総合ビタミン剤で、高齢者の感染予防ならず??
総合ビタミン剤で、高齢者の感染予防ならず。英国の65歳以上の高齢者910人をランダムにグループ分けして、総合ビタミン剤を1年間投与したが、風邪や肺炎などの感染症による医療機関の受診率や病気の日数は減らなかった。英国アバディーン大学のグループによるこの研究は、英国医学雑誌2005年8月6日号に報告された。■典型的な総合ビタミン剤を使用高齢者は免役が低下しているため、ウィルス感染による風邪や、細菌感染による肺炎や膀胱炎などにかかりやすいと言われている。高齢者のこの免役低下には、ビタミンやミネラルの栄養不足が関わる可能性が考えられている。この研究は、各種のビタミンやミネラルをサプリメントとして投与することで、高齢者の感染症を予防できるかどうかを調べた。英国の65歳以上の男女910人を、ランダムに2グループに分けた。第1のグループにはサプリメントを1年間投与し(456人)、第2のグループにはプラセボを投与した(454人)。サプリメントは1日1錠投与した。各種のビタミンとミネラル(ビタミンA、C、E、リボフラビン、ナイアシン、葉酸、鉄、銅、亜鉛など)が、英国人の必要量の50-210%含まれるもので、典型的な総合ビタミン剤の含有成分に相当する。■受診率に差なしその結果、風邪・肺炎・膀胱炎・皮膚炎などの感染症で医療機関を受診した延べ回数は、サプリメント群でもプラセボ群でも差がなかった(879回と930回、受診率の比は0.96倍)。また、感染症にかかっていた延べ日数にも差がなかった(8,072日と7,871日、日数の比は1.07倍)。処方された抗菌剤の数や、入院率にも、差がなかった。■否定的なデータが多い研究グループによると、高齢者の感染予防に対する総合ビタミン剤の効果を調べた、これまでの無作為割付臨床試験のうち、一部には有効性をうかがわせるデータもあるが、否定的なデータのほうが多いという。この研究に対する論評を寄せた英国シェフィールド大学の研究者は、全体としてはしっかりした調査で、これまでの研究での否定的な結果を追認するものだったと述べている。その上で、次のような問題点を指摘している。1)医療機関の受診などの記録が、対象者の自己申告に基づいている。2)サプリメントではなく、食事からのビタミンやミネラルの摂取量を調べていない。3)サプリメントに含まれるビタミンやミネラルの量が、あまり多くない。4)高齢者のなかでも、比較的健康な集団を対象にしている(参加者のうち、85歳以上は4%のみ、介護施設入居者は3%のみ)。これらの問題点のうち、1)と2)が結果に深刻な影響を与えているとは考えにくい。というのも、対象者をランダムにサプリメント群とプラセボ群にグループ分けしているので、対象者による申告の誤差(1)や、食事からの栄養素の摂取量(2)は、グループ間で大きな差はないと思われるからだ。■施設入居者や超高齢者での研究が必要3)について、たしかに、より多量のビタミンやミネラルを投与すれば効果が出た可能性は否定できない。反面、一般の高齢者の集団に、必要量の何倍もの栄養素を投与することで、かえって害になる危険性もある。そのため、栄養素の大量投与が現実的かどうかが問題になる。4)については、介護施設の入居者にビタミンEのサプリメントを1年間投与したところ、風邪を中心に感染予防の効果を認めたとする臨床試験が、2004年に報告されているという。介護施設の入居者や、85歳以上の超高齢者など、今回の研究対象よりもさらに免疫力が低い可能性のある集団については、さらに研究が必要だろう。研究デザイン 無作為割付臨床試験。出典 Avenell A, et al. Effect of multivitamin and multimineral supplements on morbidity from infections in older people (MAVIS trial): pragmatic, randomized, double blind, placebo controlled trial. British Medical Journal 2005;331:324-329.……………………………………………………………………………………………楽天スローライフのこの実験へのコメントビタミン・ミネラルが免疫力に影響を与えることは、間違いないと思います。栄養状態が良くなったときに、乳幼児の死亡率が低下するからです。この実験の問題点は、食事からの栄養摂取ではないことです。良くあるビタミン・ミネラルのサプリメントは、工業製品であり、体の細胞はこれを異物と判断して、細胞内に取り込んでいないといわれています。