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2014.02.17
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カテゴリ:回想
昭和55年のある日、野暮用から帰宅すると、玄関に夕子のものとわかる靴がそろえてあった。
そして、歓談の話し声が聞こえて来た。
母「前々から息子の話を聞いてはいたけど、夕子ちゃん、てのひらを拝借。あ、長年ぬかみそをかき回してるにおいが染みついてるわね。本当にたいしたものだわ」
夕子「お母さん、ぬか床(ぬかどこ)を見せていただけますか」

スズキランディー.jpg
当時の原付バイク。奥様バイクはスクータータイプより、両足をステップに乗せるオートバイタイプが主流だった。なお、遠目にもブ男である。彼女はハンサムな男と結婚し、離婚して、このブ男との妙な縁に戻った。

私はこのところ、夕子が来宅のあいだはお邪魔虫のようで、夕子と母の歓談・談笑を重んじようと、テキトーに家(うち)の中にいた。
ほどなく台所から独特の臭気が漂って来た。
私「ううっ、くさい ! 低い鼻がもげそうだ」

二人は私に一べつくれたきりで、ぬか床(ぬかどこ)をかき回したりしながら、「ぬかみそ談義」にふけっていた。
母「あら、そうなの。やっぱり若い人は工夫が上手ね」
夕子「でも、レモンが漬いたあとの漬け物にどれだけ役立つか、余りわからないんです。基本はお母さんのように、昔からのやり方で充分だと思います」

いろいろ話にふけって、しかもかき回す作業も続くので、私は出る幕なし。
夕子は私に対しては、漬け物の出来る過程を、得意の化学を引用して、理論的な話や説明をしたものだが、母の前では一切言わなかった。

母「まだ、漬いてないわね。どう、夕子ちゃん」
夕子「いえ、私はお母さんの経験の腕にかないませんから・・」
母「そんな他人行儀なこと言わないで、ね、ちょっと味をみてくれる ? 」
夕子「じゃあ、少し。・・・お母さんの言うように、これはもう少しかなあって思いますけど、あの、こっちの味をみてもいいですか ? 」

うーむ、だんだん退屈になって来た。
母「どお ? 」
夕子「こっちは、そろそろ漬いて来たような気もするけど・・お母さん、どうですか ? 」
母「あ、ホントね。ばらつきがあるわね」
夕子「でも、私の場合は漬き過ぎて、食卓に出すと味が濃くなってしまうこともあるんです」
母「そう、その加減をよく見てないと、ダメよね。水で味を落とすなんて、あわててやるけど、やっぱり頃合いで出す味にはかなわないわね」
夕子「厚和さんは、漬き過ぎなんて、文句言うんですか ? 」
母「ううん、あの子はとにかく漬け物が好きで、漬き過ぎたのも、『うまい』って言ってバリバリ食べてくれるから、そこは助かってるけど」

会話、長いぞ。
そう思いながらも、私は母が話し相手に、にわかに恵まれ出したことを喜んでいた。
かと言って、確かに退屈だ。

当時の相棒の手帳のコピーから抜いてみると、会話のやり取りこそ書いていないが、およそ以下のようにある。
「厚和さんの家を何度目かの訪問。彼のお母さんからお誘いを何度も受けていたが、遠慮はかえって失礼と思い、またお邪魔することとした。

家に着いて、しばらくお母さんと歓談。そのうち、漬け物の話になり、何はともあれ、お母さんご自慢のぬか床(ぬかどこ)を見せていただく。
味付けについて、私は生意気にも、レモンなどを使っていると話す。

今日の訪問は、お母さんとの歓談が目的。彼には悪いけど、お母さんと出来るだけ話をするつもりなので、無視まではいかないけど、彼に気遣うのをカットした(以下略)」以上抜粋。

時々台所を見ると、何んだかんだと言いながら、二人で先刻から漬け物をかなり食べている。腹がいっぱいにならないかとあきれる。
そう思っていると、何やらまた台所がにぎやかになった。
冷蔵庫からおかずなどを出して、茶の間に持って来た。

母「せっかく夕子ちゃんが来てくれたから、早めのお昼にするよ」
あっというまに食卓におかずが並び、お昼ご飯となる。
ここでも母と夕子二人で、ご飯をかみ終わるたびに、おかずの話ばかり。
私「あのね、食べながらしゃべるのは礼儀の初歩にもとるんだよ」
夕子「あら、あたしたち、きちんとかみ終わってからお話ししてるのよ」
母「そうよね。それに、食事しながら歓談するってのはいいものよね」

