獣の妻乞い/沙野風結子
獣の妻乞い通り魔に襲われた高校生の由原尚季は、狩野飛月という男に助けられる。強引な手口により、飛月と一緒に暮らすことになった尚季は、凶暴そうな見た目に反し、無邪気で優しい男に急速に惹かれていく。だが、仕事に行くたび尋常さを失う飛月に、尚季は昼夜を問わず、荒々しく抱かれるようになる。次第に獣じみていく飛月の異変に不安を覚える尚季は、彼が凶悪犯罪者を抹殺するため、秘密裏に造られた「猟獣」だと知り―。読了いたしました~昨日の日記で獣との交尾だけが注目ポイントであるかのように書いてしまったことに反省しきりでございます。ペコリ そんな単純なものじゃなく、とても深い内容のあるお話で、涙したり考えさせられたりするストーリーでした。あのシーンも描写を脳内で絵にすると確かにウエェ~となってきますが、命の断崖にたってる2人の愛あふれる行為だと思えば(BL好きなら)どんな人でも大丈夫(と思う)。たぶん。お話は人間がペットとして飼う生き物たちへの無責任さと神の領域に踏み込むことで自分達が野放しにしてしまった罪を帳消しにしようとする愚かさを背景に、傷つくことを恐れ何事にも距離をおきたがる尚季が、重い運命を背負った飛月と再会し、愛を極めるというスジです。再会した当初は、あまりの胡散臭さに何度も拒まれストーカー呼ばわりされる飛月ですが、めげずに擦り寄れるのは彼の長年の夢だったこともあるかもしれませんが、考えると半分犬というか狼なので、犬が主人に冷たくされてても尾を振る姿を思い浮かべれば頷けます。終わりのときが微かに伺える哀しくて切ない二人ですが、飛月の仲間の二人のほうは絶望的な気がします。新刊ということで、お話を詳しく書くのは遠慮いたしました。力作ですので、是非。買って損はないかと思います。