『ノノノノ』を成績で振り返る~ノノの強さ議論
スキージャンプというマイナー競技を扱った『ノノノノ』という漫画が好きである。僕が岡本倫先生の漫画をリアルタイムで読んだのはこれが最初である。当時,スキージャンプのオリンピックに女子の部がなかったので,主人公のノノが性別を男と偽ってオリンピックを目指すというスポーツ漫画である。シュールな独特のボケ,可愛いらしい絵柄からの残酷な描写と,なんか好きである。ノノノノ 1【電子書籍】[ 岡本倫 ]僕は5ちゃんでたまにやってる「強さ議論」が好きなのであるが,『ノノノノ』の各キャラの強さはどの程度のものか,成績を振り返った後,最後にランキングを作ってみたい。なお,強さの基準にすべきは公式戦なのだろうが,本作ではちょいちょい非公式試合もしている。まったく無視するわけにもいかないので,非公式試合(以下「野試合」)を含む以下9つの試合をもとに考察したい。なお,公式戦はやたらと不正行為が多く,実力を発揮できない選手が多かった。後で検討するが,なんと不正行為被害率100%という悲しい選手もいた。そのため試合結果以外の要素も入れて強さを論じることが難しいのだ。1.野試合vs加東(1巻1話)対戦相手は加東雅史。高校3年時にインターハイ優勝,全日本選手権3位という強豪で,ノノが彼に因縁をふっかけて試合に持ち込んだ。彼と戦いつつ,ノノが推定101.5メートルを飛んだところで,「勝てるわけがない」と加東が棄権して終了である。思えば,相手はインターハイ優勝経験者なので,物語冒頭の時点でノノはインターハイ優勝できる実力を持っていたことになる。僕的には,このときの描写が強く頭に残っており,ノノのことをずっと強豪だと思っていたが,のちのちの展開を見ていくとノノはかなりの苦戦を強いられている。こうして考えると,ノノのいた世代は強い奴らばかりだったのだろうなぁ・・・。2.野試合vs天津(1巻~2巻10話)対戦相手は同じ高校1年の天津暁。彼は祖父,父の代からジャンプをやってるジャンプ一家である。飛型点,つまり空中や着地時の姿勢を無視し,遠くに飛んだ方が勝ちという独自のルールだが,このとおり,天津が勝った。2本目,天津は空中で1回転したり転倒したりと,遠くに飛ぶために飛型点を犠牲にしているという言い訳はあるものの負けは負けである。特に2本目開始時,ノノには有利な風が吹いていたのにもかかわらず飛ぶ前に気持ちで負けており,このあたりから精神的に弱いところが出てきている。僕的にはまだノノが負けたことについて一応の言い訳があったので,多少揺らいだものの,ノノ強豪説は維持されていた。3.長野県高校対抗団体戦(3巻25話~35話)札幌で行われる大会の選抜戦である。個人優勝はノノ,2位が天津である。あくまで目的は団体でノノの所属する奥信高校が優勝することであるが,主人公の面目躍如といったところ。ただ,尻屋の板に細工がされるという不正行為があり,それがなければノノは優勝できていなかった可能性もある。4.野試合vsハンス=シュナイダー(4巻40話~5巻45話)特殊ルールとして2本飛ぶことなく1本だけの勝負である。対戦相手のハンスはオーストリアのチャンピオンであるが,このとおりノノの敗北である。しかも,ハンスはゲートを下げているハンデがあり,ノノの完全敗北である。たぶん,ここで登場したハンスは将来的にオリンピック編で強敵として立ちはだかることになったんだろう。そこまで連載が続かなかったのは残念である。なお,これがノノノノにおける最後の野試合になる。野試合だけならノノは1勝2敗。負け越しているわなぁ。5.北海道大会(6巻53話)全日本代表選考も兼ねており,実業団も参加する。ノノは転倒で記録無し。優勝が岸谷,準優勝真岡,3位笹岡,4位天津である。かなり長い回想に入る前のところ。読者としても,このへんでノノの強さには疑問が生まれつつある。6.インターハイ長野県予選(7巻69話~8巻80話)優勝が天津,2位がノノ,3位が尻屋になる(尻屋は転倒があるので単純な距離では尻屋がノノより上)。この時点で天津はインターハイ出場を確定させており,ノノは尻屋に絶対に勝たなければならないということになっていたので,ライバルは尻屋という状況であった。尻屋について深く掘り下げられ,正直僕は天津よりも尻屋の方が好きである。また,不正行為とまではいえないものの,ノノをへのアシストとして天津が尻屋に「ささやき戦術」を使ってメンタル攻撃をし,転倒追い込んでいる。