「鮮人の暴動」とされた「益田事件」について
12月に入ってから参加した「韓国民団」学習会。隣県(島根県)で起こった「益田事件」について初めて学びました。長い間、益田市誌(『町史』:「鮮人の暴動」)の記述は、事件に関する偏見や事実誤認に満ちた内容だったといいます。実際、その見方については、関東大震災時に流布した「鮮人暴動」の流言を思わせるものがありました。しかしながら、市誌の記述に見える偏見・事実誤認訂正の求めに対して益田市は、資料の詳細な確認の上で、その差別性や事実誤認を認め、「反省・訂正の冊子」を発行したとのこと。事件の概要をウィキペディアの記述をもとに、偏見・事実誤認の訂正の求めと益田市の対応については「地元紙」の記述をもとに紹介します。 益田事件(ますだじけん)は、1949年1月25日に日本の島根県で発生した事件概要島根県美濃郡益田町(現在の益田市)の朝鮮人集落において密輸入物資が隠匿されているとの密告に基づき、進駐軍島根軍政部将校2名と経済調査官2名が同行して、令状なしで摘発に乗り出したが、「令状のない捜査は違法である」と拒否されたため、警察官10名が応援して物資を押収したが約100名の朝鮮人に奪還された。翌日、被疑者9名を検挙したものの、夜に入って約200名が警察署に押しかけて被疑者の釈放を要求し、署内に侵入しようとしたために警察官と乱闘になり48名が検挙された。逮捕されたもののうち9名が起訴され、騒乱罪で有罪となった。 以下、益田「市誌」をめぐる要請と訂正の顛末(地元紙の記述の要約) 益田市「市誌」に偏見の記述韓国人が訂正求める(見出し)〔発端〕益田市が1978年に発刊した益田市誌のうち「在日韓国、朝鮮人ら百数十人が益田市警察署を襲撃したとされる益田事件の記述に『混乱時には在日韓国朝鮮人が放火する』といった偏見に満ちた記述がある」として在日韓国人で飲食業を営む安さんが市長と教育長に訂正を求める要請書を出した。⇒ 市側は「資料を検討して対応を協議する」と回答。〔要請の根拠・資料〕要請書には益田事件の真相を究明した岡崎勝彦島根大法文学部長の論文が添えられた。それによると、益田事件は(朝鮮人部落に共産主義者が多いとみた)連合国軍総司令部GHQが在日韓国朝鮮人を弾圧しようと49年1月、警察を指導して起こした。発端はGHQの将校らが闇物資の摘発を名目に益田市の朝鮮人部落を「礼状なしで」違法捜査し9人を逮捕したことだった。〔資料と市誌の食い違い〕益田市誌はGHQの捜査の違法性には触れず、警察に抗議に出向いた在日韓国朝鮮人と警官隊との乱闘だけを不法事件と決めつけている。さらに、「朝鮮人集団は町内各所に放火を宣伝するなどし、町民の動揺も極めて色濃くなったとして武装警官延べ936人と消防団長らが昼夜通しで厳重な警戒をした」と記している。また、日時・数字などの誤りも多い。〔安さんのコメント〕混乱時に「朝鮮人が放火する」というデマが飛ぶのは、6000人以上の朝鮮人が虐殺された関東大震災の教訓で分かっているはず。違法捜査の事実を省いてなぜこのような偏った記述をするのか、悲しくなる。〔岡崎勝彦島根大法文学部長の話〕 訂正が市の戦後責任益田事件は日本の被占領下で東西冷戦の最中に起きた。GHQ将校の勇み足といえる違法捜査の責任を日本の警察や在日韓国・朝鮮人の責任に転化したが、裁判所は在日韓国・朝鮮人に同情的な判決をくだしている。しかるべく訂正するのが益田市の戦後責任だ。〔益田市の対応〕 市は各種資料を確認したうえで是正と反省の冊子の作成を表明。 益田市は安さんの指摘を全面的に認めた上で、「指摘があるまで見過ごしてきた益田市行政としての認識不足を痛感する。内容の事実誤認や差別的記述は本市における外国人との共生を阻害する要因となる。これらの記述を是正し、市としての統一見解を表明する」と述べた。 (紹介は以上) 朝鮮人虐殺の問題に対する東京都知事の対応や、朝鮮人慰霊碑を撤去した群馬県の対応などは、「歴史的・民族的責任にまともに向き合おうとしない恥ずべきものだ」と暗澹たる思いになっていましたが、「歴史的な事実に向き合う責任を明確に打ち出した自治体もある」ということを知りました。「自国中心の(自己正当化と「敵=悪の化身」の捏造)に満ちた歴史観」ではなく「世界に通用する歴史観・歴史認識」をもとに誠意ある対応をしていくことは極めて大切だと感じています。日本が将来にわたって「加害の歴史」に対してまともに向き合い対応していく能力のない国となるのか、勇気をもって自らの生み出した負の歴史に向き合い、それを乗り越えていける国になるのかが問われています。益田市のとりくみは、地域レベルで歴史に正面から向き合っていく営みの一つの模範になると考えます。黒部ダムだけでなく 「動員」された朝鮮人日本を取り戻す教育!? にほんブログ村 ← よろしければ一押しお願いします。一日一回が有効教育問題に関する特集も含めてHPしょうのページに(yahoo geocitiesの終了に伴ってHPのアドレスを変更しています。)「しょう」のブログ(2) もよろしくお願いします。生活指導の歩みと吉田和子に学ぶ、『綴方教師の誕生』から・・・ (生活指導と学校の力 、教育をつくりかえる道すじ 教育評価1 など