いまはリスクをさらに積み重ねて利を追うべきではない。
大前研一の「同時株安で見えた世界経済の“敵”」より 今年(2007年)2月28日、世界の株式市場に激震が走った。ロンドン、ニューヨーク、そして東京と、世界の主要な取引所で一斉に株価の急落が発生したのである。その引き金になったのは中国の上海市場だ。バブル的様相を見せていた中国市場にあって「中国政府が金融引き締めに乗り出す」との見方がされ、株価が急落。それが世界に飛び火したのである。 (同時に)円借りの影響で若干の円高が誘発されてしまったのである。 円借り取引とは円キャリーとも言い、日本の円の金利が低いことを利用した運用方法だ。円でお金を借りて、金利の高い米国などで運用して利益を上げる手法である。今回の場合は円借り取引で借りまくっていた人たちが、利益を早く確定しようと円の返却に走ったのである。日銀が円の金利を0.25%上げて0.5%にしたことも返却を急がせることになった。本当ならこの程度の金利上昇は大した影響ではないはずなのだが、利益確定を優先してしまったのだろう。円にお金が戻ってきたために、円高になってしまった。 事実、世界中を徘徊する過剰流動性は約2000兆円といわれているから、その1%に過ぎない20兆円の円キャリー分がそれほど大きな攪乱要因になるとは考えにくい。事実、この円高騒動も数週間で収まってしまった。 ところで、一応の平静は取り戻したとはいえ、これで世界同時株安が収束したと考えるのは早計だ。10年前のタイから始まってロシアまで届いた金融危機のときは、米国のロングタームキャピタルマネジメント(LCM)がロシアの先行きを読み間違えて倒産した。先物取引で250倍も掛けていたために収束できなかったのである。そしてLCMと韓国に過剰融資していた米国の銀行がおかしくなって、その影響で97年の12月には韓国危機が起こった。さすがにそうした一連の連鎖は誰も想像していなかったことだ。 米国経済については、先般ビジネスウィークに重要な指摘が掲載された。これまで米国には世界中から月に10兆円ものお金が流入していたそうだ。ところが、どういうわけか最近は2兆円程度にまで落ち込んでいた。ドルに流れていたお金の行き先が突然ユーロなどに変わり、米国に来なくなっていたのだ。これが2月の株安の直前の状況である。米国のGDPの推移を見れば、どれだけ外資の貢献が大きいかが分かる。米国の国内投資のうち、外国から調達された資金は実に75%に上るのである。この資金が落ち込んだわけだ。こんな状況で中国の株安がトリガーとなって、米国の株価が落ちてきた。中国のせいにしている人もいるが、実は米国経済そのものに原因があったのである。 何が悪いかというと、住宅市場だ。ここ数年、米国経済を牽引していたのは住宅市場である。ところが米国の住宅ローンでは、十分な抵当も取らずにローンを増やしている無責任な金融機関がたくさんある。また大手の都市銀行もそういう金融機関に貸し込んでいる。90年代初期のS&L危機の時と同じような状況である。サブプライムローンの利用者たちが破綻すると抵当となっている住宅を取り上げられる。取り上げられた住宅は、市場で投げ売りされる。すると住宅の値段がさらに下がる。その影響で、きちんとローンを払い続けている人たちの住宅も担保価値が下がり、ワリを食うことになる。住宅市場の悪化を放置していたら、ランクの低い人の問題がグレードの高い人にまで連鎖波及してしまう。日本のバブル崩壊も同じような展開で起こったことを忘れてはいけない。 この住宅問題がどれくらい尾を引くか。サブプライムローンを提供している金融機関は米国には少なくない。そして米国には危うい経営をしている金融機関が結構あるのだ。またファニーメイ(連邦住宅抵当公庫)やフレディマック(連邦住宅金融抵当公庫)のような公的な住宅向け金融機関もこの事に深くかかわっている。 (円キャリー取引の米国資金バブルへ与える影響は無視できない)ブッシュ政権はこの6年間景気刺激をほとんど住宅建設を通して行ってきたので、そこにいろいろな無理がたまっている。世界中の金融機関が何らかの形でこれにつながっている。従って、今まで一本調子で上昇してきた住宅価格にかげりが見えた場合には米国経済のみならず世界中の経済に大きな影響が出るだろう。 今の世界経済は、あと一つ積み木を足すと大きく崩れるかも知れない、と皆が心配するレベルになってきている。過剰流動性の受け皿が限られているうえに、今まで積み上がってきた米国の住宅や、新興国への貸し付けに“上限感”が出てきている。この心理状況が、世界経済の最大の“敵”である。見えないだけに対処は難しい。2月末に起こった世界同時株安はその“敵”の存在をあぶり出した。 いまはリスクをさらに積み重ねて利を追うべきではない。誰かが置いた積み木からガラが来る(株が暴落する)ことを想定した慎重な投資判断が要求される局面である。特に3月の第一週は外国人の大幅な売り越しになっている。これを日本の個人が買い支えて株価が下げ止まっている。このパターンはいつか来た道である。…………………………………………………………………………………………… 必見!消化酵素 サラリーマン・OLのための病気にならない生き方…………………………………………………………………………………………… 必見!頭のいい人悪い人のサイドビジネス 「紹介者名:神立リョウ、ピン1417002」とご記入ください。……………………………………………………………………………………………