共産党一党独裁に終止符
共産党一党独裁に終止符 ゴルバチョフ革命の決定打は一九九〇年初めに起こった。 ゴルバチョフ書記長の改革の巨弾がまず二月に炸裂した。共産党中央委員会総会が新しい政治綱領案を採択し、ソ連憲法第六条と第七条の改正を決定したのである。その内容は、共産党一党独裁を放棄して複数政党制を容認すること、「民主集中制」(共産党中央が全権を行使する上意下達システム)を改め、党と政府を分離して大統領制を導入すること、などであった。依然として「マルクス・レーニン主義の堅持」を謳う点で疑問は残るものの、これが型破りな政策であることに間違いはない。ここでソ連は共産党一党独裁の歴史に終止符を打ち、複数政党制を基盤とする自由化、民主化へと踏み出し、歴史的な体制転換の局面に突入したのである。 三月十五日、クレムリン宮殿で開かれたソ連臨時人民代議員大会は、一八七八票中一三二九票の賛成をもって、ゴルバチョフを初代大統領に選出した。任期は五年であった。 その年の六月一日、ゴルバチョフ大統領はワシントンを訪問、ブッシュ大統領と並んで座り、一連の軍縮に関する米ソ合意の調印式が行われた。ブッシュ大統領は、「少し前、ある人々は、米ソおよび米ソの偉大な国民が永遠に対立し続ける運命にあると信じていた。ゴルバチョフ大統領と私は歴史に挑戦し、新しい一歩を踏み出し、継続的協力関係を築かなければならない」「米ソは全部のことに合意しないかもしれないし、合意してもいない。しかし、米ソは一つの真実を信じている。それは、世界が待ちくたびれており、冷戦は終わらねばならないということだ」 と述べた。 これを受けてゴルバチョフ大統領は、「非常に重要なことは、より健全な国際環境、よりよい国際関係、暴力なき世界に向けて努力することを米ソが誓約しているだけでなく、それを実行に移しつつあるということだ」「思っていたより、たくさんの話をしすぎたようだ。それは、私が人間であり、感傷的になっていることを示している。米ソは成功のために大変な努力をしており、私は両国の国民に祝賀を送りたい。ブッシュ大統領、あなたと握手をし、互いの努力を祝したい」 と語った。そしてブッシュ大統領に向かって握手を求めた。 互いを見つめる二人の目には涙が光っていた。最前列に座っていたブッシュ大統領令夫人、バーバラ女史をはじめとして、来賓一同が感動を抑えきれずにハンカチを取り出した。世界平和の序曲であった。