テーマ:エコライフの工夫♪(808)
カテゴリ:フライブルク
太陽に合わせて回転する家、ヘリオトロープ posted by (C)solar08 フライブルクの建築家、ロルフ・ディッシュさんは「太陽建築家」「エコ建築家」として建築業界では有名な人物です。 「環境を守りましょうと口で言うだけではだめ。未来にも機能する方法をさがすことがたいせつ」がモットーです。 ディッシュさんは、太陽光発電や省エネ建築がさかんになるずっと前から、太陽エネルギーを建築に利用することを考え、実行してきました。 それもそのはず、彼はソーラーカーのオートレースにドライバーとして出場して、チャンピオンの座に輝いた経験もある、筋金入りのソーラーファンだったのです。 ディッシュさんの名を一躍全国・海外にも有名にしたのは、太陽に合わせて回転する家、「ヘリオトロープ」です。 Heliotrope posted by (C)solar08 「これからの家はエネルギーを消費するだけでなく、エネルギーを生み出すべき」 という彼の建築哲学を実践にうつした家です。 この家は円筒形三階建ての居住部分を、その中心を「幹」のように通る中空の柱がささえる構造でできています。 急斜面にあって、しかも敷地が狭い土地に建てるには、ちょうどよい構造です。 二番目の写真で左下に見える部分は、セミナールームと機械室がある地下室。この部分はもちろん回転しません。 ここ をクリックしていただくと、外観のヴィデオが見られます。英語のページもあります。 円筒形の片側半分の外面は、床から天井まで三重の断熱ガラスでできています。 円筒形のもう片側は、窓はほとんどなくて、断熱性がすぐれた壁でできています。 この円筒形の家を中心の柱(この中にらせん階段が通っています)ごと、モーターと歯車でゆっくりと回転させることができます。 回転はコンピュータ制御で、自在にコントロールできます。 たとえば、寒い日には、ガラス側の半分を太陽に向けて、窓から太陽の熱をとりこみます。 反対に、暑い日には断熱効果のある壁側を太陽に向けて、熱い日差しをさえぎります。 日本のテレビ局が取材に来たときには、カメラを部屋の一点に設置して窓の外に向けてから、家をゆっくり回転させて撮影しました。映像からは、外の景色がだんだんに変わっていくのがよくわかりました。 このような構造だけでも、暖房エネルギーがドイツの平均の家の八分の一になるそうです。冷房はまった必要ありません。 ベランダのフェンスのように見えるのは太陽熱コレクターで、パイプを通る水が温められ、温水供給や暖房に使われます。 屋根の上の太陽電池パネルは、家の回転とは別に、独自に向きが調節できて、最適な形で太陽光を取り入れ、発電します。 ほかにも工夫がいっぱい。雨水は洗濯と客用トイレへに利用され、生ゴミと家族用のトイレの排泄物は、庭の地中でコンポスト(たい肥)化されます。生活廃水は池の植物で汚水処理されます。 この家、実は木造建築なんです。家の骨組みや天井、外壁、床の建材は、耐震性の強いフィンランド製の木材。 ディッシュさんはドイツでは忘れられていた木造建築に注目した人のひとり。椋の厚い木材は、コンクリートや石よりも断熱性がよくて、冬の寒さやも夏の暑さから守るすぐれた建材だといいます。もちろん、外壁と内壁の間には分厚い断熱材がはさまれています。 ヘリオトロープを見学したことは何回もあったのですが、一度、冬の晩にディナーに呼ばれたことがあります。 外は零下だというのに、そして暖房パネルのスイッチは切られたままだというのに、部屋があまりに暖かくて、スーツのジャケットを脱がなければなりませんでした。 昼間の太陽の熱を部屋がたっぷり受け取り、その熱が逃げなかったおかげで、こんなに暖かいのだそうです。 「窓を開けましょうか」と奥様に聞かれて、あわてて「そんなもったいない、熱を逃がすなんて」と辞退しました。 エコハウスのイメージとはちがって、この家のインテリアはどこもモダンで、すてきです。 カラフルな椅子、最新のキッチン設備、船の形のバスタブ。 エコロジーとおしゃれがマッチすることも、ヘリオトロープは実演しているようです。 ところで、一本の幹に円筒形の重い居住部分がくっついたようなこの家は嵐で倒れないのでしょうか。 ディッシュさんは「だいじょうぶ、家の片側に400人が立っても倒れない」とおっしゃいました。 実際、数年前に日本の台風以上の強風をともなう嵐が来たのですが、無事でした。 奥様は「かなり揺れて、あれーっと思ったけれど、何も起こらなかった」とおっしゃっていました。屋上の太陽電池がちょっと傾いただけだとか。 ディッシュさんはソーラー団地」の「プラスエネルギー住宅」を設計しました。 プラスエネルギー住宅は回転こそしませんが、南側の三重ガラスの戸から太陽熱を取り入れるとか、構造体を椋の木材+厚い断熱材にして、北側から熱を逃がさないとか、太陽電池の屋根など、ヘリオトロープの原理が生きています。 ディッシュさんはこれらの建築で、数々の環境賞や建築家の賞を受賞しています。 ディッシュさんの夢は、フライブルク全体をソーラーシティーにすること。太陽光や熱をもっともっと多くの市民や機関が利用する町づくりです。 フライブルクはドイツの中では、太陽光発電や太陽熱の温水・暖房利用の 率が、他にくらべて高いのですが、まだまだ十分に利用しきっているとはいえません。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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