文鮮明師とゴルバチョフ大統領の単独会談
文鮮明師とゴルバチョフ大統領の単独会談 次は秘書室長が来て、文鮮明先生御夫妻だけを大統領執務室に案内した。お供をして入ったのは、通訳を担当する著者と郭錠煥世界宣教本部長、AULA会長ホセ・チャベス大使であり、ソ連側はゴルバチョフ大統領と通訳、そしてウラソフ・ノーボスチ通信社社長が同席した。 ここでのソ連側の対応は、二つの点で異例であった。 一つ目。今までソ連の歴史において、外部人士は誰もソ連大統領執務室に入ったことはない。この部屋はソ連帝国の権座であり、秘密中の秘密の場所である。ところが、今回はその規則を破ったのである。 二つ目。ここは大統領執務室であり、社交場ではないので、夫婦同伴で入るようにはなっていない。当初、大統領秘書室は文先生御夫妻が共に入室されることを頑強に拒絶した。私はそれよりももっと頑強に、われわれの伝統によれば、お二人が一緒に入られてこそ祝福になるのだと言った。天から見れば「真の父母」の位置であり、お二人が揃って入室されてこそ彼に天運を授けることができる、という信念である。 私は次のように言った。「文鮮明先生の令夫人は『世界平和女性連合』の総裁です。単なる夫人の資格だけではありません。ゴルバチョフ大統領は世界の女性たちの支援が必要ではありませんか。大統領に言上してみてください。先生御夫妻でなければ、われわれはこの会談そのものを中止にします」 私は断固として強硬に要求した。天を信じて腹を決めたのである。いや、こうすることがゴルバチョフ大統領を生かす道だと信じたからである。すると大統領はOKを出した。 大統領執務室は豪壮な宮殿の一室というよりは、日々押し寄せてくる山積みされた案件を処理するための機能的な事務室であった。正面に執務用の机があり、その横にソ連旗が立て掛けられ、壁にはレーニンの肖像画が掛かっている。手前には幹部会のテーブルがあって、椅子が十数個置いてある。この部屋から、スターリンがソ連全土に君臨し、ブレジネフが世界赤化戦略を指揮したのである。それを考えると、一種の戦慄を感じざるを得ない。 しかし時代は変わった。今はこの部屋で、ソ連大統領を前にして、神と平和が論議されるのである。ああ、歴史の奇異なるかな! われわれはまず執務室に入って、勲章授与式を挙行した。これは世の中に知られていない事実である。勲章授与式と言っても、天から見れば祝福式である。ラテン・アメリカ統一連合(AULA)から献呈された「自由と統一のための大十字勲章」である。勲章の中央には、中南米の独立と統一の英雄、シモン・ボリバルの肖像が彫刻されている。この勲章をAULA創始者の文先生がゴルバチョフ大統領に授与する儀式である。 チャベス大使が勲章証書を読み、文先生が肩章を大統領の肩に掛け、大勲章を胸に吊した。それから、その勲章の上に右手を当てて、左手で令夫人の手をつかんで懇切な祈祷をされた。その声は感激に震えておられ、御夫妻の目には光るものがあった。そして最後に、「この大統領を神様が祝福してくださいますように。(God bless you, Mr. President.)」 と英語で語られて、この宇宙的な二人の巨人は熱い抱擁をした。 ゴルバチョフ大統領は紅潮した顔で、幼い子供のようにうれしそうであった。われわれ全員にも握手を求めてきた。 ああ、このソ連独裁者の権座、今はソ連大統領執務室に、これほど温かい愛の雰囲気が漂ったことがかつてあっただろうか。 ゴルバチョフ大統領はこれで天の祝福を受けたので、天運の保護を受ける者となった。 いよいよ二人は席に着き、その場に世界の歴史を変える言葉が行き来した。「大統領。私は大統領の改革の意志と動機を信じます。しかし、これは大統領の改革であると考えれば失敗します。これは神様がなさる改革です。大統領はこの事業に召命を受けられたのです」「ソ連と大統領が生きる道は、神様をソ連にご案内することです。神様を差し置いてするすべての人間の仕事はことごとく失敗します。 大統領。共産主義は神様の主義ではありません。共産主義には終焉が来るようになっています。この国に宗教の自由を呼び起こしてください。精神のペレストロイカがまず起こらなければなりません。共産党が滅びたとしても、国が滅びるわけではありません。その時には真実の新しい国が誕生することでしょう」「ベルリンの壁の崩壊を許された大統領は、勇気あることをなさいました。今後、さらに大きな大統領の決断が必要となることでしょう。ソビエト連邦の各共和国の自由独立を防ごうとなさらないでください。巨大なロシアがあるではありませんか」「この時点で、世界で戦争を防ぎ、核兵器の戦争を防ぐことができる人は、大統領お一人だけです。大統領お一人がなさること如何によって、世界人類を滅亡させることもでき、恒久的な世界平和を構築することもできます。そこで、私はきょう大統領にお会いして、神様の祝福を請うたのです。ソ連大統領の職に未練がましくしないでください。あなたは世界平和の使徒として、世界の大統領として永遠に残る仕事をしなければなりません。絶対に血を流すようなことをしないでください」 第一部の会談はゴルバチョフ大統領が語ったペレストロイカの説教であったが、第二部の単独会談は文先生が懇切に忠告する神主義の説教であった。 彼は熱心によく聞いた。私は英語に通訳し、ソ連の通訳官はそれをロシア語に通訳する。真摯な言葉のやり取りに火花が散った。ゴルバチョフ大統領は首を縦に振りながら熱心に傾聴した。「レバレンド・ムーン。あなたの言葉は普通の言葉ではありません。しかし、ソ連と私のために愛によって語ってくれた言葉であると信じます。私はきょう先生の言葉の真意を深く把握しました。ローマ法王庁訪問以後、宗教に対する理解の幅が広くなりました。宗教の役割に対してはレバレンド・ムーンと認識を同じくしています」