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カテゴリ:1979年頃のディスコのお話
昨日は久しぶりにファンキー・ドールズの名前が出てきたので、委員長の往年のライバル・ジョニーのエピソードをひとつお話ししておきましょう。 この頃の委員長は髪の毛もさっぱりして、昼間はスーツなど着こんで会社ごっこに勤しんでおりました(委員長の場合はすべてゴッコです)が、夜は夜で相変わらずディスコの色に捲かれて脂ぎっちゃったりしちゃう頼もしい大馬鹿野郎でした。 トゥモローUSAから引き連れてきた常連の中には委員長のファンなんぞもおりまして、更に新宿クレージーホースで新たに出来たご縁の若い娘などともヘラヘラしていたわけですが、ある夜二人組のおねーちゃん達にいきなり声をかけられました。 カーリーヘアにチョイ厚化粧、委員長好みのこのおねーちゃん、なんとその昔高校生の頃にトゥモローUSAで委員長と一緒に写真を撮った仲だったそうで、無事ガッコも卒業し社会人となった今、改めて委員長に会う為にやって来たとのことでした。 おーおー、それはそれはありがたいことです。 すっかり美しいお嬢様になられてさぞや親御さんも喜ばれていることでしょうってなことで、早速お二人を六本木ナイトへお誘いした委員長でした。 実はこの頃、ジョニーのバンドBIBが六本木に出ているということを風の噂に聞いていた委員長は、中々訪れるきっかけがなく躊躇しておりました。 そんな時のおねーちゃん二人の訪問ですから、この機会を利用しない手はありません。 靖国通りからタクシーをぶっ飛ばして一路六本木「最後の20セント」へ向かう一行でした。入り口で履物を脱いでお店に入った委員長たちの目の前では、すでにジョニー&BIBが演奏中でした。 「ワ~イ、エム、シーエー、YMCA」 手振りを付けて唄うジョニーの姿は昔に比べてひとまわり萎んだようでした。 衣装も色あせたジャンプスーツ、ナチュラル・アフロヘアも随分とこじんまりとしていて、往年の輝きは見る影もありません。 一体オレは何を期待してここに来たんだろう。 踊り場の客にまるで媚を売るようにして唄うジョニーの姿は、今の自分自身を写す鏡のようでもありました。 悲しかった。 理由なんかありません。ただ悲しかった。 ステージが終わってジョニーがテーブルにやって来ました。 「ロニー、驚いたよ。久しぶりだね」 「ああ、ここに出てるって聞いてたから・・・・」 愛想笑いこそしてはいましたが、お互い続く言葉が出てきませんでした。 「仕事何時に終わるの?」 「次のステージで終わりなんだけど」 「よかったらどっか行かない?」 「そうだね、ここ出たところにピップスって店があるんだけどさ・・・」 「ピップスなら知ってるよ。じゃ、先に行って待ってるから」 とにかく一刻も早くその場を出たかった委員長でした。 もう彼のステージを見たくなかったし、その場の店の雰囲気からとにかく逃げたいと思いました。 連れて来た女の子たちも、入ったばかりなのにすぐ店を移る委員長を不思議に思っているようでしたが、これ以上ここにいたらこのわけのわからない感情に押しつぶされそうだったからです。 六本木のメインストリート、雑居ビルの地階にあるピップスというお店は、今風に言うとビストロ、洋風パブ居酒屋のような趣で、店内にはサッカーゲームなどが置いてあり、店内のフロアーも客層あるいはお客の容貌で踊りを踊るスペースになったりする、当時としてはちょっとおしゃれなお店でした。 特に深夜の常連客は近隣の同業者やアメリカ人を中心とした外国人なども多く、気分的にはちょっとした外国風な感じのお店でもありました。 そんなお店、ピップスに入ったものの委員長の心は激しく動揺していました。 理由はわかりません。久しぶりに会った戦友の顔を見て嬉しかったのと同時に、虚しく、そしてどうしようもなく悲しい感情は自分でもコントロールできません。 一体オレは何を期待してジョニーに会いにきたんだろう。 自身への問いかけはずっと続いていました。 できればジョニーがここに現れないで欲しい。 複雑な気持ちには理由なんてありません。 感傷的とかセンチメンタルとかではなくて、胸の奥につかえた気持ちが自然に沸き起こってきただけです。 未だにこの時の想いはしっかりと覚えています。 委員長の期待通りジョニーは現れませんでした。 閉店間際に店を出た委員長は女の子たちをタクシーに乗せたまま、一人歌舞伎町で降りてそこで別れました。 わけもない悲しさだけに包まれた委員長は、ふらふらとそのままC子の働くクラブ「同期」に入って行きました。 委員長のいきなりの訪問に驚いたC子。 「どうしたんだね、こんな時間にぃ~」 C子の清水弁が妙に心地よく心に沁み込んできました。 「たまには一緒に帰ろうかと思ってさ」 いつもと違う委員長の雰囲気を肌で感じ取ったC子は、何も言わず身支度をして委員長の腕を引いて表に出ました。 「おなか空いてないかね?」 「・・・・・・」 「何か食べて行こう」 未だ薄暗い明け方の歌舞伎町を抜けて、新大久保近くにあるナイト・レストランに入りハンバーグステーキを注文しました。 C子はビールを頼んで一気に飲み干しました。 「なんかあったのかね?」 「いや、何にもないよ」 委員長はC子の飲み残しのビールをコップに注ぎ、一気に飲み込みました。 「どうしただね?」 「たまにはこうゆう日もあるさ」 「何カッコつけてるだね、この人は。なんかあったんならはっきり言いな」 大きな目を緩ませて笑うC子の顔は一段と優しく委員長の眼に映りました。 「こうしてオレ達も歳取ってっちゃうのかなあ」 「何言ってる?」 「オレは何にも変わってないのに歳は取っていくんだよな」 「変わってなくないよ、あんただって随分変わったよ」 「そうかな、オレはずーっと変わってないと思ってたんだけどな」 「人間は知らないうちに変わっていくんだよ」 二人のテーブルにハンバーク・ステーキが運ばれてきました。 「わぁ、美味しそう。食べよう」 一度知った美味しいハンバークの味はたぶん一生忘れないと思う。 歳を取っても舌が覚えた味は一生消すことができないと思う。 自分の中では変わっていない味だから、また食べたくなるんだと思う。 そんなことを漠然と思いながら、C子と仲良くハンバーグ・ステーキを食べた委員長でした。(今日はちょっとマジな話になってしまいましたね) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2005年10月25日 06時51分51秒
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