計画思い出させた文鮮明総裁
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 【ビューポイント】ベーリング海峡の可能性 地球規模の経済的影響/歴史的な平和のトンネル構想 ロシア政治アカデミー理事 ウラジーミル・ペトロフスキー 世界日報07.7.20記事より◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 計画思い出させた文鮮明総裁 私たちは、比喩や隠喩を好んで使う。「平和と友情の橋」というフレーズも同じであり、さまざまな国や民族を結ぶ道路や橋という、文字通りの意味で捉えることはあまりない。こんな考えが頭をよぎったのは、文鮮明UPF(天宙平和連合)総裁が提唱した、ベーリング海峡をトンネルと橋で結ぶという、大胆で野心的な構想を耳にしたときである。計画はあまりにも壮大で、実現する可能性は低いのでは――それが私の最初の感想だった。 しかし、本当にそうなのだろうか。 かつてユーラシアと北米は一つの大陸だったが、一万数千年前に氷河期が終わると、ロシア極東のチュコチとアラスカの間にある地峡は海水で満たされた。その後、長い時間が経過し、人々はこの自然の障害を乗り越えようと、思案をめぐらせるようになった。 十九世紀末の帝政ロシアでは、シベリア鉄道の敷設計画が練られる中で、ベーリング海峡を鉄道連絡船で結ぶ計画が俎上(そじょう)に上った。その後、米国のあるシンジケートの提案で、連絡船ではなくトンネルで結ぶ構想が浮上した。ロシア政府はこの提案を真剣に検討したが、膨大な建設費用に対して利益は不透明との考えが広がり、その後の戦争や革命で計画も忘れ去られた。 ロシア革命後、ソ連のボリシェビキは、ベーリング海峡をいかに自然の要塞とするかを考えた。「社会主義の敵」がチュコチから侵入するのを防ぐためである。とはいえ構想は空想科学文学などで生き続けた。 ベーリング海峡を結ぶ計画について、本格的に政府や専門家集団が検討しだしたのはソ連崩壊後である。一九九一年にワシントンで、国際非営利組織「Interhemispheric Bering Strait Tunnel and Railroad Group(IBSTRG)」が公式に登録された。米側の発起人は、アラスカ州、米国鉄道協会(AAR)、ベーリング海峡付近に土地を所有する少数民族協会、複数の大型建設企業、鉄道企業、コンサルタント会社などである。 同時にIBSTRGのロシア支部も登録され、ロシア側の計画参加組織は、経済省、建設省、燃料エネルギー省、国家北方委員会、国営トランスストロイ、ロシア統一エネルギーシステム、ロシア科学アカデミーなど、そうそうたる面々であった。米ロの検討や国際会議の経緯 さらに一九九六年、米ロ両政府間に作られたゴア(米副大統領)―チェルノムイルジン(ロシア首相)委員会で、IBSTRGの計画の資金面に関する議定書が調印された。これを受け米政府は一千万ドルを拠出することを決定したが、資金の使い道について米ロ両政府は合意できなかった。資金は拠出されず、計画も再び凍結された。 最近、モスクワで「ロシア東方の巨大プロジェクト」という国際会議が開催された。ロシアの経済発展貿易省などが参加したこの会議では、東シベリアのヤクーツクからオホーツク海に面したマガダン、チュコト自治管区の首都アナディリ、ベーリング海峡に面したウエレン、そして対岸のアラスカのノーム、フェルバンクス、フォートネルソンを結ぶ総延長六千キロに達する鉄道、高速道路、パイプライン、光ファイバー、電力幹線について討議された。ちょうど真ん中に横たわるベーリング海峡を、総延長百キロに達するトンネルを掘削し陸路で結ぶ。また、トンネルは海峡に浮かぶ二つの島への出口も持つ。プロジェクトは、極東、東シベリアに眠る手付かずの膨大な天然資源を開発する可能性を与えるものであり、また、ベーリング海峡には強力な潮汐(ちょうせき)発電所の建設も計画されている。 ベーリング海峡トンネルについては、延長九十八かキロら百十三キロの間でいくつかのバリエーションがあるが、英仏海峡トンネルが五十キロであることを考えると、どれにせよ極めて長大だ。しかし、海峡のほぼ中央に大ラフマノヴァと小グルゼンシュテルナという二つの島があるおかげで五十キロ弱の二つの区間に分けることができる。掘削技術的には実現可能なものだ。 専門家はプロジェクトについて、ロシアや米国、その他の潜在的参加国にとって、大きな利益をもたらすものだと評価する。東シベリア、極東の膨大な資源の開発が世界経済に与えるインパクトだけではない。米国やカナダ、さらに南米は、生産品や技術をロシアや中国、東南アジア、中央アジア、南アジアに直接輸出するルートを得ることになり、アジア太平洋諸国にとっても、南北米大陸への直接の輸出ルートが開かれることになる。実現は高度な国際協力が必要 計画に懐疑的な人々は、ベーリング海峡トンネルを交易ルートとして使うためには「ロシア、アラスカ側の双方で、数千キロにわたる鉄道や道路を建設する必要があるが、それは現実的ではない」と指摘する。確かに、例えばアラスカ側では、フォートネルソンからベーリング海峡まで千九百キロの鉄道や道路を整備する必要がある。 ところで、ロシアでは一九三〇年代に、バム鉄道から分岐しヤクーツクに達し、そこからさらにベーリング海峡を望むウエレンまで達する鉄道の建設が開始されたが、その後、さまざまな理由から計画は凍結された。しかし、プーチン大統領はこのほど策定した「ロシアの二〇二〇年までの交通運輸計画」で、このウエレンまでの鉄道建設を、ロシア政府の最優先課題の一つとして位置付けたのだ。 また、専門家はベーリング海峡トンネルによる新たな交通輸送幹線が生み出す利益を、年間一千万ドルに及ぶと計算している。もっとも、建設に掛かる費用は膨大だ。海峡トンネルを含め、ヤクーツクからフォートネルソンまでの鉄道・高速道路などの建設には五百五十億から六百七十億ドルが必要とされる。したがって、この計画は一国が行うには荷が重過ぎる。プロジェクトの実現には、米ロおよび周辺国の新たな、そして極めて高度な政治・経済面での国際協力が不可欠だ。◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇---------------------------------------------------------