何んだ ! 私の立場は全くないではないか。
母「でも、夕子ちゃん、ズバリ言ってくれるのね」
夕子「あ、言い過ぎたら、ごめんなさい」
母「ううん、気にしないで。この子ね、ちょっとしたことで傷ついて、困ることがあるのよ。ろくに話し合いも出来ない。あなたみたいな人が、時々ガツンってやってくれるくらいがいいのよ」

夕子「お母さんのお話で勢いづいて言うわけではありませんけど、私、彼が傷つきやすいの、気がついてたんです。何んか、本人はわからないかも知れませんけど、微妙にそのあとのやり取りがぎこちなくなるんです」
母「そう、それよ。でも、長男とのやり取りでも、その微妙な顔つきで、ぎこちなくなって、『あいつとは話しにくい』って言ってたわ。でも、あなたたちは、まあまあうまく行ってるの ? 」

夕子「ええ。私は厚和さんの話の流れがぎこちなくなったと感じたら、シラケたムードのままにしないように、私から話題を変えたり、提供し直したりして、会話を続けるようにしてます。だって、その部分だけ気遣いすれば、本当は厚和さんは、淋しがり屋で人懐っこいから、話が楽しいんです」
母「あらあ、あなた、高校生なのに大人なのね。良かったわ」
夕子「お母さん、私たち、割と相性いいと思いますよ」

母「良かったね、ひろちゃん。縁は異なものっていうけど、あんたの相手してくれる女の人なんて、まず巡り会えないからね。これで夕子ちゃんが社会人だったら・・・。でも、そうだったら、この出会いはなかったわね。グチめいたことになったけど、許してね」
夕子「いえ、そんなこと・・」

正直、この会話がグサッと胸を刺した。大学までの付き合いという、期間限定に終わるおそれを感じずにおれなかった。
もっとも、この先しばらくは、彼女との付き合いは続くので、私も当分楽しく過ごせると、気を取り直すことにした。

ここでノロケである。今の会話にあったように、私は人と歓談していても、相手の言った言葉一つに、それまでの話の流れを無視されたり、「退屈だ」と言われたりしたような気分になることがあり、自意識過剰なのだろうが、自分なりに会話の流れを相手と続けて来たのに、流れをせきとめられて、心外な気持になることがよくあった。

この会話の流れが崩れた時の私の取り繕いが実にヘタで、これが相手に伝わり、「話が面白くないヤツだ」と思われ、結果、友人の一人も出来ないまま、児童・生徒の時代を過ぎて、遂に付き合い下手となったきらいがある。

バイク教習をしていたある時、彼女が一息入れようとバイクをとめて、私と会話を始めた。
ところが、私のひとことに彼女が何か答えたあと、私は自分なりに楽しんでいた話の方向をそらされた気がして、次の言葉がうまく出ず、会話の流れが乱れる感じを覚えた。

言い換えれば、私は相手の言葉にこだわり、自分が話し続けて来た流れを復旧させようと、相手の話したことを修正しようとしてしまう欠点があった。
これは未だに直らない、話術の稚拙さである。
この時、彼女はわざとだろう、いたずらっぽく「何んか、傷ついたみたいね。違う ? 」と言った。

私は返せる言葉を持たなかった。ところが彼女は言った。「厚和さんの性格、一つわかった。でも安心してね。生意気なようだけど、あたしは平気よ。人との会話は、スムーズにいかないってこともあるもの」
私は何が平気なのか、相手の考えがわからなかった。ところが彼女はまた言った。

「厚和さんがあたしに嫌悪感を抱かないでいてくれる限り、あたしは厚和さんの話相手を続けるつもりだもの。普通、人はより良いと思う相手をさがして、その結果、気の置けない友達を作るんでしょうけど、じっくり話せば意外に味わい深い人もいるのよね」

私は問うた。
「でも、私のような者の相手は疲れない ? 」
彼女は首を横にふって、「味わいのある人を大事にするほうが、すぐ気が合う友人ばかり作るより、長い目でみると、得がたい交際相手になることもあると思うの」

このあと、どんなやり取りを続けたか覚えていないが、彼女はいろいろ話してくれた気がする。そして、この時から、確かに彼女との交際は深まっていった。
再び我が家の昼食場面に戻りたいが、さすがに字数が気になるくらいは書いた。
帰りは彼女を250ccバイクの後ろに乗せて、一気に旧国道一号を走り、無事下宿に届けた。






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最終更新日  2014.02.17 22:40:13
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