習支援教員が授業に参加。学習支援教員はその教科が苦手な生徒をとなりの教室で教える。この国に学習塾はない。子どもに授業の内容を理解させるのは学校の責任。 家庭の状況によって子どもたちの未来が閉ざされてしまうことはない。 フィンランド国家の手厚い社会保障政策によって、生活に困ることはないのだ。 家庭環境に関わらず、すべての子どもに平等な機会を保障するフィンランド。その背景には高い税金や社会保険料を出し合いセーフティーネットを支えようという国民の合意がある。〔企業の社会保険料負担 日本の2倍 消費税 基本税率 22%〕 しかしながら、子どもたちに平等な成長の機会を保障するフィンランドの原則が、かつて大きな試練にさらされたことがある。90年代初め、金融危機をきっかけに発生した未曾有の大不況に直面した時期である。 最大の貿易相手国であったソ連の崩壊も背景に失業率18%。不況は教育環境も脅かした。親が失業し、家庭が経済的に困窮する中、家庭内暴力や薬物依存などの問題が噴出したのだ。 不況で税収が落ち込んだ政府はあらゆる予算の削減を迫られたが、教育も例外ではなかった。 しかし、この時、教育大臣に任命された29歳のオリペッカ・ヘイノネンは予算削減に逆行する大胆な政策(高校生への支援策)を打ち出した。当事、すでにフィンランドは高校の授業料は無料だったが、不況で親の収入が減少し、生活費さえもまかなえない状況の中、学び続けることが難しくなっていたのである。 教育大臣の計画した新たな支援策は、月額2万8千円の就学支援金、2万1千円の住宅補助、低利学生ローン。 あらゆる予算を削減した財務省。上記の案には危機感を抱いた。 それに対し、ヘイノネン教育大臣は、子どもが学ぶ機会を奪われ仕事にもつけない場合に国が将来負担することになるコストの試算を財務省に提出。 仕事につけない場合 国の負担 96万円(年間一人当たり) 生涯で2230万円 仕事についた場合 税 収 76万円(年間一人当たり) 生涯で1770万円 経済界からの要請 衰退した造船業などに代わる新しい産業(ITなどの分野で)将来を担う人材を育成してほしいと政府に求めた。 財務省は議論の末、ヘイノネン教育大臣の主張に歩みよった。 教育大臣 「平等と経済の活力は相反するものではなく、教育機会の平等があってこそ活力ある社会が生まれる。」 「教育の主な目的は、若者が社会から脱落していくのを防ぐことであり、一人ひとりが社会に参加しその可能性が最大限発揮できるようにしていくことだ」 平等な機会を保障するための努力は、この国では子どもが生まれる前から始められている。出産を控えた家庭には政府から「赤ちゃんパック」という贈り物(子育てに必要な基本的なもの)が届けられる。 この贈り物には、子どもが育つ環境を誕生の瞬間から平等に保障するという社会からのメッセージが込められている。 〔コメント〕 フィンランドといえば、高福祉・高負担の国として特別視してしまいがちですが、ここから何を汲み取るべきでしょうか。 大変な経済危機の中で、教育支援に巨額の予算をつぎ込んでいった「フィンランドの決断」、「根本的な発想」にこそ多くを学ぶべきではないか、と考えるのです。 (続き)
教育問題に関する特集も含めてHPしょうのページに
2009.10.17
カテゴリ:しのびよる貧困 子どもを救えるか
番組〔セーフティーネット・クライシス しのびよる貧困 子どもを救えるか〕の紹介を続けましょう。企業経営者の立場で討論に参加していた新浪氏は、次のように発言します。 新浪剛史(ローソン代表取締役社長) まず雇用対策だ。雇用創出のために新産業もどんどんつくっていかなければ・・・。それが最優先課題ではないか。 企業としては、非正規の方々の給与を上げると今度は海外移転がもっと進む。また輸出産業が日本の雇用を支えてきたのも事実。 このままでは失業者がもっと増えていくような世界の経済環境である。雇用の創出・経済成長をまず第一に考えていくことではないか。 山井和則 厚生労働大臣政務官 最低賃金の引き上げは中小企業への支援とセットで行う。内需拡大によって景気回復をはかるためにもこのたびの子ども手当、高校の授業料の無償化等を含めて可処分所得を増やし、消費の拡大⇒景気回復⇒雇用拡大とつなげていくことが必要だ。雇用が拡大することで最低賃金も上がる。 司会者 まず景気回復⇒問題解決ということか? それは今までずっとやってきてなかなか実現してこなかったのではないか。子どもはまさに今育っているわけで、先延ばしにしていくわけには・・・。 湯浅誠(反貧困ネットワーク事務局長) 雇用創出は重要だが、雇用の量と同時に「雇用の質」も重要だ。この間(好景気を)製造業が引っ張ってきたと言われるが、その製造業派遣の実態は去年の派遣切りでもわかるようにひどいものだった。景気対策や雇用の量だけに注目を集めて雇用の質はどんどん悪くしてきてしまったことが、このたびの大きな反省点の一つだと思う。 生活ぎりぎりであれば消費できないわけだから、その人たちは「優良な消費者」にもなれない。雇用の量と同時に質に注目し「雇用の質を上げていくことに企業も協力すること」が大切だ。 新浪剛史(ローソン代表取締役社長) 雇用の質を高めたいのは山々だが、グローバル競争の中で日本の企業が勝ち抜けるかどうか、この急激な円高で日本は将来やっていけるのかどうか、非常に厳しい状況がある。 司会者 そのような大きな経済の問題が、非正規労働者の拡大につながり、それがそのままVTRで示されたような子どもたちの状況(書道セットも買えない、食べるものもない)につながっている。