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テーマ:今日行ったコンサート(1138)
カテゴリ:オペラ
新国立劇場 14:00〜
4階右手 ファルスタッフ:ニコラ・アライモ フォード:ホルヘ・エスピーノ アリーチェ:ロベルタ・マンテーニャ メグ:脇園彩 ナンネッタ:三宅理恵 フェントン:村上公太 クイックリー夫人:マリアンナ・ピッツォラート カイウス:青地英幸 バルドルフォ:糸賀修平 ピストーラ:久保田真澄 新国立劇場合唱団 東京交響楽団 指揮:コッラード・ロヴァーリス 演出:ジョナサン・ミラー ファルスタッフ。あんまりオペラとして面白いと言えるかどうか.....その割にやりたがる人は多いようで、時々ぶつかります。新国ではこのジョナサン・ミラーの演出が今回5回目だそうで、前回は2018年。個人的にはその直後にベルリンで観た方が印象は強いのですけれども。新国は東フィルでカルロ・リッツィの指揮。ベルリン国立はバレンボイム。最近では去年東フィルがチョン・ミュンフンの指揮で、定期演奏会で演奏会形式で。これは結構面白かったのだけれども、その辺が実はファルスタッフというオペラの難しさでもあり。 いや、皆やりたがるし、割と珍重する人もいるけれど、基本的にファルスタッフってオペラとしてはそんなに面白いというわけでもない部類のそれだと思いますよ。 まずはアリアの類が充実しているわけではない。といって、例えばオテロのような劇的緊張に満ちた作品でもない。劇として見ると、個人的には、同じシェークスピアの原作であっても、オテロが原作からエッセンスを抽出してオペラとして高い完成度を達成したとするならば、ファルスタッフは、まぁ、そこまでではない。嘘だと思うなら、機会があれば素人じゃない劇団で一度「ウィンザーの陽気な女房達」をご覧になることをお勧めします。ファルスタッフは悪い出来ではないけれど.... 音楽的には、山があるわけではない。敢えて言えば、終幕のフーガが勝負なんですよね。決して全編にわたって出来が悪い音楽ではないけれど、やはり劇的緊張は深くない。強いて言えば、3幕冒頭のファルスタッフのモノローグくらいですかね。それが、ストーリーから外れて最後突然始まるフーガ。ここが締まらないとダメなんですよ。結局。 で、今回は、これが締まらなかったですねぇ。これが全て。言えばファルスタッフはそれなりに声量はあるようだったし、歌手によりそれぞれ歌ってはいました。日本人キャストも、ってざっくり言うけれど、タンホイザーよりはもうちょい良かったのではないかと。でも、最後のフーガ。ここのアンサンブルは死んでも守らなきゃ、なんですがね。東フィルの時は、頑張ってたけど、歌手がもうもたないです、という感じでした。でも、チョン・ミュンフンは、流石にそれでもどうにかしようと頑張ったし、歌ってる方も、オケも、どうにかしようと頑張る風はあった。今回は、まぁ、皆、頑張ってる感じはなかったかな、というか、ここが肝だと思ってやってる風ではなかったかな...... 個人的には、これが全て。言い換えれば、他がそれをカバーするほど出来が良かったわけでもないしなぁ。悪くはないんですよ。でも、ねぇ。 演出。既に書いた通り今回で5回目の演出なのですが...... 今更こんな言い方もどうかと思うのですが、ジョナサン・ミラーの演出って、必ずしも優れているというわけではないと思うんですね。ええと、ダメって訳ではないんです。むしろモダン・オーソドックスとでもいうようなものだと思うし。だから、違和感はないんだけれど、それ自体に強い求心力があるというものではない。だから、気を抜くと、すぐにダレると思うんですね。 で、最近の新国のオペラの演出って、再演演出がどうも細部で腐ってしまう傾向がある気がするんですよね。 いや、明らかにここはおかしい、とかいうのはないと言えばないんですが。ただ、オペラ自体も勢いで見せられるものではないから、その分、演出は気を配って欲しいのだけれど、どうも細部に丁寧さがないというか.......芝居になりきってないんですよね。 それが、モロに出てしまうのが、このオペラで唯一の合唱の出てくる、最終幕の公園の森の場。合唱はファルスタッフをからかい脅しにやってくる、精霊やら妖精やらに扮した集団。なのだけれど、専らファルスタッフに絡むのは主要メンバーだけで、合唱は実質ちょっとウロウロするだけ。それだけのこと?でも、そういうのが、舞台を、芝居を、具現化するということなのですよ。 実は合唱はタンホイザーの時も、巡礼の合唱とか、芝居になってないんですよね。歌うから?いや、東海林太郎や鶴田浩二じゃないんだからさ。(って言って分かるのか知らんが)直立不動じゃないけれど、舞台であまりに芝居が見えないんですよね。 そこなの?って言われそうですが、ええ、そこなんですよ。ファルスタッフは、なんとなく音楽でエイヤーっと走り抜けられるようなものではないし、そこまでの実力も演奏家の側にはないのだから、じゃぁ、丁寧に作るしかないと思うんですが、丁寧さというものが、ね。 なんかすごくつまらなかったとか、酷かったとか、そういう訳ではないですよ。でも、観て、正直なんとも思わないよね、というものであったのも確か。ある意味その方が深刻です。そう、比べるものでもないけれど、前日に聞いた水車屋とかの方が遙かに音楽もドラマも濃かったと思いますよ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2023年02月15日 01時03分21秒
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