テーマ:映画館で観た映画(8353)
カテゴリ:フライブルク
フライブルクには中都市にしてはかなり多くの商業映画館があるのですが、そのほかにコミュナーレス・キノ、直訳すれば共同体の映画館というのもあります。
私が住むヴィーレ地区にある古い駅舎「Alter Wiehre Bahnhof」内の小さな映画館。 運営するのは、映画好き・映画関係の仕事をもつ人などでできたNPO団体です。 ここでは、ふつうの商業映画館では上映されないような映画、たとえば、アジアやアフリカなどの映画、質はよいのに商業的には売れないような映画、古い映画、ドキュメンタリー、エスニックな映画などが上映されます。 私は日本にいたときにはあまり日本映画を見たことがありませんでした。 学生時代は洋画が中心だったし、結婚してからは子どもが小さかったのと、住んでいた小さな町に映画館などなかったのとで、そもそも映画を見るチャンスがありませんでした。 それで、おかしなことに、覚えている日本映画のほとんどはフライブルクのコミュナーレス・キノかドイツのテレビで見たものです。 古くは黒澤明の「羅生門」や「乱」。これは字幕でなく吹替えだったので、ちょんまげ姿のサムライがドイツ語を話すので、まことに奇妙ではありました。 大島渚の「愛のコリーダ」も、緒方拳が三島由紀夫を演じた「MISIMA」(日本未公開だそうですが)も、「シャル・ウイ・ダンス」ここで見ました。 「逆噴射家族」とか「ラジオの時間」(大好き)、「眠る男」(いい映画)みたいなちょっと変わった映画も上映してくれます。映画オタクが運営しているので、一ひねりある映画の方が好まれるようです。 そして、久しぶりに昨日見たのは、松本人志(この人が誰なのか、知りませんでした)脚本・監督・主演の「大日本人」。 行く前に、ネットで批評を読んだのですが、日本のある映画評論家が「二時間ひたすら映画館にいるのが辛かった」など酷評なさっていて、ちょっとひるみました。 でも、ドイツ人の批評には「これをくだらないと片付けるか、変わったユーモアとして評価するかは人しだい」と書かれていたので、入場料は5ユーロ(600円)と安いし、まずは見てみることにしました。 ストーリーは、松本人志演じる風采のあがらない男が、防衛庁の委託を受けては、大日本人に変身して、大昔からいる様々な怪獣をやっつける。 それだけの話なのですが、それがなかなか面白かった。ナンセンスといえばそうなんだけど、ふつうのお笑いとはちがう、奇妙なユーモアで、思わずアハハハと笑いころげました。 視聴率に恐々とするメディアの風刺もさらっとされているし、脇役(怪獣)の奇妙なキャラクターなど、ドイツ人にもユーモアが通じるらしくて(日本のユーモアがいつも通じるとは限らない)観客は大笑いしていました。 防衛庁が「闇討ち」をかけて、寝ている主人公を彼が知らない内に変身させて、怪獣退治に送りこむシーンの間、中村雅俊の「ふれあい」というなつかしい歌がしみじみと流れていたのは、事の残酷さを静かに強調する、見事なシーンづくりだと思いました。 名案といえば、映画全体が登場人物にインタビューするドキュメンタリー映画のように仕立てられているのも面白い。だから、出演者がセリフではなくて、ふつうに話しているように感じられるほど、自然な語りになっているのです、 ま、趣味の問題ですが、私はきらいではないですね、こういうの。アメリカ製の大仕掛けのファンタジー映画やヒーロー映画よりはずっと好もしいです。 コミュナーレス・キノが入っている古い駅舎にはカフェもあり、さらに毎週二回は建物の前で、エコ青空市も開かれます。 ドイツで上映される日本映画といえば、北野武監督の作品が目立ちます。タケシさんのセンスがドイツ人の映画好きの人の感性に訴えるのかもしれません。 一方で、日本人には通じるユーモア、たとえば「男はつらいよ」(寅さん)の面白さは、ドイツ人には通じないみたいです。私はこれも好きだったんですけど。昔、一度こちらで上演されたとき、ドイツ人の友だちと見に行ったら、あくびをかみ殺していました。センスがちがうんでしょうね。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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