因幡の白兎とワニのお話
因幡の白うさぎの昔話は、皆さんご存知でしょう。ウサギがワニをだまして海を渡ったが、最後のところでつかまって、皮をはがれます。そこに大国主命が通りかかり、ウサギを助けるお話です。因幡の国には、白兎海岸という海岸があります。ウソみたいな本当の話です。きっと、ここでウサギは泣いていたのでしょう??で、島が見えるでしょうか?確かに沖合いに小さな島があるそうなんですが、神話の伝承では、ウサギが渡って来たという島は、島根県の隠岐の島だそうです。かなり離れています。でも、ウサギは隠岐の島から来たのだと思います。ここは国生み神話に出てくる島なのですから、ウサギがここからやってきてもまったくおかしくないのです。距離から言って、ウサギが乗ったのは、恐らくワニではなく、ワニ舟だったんだと思います。ワニ舟に乗って白兎海岸まで来たのですが、そこで何らかの理由で「騙された」と思ったワニ(ワニ族)にウサギはやられてしまった…(ワニ舟のことは、ホツマツタエに出てきますが、手こぎの小さめの船のようです。ホツマにはカモ舟というのも出てきますが、こちらは帆も張れる大型の船のようです。このカモは賀茂、賀茂神社の賀茂のことだと思います)ホツマツタエところで、このウサギですが、ただ者ではないと思うのです。奈良の大神神社(おおみわじんじゃ)に行きましたら、ウサギは三輪の神のお使いだとされています。大阪の住吉神社でも、ウサギが神様のお使いだそうです。ウサギは月の世界の生き物で、お月様の使者でもあります。昔は太陰暦を使っていましたが、お月様の移り変わりは太陽と同じくらい、人々にとって重要なものだった。そのお月様の使者が、ウサギなのです。ちなみに、太陽の使者は3本足のカラスです。このカラス、那智大社では神様のお使いとして登場します。神武天皇を先導したのが、この3本足のカラスで、奈良市には今も三碓(ミツガラス)という地名が残っています。さて、ウサギに戻りますが、ウサギは西王母のお使いでもあるのです。西王母というのは、中国少数民族(倭族など)の古代神話に出てくる女神で天地の運行を司る神様、あるいは生命の神様ともされていました。お月様にウサギが住んでいるのも、ウサギが神様のお使いであるのももとはと言えば、この西王母信仰から来ていると言われています。この西王母のお祭りが3月3日の桃の節句です。無病息災を祝いますが、もともとは天地を支配し不老長寿を司る、西王母のお祭りだということです。その神様のお使いであるウサギがワニにやられてしまったのですから、神話的には大事件ではないのでしょうか?おとぎ話ではワニをだましたウサギも悪いとされていますが、ウサギの遊び心を解しないワニは、かなり頭の固い、依怙地なやつだと思います。ところで、やられたウサギが泣き泣き訴えるのは、誰か?もちろん、大国主(おおくにぬしのみこと)ですね。ということは、この山陰世界では、大国主こそが西王母の代理人であり現実世界・地上の主なんだと思います。ウサギを話をすることで、誰が地上の主であるかが明らかにされているのです。大国主が因幡のウサギを助けるというのは、地上の主である出雲の大国主が、神のお使いであるウサギを助けるという話になります。このワニの事なんですが、実は神話の世界では、もっと別のところにも出てきます。宮崎県に鵜戸神宮(うどじんぐう)という由緒正しき神社があります。この鵜戸神宮に伝わるご由緒に、ワニが登場するのです。鵜戸神宮こちらの鵜戸神宮のHPにある、かわいい「おはなしアニメうどものがたり」をご覧いただくと、数ページ後にワニが出てきます。鵜戸神宮に伝わるご由緒では、山幸彦こと「ひこほほでみのみこと」の奥様、「とよたまひめのみこと」(豊玉姫)がなんとこのワニなのです。普段は人間のお姿をしておられるのですが、ご出産のときには元の姿に戻られる。そっとのぞいて見ると、これがワニだったのです。ということは、神武天皇をお産みになった「たまよりひめのみこと」もワニですね。この方は、「とよたまひめのみこと」の妹さんなんですから。玉依姫(たまよりひめのみこと)は、千葉の一宮「玉前神宮」に祭られています。なんと、千葉県ですよ!このあたりからも、古代日本の意外な広がりを感じるのは、私だけではないと思います。玉前神宮大国主が助けた「ウサギ」は、神の使いでありながら、この美しい?ワニ族にやられたのです。ワニ族は、当時日本のあちこちにいたのでしょうから、巨大勢力だったのかもしれませんネ。ワニ族は、海に生業をえながら、日本各地に土着している人たちで、母系相続の民族だったということでしょうか?もともとこのワニやワニ族はどこから来たのか?鵜戸神宮のご由緒では、自分の故郷に帰られたという豊玉姫は、長崎県は対馬の海神神社に祭られているようです。海神神社というは、何でしょうネ?海神神社海神神社は、古くは、わだつみ神社と呼ばれていたようです。この海のワニ族と同じかどうかわかりませんが、古代に渡来系のワニ(和爾)族と呼ばれた族がいました。奈良の天理市付近に住んでいたと伝えられています。宮崎時代には天皇家と姻戚関係にあったワニ族のことですから、奈良に住まいして大族となるのも、不思議ではないと思いますし、何しろ海に住むワニのことですから、日本以外に同族がいても不思議ではないと思います。