「子ども手当」は義務教育段階で支給されるとのことだが、高校の現状はどうか。VTRで確認したい。 VTR 関西のある学校。ここでは経済的な理由で授業料を納められない生徒が増加している。授業料(一月9,900円)の免除を受ける生徒が4割をこえる。 新政権は「授業料の実質無償化」を打ち出している。しかし、教科書代その他の経費はこれまで通り家庭の負担。 家計が苦しくなる中、機能していない子どもたちへのセイフティーネット、授業料減免や奨学金制度を最大限活用しても生徒自らが働かなければならない事態が広がっている。 教諭 「残念ながら私たちの力不足で200人中14人の生徒がやめていった。経済的に非常に厳しいものを抱えている生徒がほとんどだった、という事実は非常に重たい。なんとかしてやりたいと皆思っているが、結局何もできない・・・」。 なかには学費だけでなく家族の生活費まで払わなければならない生徒も増えている。放課後働き始めた中谷さん(仮名)。勉強との両立は楽ではない。 「勉強していたら睡魔が襲ってきたりして・・・」 中谷さんは看護学校への進学を希望しているがこのままでは難しいと感じ始めている。 この学校では学費等を稼ぐためにアルバイトをしている生徒が多いが、しばしば学費を納める前に使ってしまう。教師は生徒の給料日にアルバイト先に行って「集金」までしている。 「高校中退」を防ぐための苦肉の策だ。 教諭 「これが教師の仕事か? と言われればそんなことはしたくない。だからこそ、おかしいということを色々なところで訴えていきたい。世界で第二位の経済力を誇ると言われる日本の社会で、これほどお金のない人たちがほとんどかえりみられていない。」 LHR 〈希望進路を実現するために何が必要か?〉を生徒に語る 教諭 「実際、来年の11月に(入学金や前期授業料として)80万、100万のお金を用意しようと思ったら大変なんや。去年もおととしも大学や専門学校に合格したんだけどお金が納められなくて辞退した人が何人も出てる。君らのせいではないし経済的に苦しくなったのはお父さんやお母さんのせいでもないけど現実は厳しい」。 家庭の事情によって未来の可能性が奪われかねないという現実が高校生の前に立ちはだかっていた。 湯浅誠(反貧困ネットワーク事務局長) 色々都合はある。財政難だとか企業のグローバル競争もあるかもしれない。そういうことのなかで、いつも対策が後回しになるから「貧困の連鎖」がやまない。結局「人材」がつぶれていく。それは社会的損失、「社会の持続可能性がなくなる」という問題につながる。 そのような問題意識を共有して優先順位を上げていく必要があるのではないか。 貧困とは、労働力も再生産していけないという状況であり社会の危機。だから、社会全体で取り組んでいかなければならない。 新浪剛史(ローソン代表取締役社長) VTRをみて、このままでは未来の成長なんてなくなるぞ、という思いになった。予算の組み替え大いに賛成だ。政府は中・長期的な展望を示してほしい。国民(人材)に対する投資をもっと増やしていこう。資源のない日本にはそれしかないのだから。 〔コメント〕 ローソンの新浪氏が冒頭に述べたような論理で多くの企業は「国際競争力を高めるために非正規雇用を増やし人件費を削減する」という方策を採ってきました。これは、労働者の生存権さえまともに保障しない「どん底への競争」だったわけですが、それがVTRで示されたような子どもたちの現実の背景にはあります。 それが短期的に見ても長期的に見ても「けっして豊かな社会を生み出さない」こと、「社会の持続可能性を閉ざしていく」ことは、明らかではないでしょうか。 番組は最後に、明確な意思を持って「異なる方向への選択」に踏み切ったフィンランドの事例を紹介します。 (続き)
教育問題に関する特集も含めてHPしょうのページに
2009.10.11
カテゴリ:しのびよる貧困 子どもを救えるか
去る10月4日、NHKスペシャル『セーフティーネット・クライシス しのびよる貧困 子どもを救えるか』が放映されました。 VTRを交えながら1時間半の生放送で行う討論番組でしたが、極めて重要な問題提起を含んでいたと思います。(ネット上でも何人もの方が反応しておられます。退職校長の toshiさんなど) このたびは、コメントをなるべく少なめに、番組の内容を要約・再現してみます。 〔番組内容 1〕 NHK全国小中学校アンケート(無作為抽出により3230校)
〔事例:金沢さん(仮名)の家庭〕 労働者の平均賃金と教育費を中心とする支出 湯浅誠 〔コメント〕 HNKスペシャル『ワーキングプア』の時から一貫していると思いますが、「事実を通してこれらの番組が実現しようとしていること」は貧困を生み出す現代日本社会の構造を浮き彫りにし、(貧困を「社会的排除」という観点でとらえ)、その解決への道を社会全体の課題として具体的に明らかにしていこう、ということだと考えます。 私自身は、このような報道姿勢を全面的に支持するものです。引き続き次回も、番組の内容をなるべく忠実に再現してみます。 (続き) 教育問題に関する特集も含めてHPしょうのページに
2009.10.03
カテゴリ:しのびよる貧困 子どもを救えるか
高生研全国大会に参加されたNHKのディレクターから(大会実行委員会に)メールが届きました。 湯浅誠氏より案内のあった番組で放映は明日(10月4日)です。取り急ぎ転載いたします。ぜひ、ご覧ください。
NHKスペシャル
番組の内容をまとめて連載しておきました。ぜひごらんください。
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