テーマ:エコライフの工夫♪(808)
カテゴリ:フライブルク
ガソリンの値上がりがエコライフを促進? もう何年も前のこと、緑の党が「車をやめて電車や自転車に乗るように奨励するために、ガソリンを5マルク(2、5ユーロ、約400円)にせよ」と主張したことがあります。 この主張は、「非現実的」と他の党や一般市民から総スカンをくらいました。 ところがいま、ガソリンは2ユーロまではいかないにしても、1,4ユーロと1,5ユーロ余りの間を上下しています。これは自動車交通を減らすための政策とは関係ありませんが、石油の高騰が環境にやさしい行動に思わぬ効果を上げています。 ガソリンやディーゼルが高くなった今、車をやめて公共交通機関や自転車を使う人が増えています。 たとえば、今年上半期のフライブルクのトラムとバスの乗客数は去年の同じ時期よりも増加しました。 これまで車で旅行していたのに、高いガソリン代のために、生まれてはじめて列車旅行をするようになった人もいるそうで、フライブルクで列車の切符だけを売る旅行業者は、新しい顧客ができたことに喜んでいます。 私の身の回りでも、マイカーがあるのに、週末にローカル線で行楽に出かけたり、友達どうしで一台の車で出かけるという例が増えています。 マイカーをもたずに、車を共同所有するシステム「カーシェアリング」の会員も増えています。マイカーは保険などもろもろのコストがかかるので、ガソリン高でどうせたまにしか車に乗らないのなら、車が必要なときだけ使う「カーシェアリング」の方が安くてよい、ということなのでしょう。 さらに、夏場はふつう自転車の売れ行きが悪いそうですが、今年の夏は自転車の売れ行きが伸びたと話す自転車屋さんもいます。 企業、とくに鉄道やトラム・バスの便が悪いところにある会社は、通勤手当を出したり、社員の通勤コスト負担を軽くするようなサービスをしています。 話がわかりやすいよう添えておくと、ドイツではふつうは雇用者から通勤手当は出されません。 代りに、通勤にかかる費用(通勤一括と呼ばれます。交通手段に関係なく、家から職場までの距離に応じた一定の額)がこれまでは税金の控除の対象になっていました。現在、この制度をやめる、やめないで政党間でもめています。 さて、「黒い森」の山間の地域にあるテストという会社は、会社からかなり離れたところにあるローカル線の駅と会社の間にシャトルバスを走らせています。フライブルクから通勤する100人の社員は「レギオカルテ」(こちら「フライブルクの環境対策」を参照してください)を使って、30分ほど鉄道に乗ってこの駅まできて、そこからシャトルバスに乗るのです。 社員はレギオカルテ代、月45,50ユーロに加えて、シャトルバス代月15ユーロを会社に払わなければなりません(つまり通勤費は合計60ユーロ余、約1万円余かかる)が、それでもこの方が車で毎日通勤するよりは安いそうです。 車をやめて、この方法で通勤するようになったある男性は、「やっと本や新聞を読む時間ができた」と喜んでいるとか。 スィックという会社は、通勤に補助金を出すほか、社員どうしの相乗り通勤を奨励しています。会社内に相乗り相手をさがす掲示板をかけたり、社内のイントラネットに広告を出したり。そして、相乗り通勤者用の駐車場を、社屋の玄関前に設置しました。 この会社の従業員の多くは、自転車で通勤しています。そこで会社は、鍵がかかる駐輪ガレージを設け、さらには自転車通勤者用の着替え室とシャワー室を用意しています。 これはとくに、遠いところから自転車で通勤する社員に好評です。ちなみに、27キロメートルの道のりを、毎日自転車で通勤する女性社員もいるそうです。 ほかにも、社内で相乗り通勤相手を探せる場を設けたり、駐輪場やシャワー室を設置したりする例はいくつもあります。 交通だけではありません。 石油やガスの高騰で、省エネタイプの暖房装置や建物の断熱改造に関心をもつ人も増えました。 このごろでは、冷蔵庫や洗濯機などの家電を買いにくるお客の誰もが、商品のエネルギー消費量について店員に詳しく尋ねる姿がよく見られます。 こうした行動はたいていの場合、エコロジーとか地球温暖化防止に貢献したい、といった動機からではなくて、なんとか高い燃料や電気代を節約したいという経済的な動機から実行されています。 これまで、地球温暖化や大気汚染のために車をやめて公共交通機関を使おうとか、省エネをしようとか、国、自治体、環境団体、メディアが声を大に提言しても、なかなか個人の行動を変えることはできませんでした。 それが、エネルギーの値段が高くなったと状況がこれほどの効果を上げたのです。 つまり、モラルだけでは人を動かすことはなかなかむずかしく、環境によいことをすれば経済的にもペイするようにしなければ、大衆を動かすことはできないのでしょう。 そこでドイツでは、いわゆる「経済的なインセンティブ」、つまりトラムやバスや鉄道に安く乗れる定期券とか、省エネ改築への補助金とか、自然エネルギーで発電した電力の高い買い取り価格とか、ゴミの量に応じたゴミ料金といった、「環境によいことをすれば、お金でもトクをしますよ」という対策がいろいろにとられているのです。 これらがかなり成功したからこそ、「環境先進国」などと呼ばれるようになったともいえます。 今回は石油・ガスの値上がりという誰もが意図しなかった事態が「インセンティブ」として働いて、車から公共交通機関や自転車への転換をする人が増える、という現象が起きているわけです。 けれども、それ以前から、近距離鉄道やトラムに安く乗れるような料金システム(フライブルクのレギオカルテやベルリンの環境定期券のような)があったからこそ、車通勤から電車通勤に切り替えやすいという状況もあります。 いつも思うことですが、環境対策や制度と個人のエコライフや環境意識はつねに相互関係にあります。 対策や制度があるからこそエコライフが実行しやすいし、環境意識やエコライフを実践し、国や自治体によい制度をつくれと声を上げる市民がいるからこそ、自治体や国が望ましい環境対策や制度をつくるようなるということ。 そのどちらも欠かせないのです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2008/08/31 11:49:50 PM
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