またしても,尻屋は実力を十全に発揮できなかったわけだ・・・。7.全国スキー総合体育大会(8巻86話)インターハイの前ならしとして参加した大会である。ただ,高校生に限定した大会ではなく,大人も普通に出場する。高校の強豪選手はいなかったものの,1番最初の野試合で戦った加東もいるし,全日本代表選手の山田という男まで登場している。この大会でダイジェスト展開が取られ,1本目の後唐突に表彰台の場面になったが,優勝はノノ,2位が天津,3位が加東になる。「ならし」と言う話であったが,それでも僕の中で驚くべきことだ。だって,雑魚みたいな扱いではあるが,加東はインターハイ優勝の経験者,全日本3位である。これより格上の扱いっぽかった山田選手もまとめて1話で蹴散らしたことになる。なお,さらに意外なのは尻屋の扱いである。彼は大会にエントリーできておらず,テストジャンパーという扱いではあり,ノノたちの2本目の成績は分らないものの,モブの「テストジャンパーが優勝か?」という台詞から,ノノたちより飛んでいることがわかる。結局,ノノ,天津,尻屋はこの時点で全日本レベルの実力はゆうにもっている,そういうことになるだろう。(8巻電子版,201頁。テストジャンパーにも負ける日本代表って・・・というが入賞者全員が問題だよ・・・)8.コンチネンタルカップ(101~102話)ノルウェーで行われた試合である。一切不明ながら天津が優勝した。ちょっと前の全国スキー総合体育大会でノノに負けているのに優勝というのは僕的に意外だった。せいぜい入賞程度で世界の壁を感じるのだろうと思っていたのに。9.インターハイ(102話~141話)最後の試合である。レギュレーション違反の選手を除外したのが上の表になる。本来的には飛型点だとかのポイントもあるのだけれど,単純に飛んだ距離と合計を書き記すとこのとおり。距離のみで見て,優勝は赫,2位が尻屋,3位が禰宜田というところか。ノノは2本目,誰よりも飛んでいるが,1本目と合わせると5位くらいでしかない。なお,この大会は審判の買収という大規模な不正が行われており,ノノや尻屋は1本目,ずいぶん不利な状況で飛ばなければならなかった。もし,万全の状態ならノノは1本目は105メートル程度は飛んでいただろうと言われている。そうしたところで合計は228メートル。優勝は難しいのではなかろうか。一方で尻屋は不正被害なし,万全な状態なら赫を超える成績を出せた可能性もある。10.まとめここまでの試合データを見てきて,ノノはさほど公式戦で良い結果を出せていないことに気がつく。7巻時点で作中,「県大会で1回勝ったことがあるだけ」と言われていたが,まあそのとおりである。1つのパターンとして,ノノは1本目でミスして2本目で挽回する,というパターンを何回かやっている。ムラッ気があるのだ。これに対し,天津や赫といった強豪選手を見る限り,ほとんどそんなムラはなく,安定した成績を取っている。漫画の世界では主人公補正というのがあるが,ノノはその逆で,不正の標的にされて力が発揮できないとか,メンタルが弱っていて1本目に失敗するというパターンが多い。ただ,どういうわけか2本目の失敗というのがないので,背水の陣状態だと強いのかもしれないけれど。一方で,特筆すべきは尻屋の不正行為被害率である。今回,読み返していて気がついたが,驚きの100%である。これに加え,序盤での尻屋は親友との思い出のスキー板の使用にこだわり,体格に合わない板を使っていた。なんの制約もなければもっとすごい成績を出せた可能性もある。ノノノノ 7【電子書籍】[ 岡本倫 ](尻屋が表紙の7巻が個人的にお気に入り)以上をもとに高校生たちの強さランクを考えたときに,安定性も加味して考えるのならば,こんなところだろう。同じランクでも左の方が実力がある。もちろん,一切の不正行為はないものとする。S 赫A 天津,尻屋,ノノB 禰宜田,真岡,笹岡,伊東C 岸谷インターハイでの成績や実績をみれば赫が最強でよいだろう。次のグループがコンチネンタルカップの優勝で天津。尻屋は不正行為被害がなければ,天津を超える可能性があるだろう。ノノは精神的な不調が恐いので3番手か4番手くらいといったところだろう。昨年優勝の真岡,と準優勝笹岡について,最後のインターハイは不正でろくに実力が発揮できなかったので評価は低くなってしまった。個人的には,尻屋というキャラがもっとも好きだったから,もう少し活躍を見たかったものだ。ノノノノ 13【電子書籍】[ 岡本倫 ]