ネタバレはしてませんが、内容に触れています。
未読の方はご注意下さい。
“わたし”の姉・ダイアナは事故で子供のジェイソンを亡くした。
しかしダイアナはそれが元夫・マークの殺人ではないかと疑っている。
“わたし”の父は統合失調症で、ジェイソンもまた生まれた時から病を患っていた。
ダイアナの執着心に“わたし”はダイアナも発病したのではないかと不安を覚える。
主人公はディヴィド、“おまえ”と“わたし”で描かれる。
“おまえ”で現在、刑事との会話で事件を振り返っていき、“わたし”で過去の事件がリアルタイムで進んでいく様子を描写。
ミステリーと言うより、不幸を背負った姉弟の話として面白いと思います。
この作家さんの小説は読み始めると夢中になるけど、この作品もそうでした。
“記憶”四部作の後に書かれた『心の砕ける音』が好きな私としては、未来へのほのかな希望がすっかり消え失せて、重く哀しい、やるせない結末をまた描いている最近の作品がどうも苦手です。
不安から猜疑心に苛まれ、追い詰められていくディヴィドの心理の描写は素晴らしいし、どんでん返しもあるから面白いんですけどね。
とにかく重くて、精神状態の良い時でないとちょっとキツイ。
それは統合失調症と言う自分では如何ともし難い病気への不安、遺伝と言う“血”を怖れる気持ちが全編に描かれているからなんだと思う。
解説にもありましたが、ラストはこの結末だから良いと言う事は分かっているのですけれど、辛すぎて、「ダメですか?、やっぱりこれじゃなきゃ・・・。」と思ってしまいました。
トマス・H・クックの小説の中では↓これが一番好き。