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2009年02月10日
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木曽駒ヶ岳・雪山(2)

 結構時間を食ってしまったが、9時50分、我々は出発した。雪崩が発生しやすい最短コースは避けようと考えていたが、既に何人か入っており、大丈夫そうなので我々も最短コースへ。歩き始めると暑い。しばらく歩いた所で休憩をかねて服を脱いだ。そこからは南アルプスが一望できた。甲斐駒、仙丈、白根三山、そして奥に富士。他の二人は山の名前は分からなくともその見事な山脈に見惚れている様子であった。

003-7828-31岩峰と南ア.jpg
南アルプスと頭だけ出ている富士山

 宝剣岳の岩壁にはまだ雪があまり付いておらず、雪崩の心配もなさそうである。宝剣岳辺りには月が出ていた。太陽の対面にある宝剣岳辺りの空は真っ青であった。青よりも深い蒼、藍色に近い色だった。この空を見た時、私はアルプスにいるのだな、と強く想った。確かユンオだったかが「空に登っていくのですね」とか言っていたが、どうもこういう場所では武力馬鹿でも詩人になるようである。10時45分、八丁坂の登り口に着いた。ここからは勾配がきつくなり、注意が必要である。登り始めてみると積雪はまだ大したことはなく、所々夏道が見えている。普段着のおっちゃんが見事なキックステップでアイゼンなしの革靴で登っていた。しかし、あのキックステップを見る限りでは、かなりの手練れであろう。途中で、「私はこの辺で止めておきます」とさっさと下ってしまったところも、いかにもベテランらしい。

005-7826-30雪紋夕方.jpg

 我々は順調に高度を上げ、上げるごとに迫る岩峰や、南アルプスの峰々を眺めては感嘆しきりであった。随分と余裕がある。八丁坂の終点である乗越浄土も見えているのでますます安心だ。「ここらで夏道から逸れようか」私は提案した。無論、反対する者などない。「雪山は、他人のトレースをたどるのではなく、自分の足跡をつけるが、本道だ」などというと、「二番なんてカスですよ」とか「他人のトレースをたどるのはピクニックと同じですよ」といった羽生台詞ネタが出てくる。私は急勾配をやや緊張しながら登っていった。後を振り向いて、んー、墜ちたらやばいな、と思った。しかし、サクライはこんな状況でもビデオを回していた。しばらくして、ユンオが、「羽生さん、トップをやらせてもらえませんか」と言ってきた。「うむ、岸、やるか」と返す。ユンオは力強いキックステップでどんどん登っていく。二番手以降はすごく楽だ。もうすぐ乗越、といった辺りでピッケルを使った滑落停止の練習をすることにした。ユンオはピッケルを使うのが今回が初めてである。少し休憩も入れて11時40分、乗越浄土に着いた。

景色とピッケル.jpg

 ここまで登ると、新たに北方面が開け、北東に八ヶ岳が見わたせる。小屋がすぐ近くにあり、その向こうに中岳が見える。目指す駒ヶ岳はその奥である。稜線に出ると風がきつかった。が、景観の素晴らしさと難関を越えた安堵感から20分程ここで写真を撮ったりしていた。宝剣山荘に入ったのは12時、入っていきなり親父に「アイゼン脱がなあかんやろ」と叱られた。ストーブに当たって落ち着き、受付を済ませ、荷物をまとめ、13時05分、小屋を発。緩やかな稜線散歩で気分が良い。少し登って13時30分中岳。ここからの御嶽山の眺めは素晴らしい。風格を伴ってどっしりと鎮座していた。

004-7829-19御岳.jpg
御嶽山

 そして目指す駒ヶ岳も見えた。ここから半時間も歩けば着く距離だ。なんとも名残惜しい。もっとこの気持ちのいい稜線散歩を楽しみたいが、14時、木曽駒ヶ岳の山頂に着いてしまった。2956m。中央アルプスの最高峰なので遮るものはない。ここで新たに北アルプスが目に入った。遙か彼方ながら穂高のごつごつした感じがよく見える。槍ヶ岳は頭だけ見えていた。早速頂上で記念撮影をし、野宿シャツで撮影してもらおうと服を脱いだ。さ、寒い。猛烈な寒さだ。頂上は稜線よりさらに風が強い。撮ってもらってすぐに服を着ていると、手がすごく痛くなってきた。急いで祠の影で風をしのぎ、コーヒーを淹れて温まったが、手の痛みは当分続いた。3000m付近で素肌を晒すということがどういうことか身をもって感じた。

哲と櫻井野宿シャツ.jpg

櫻井頂上で裸.jpg
アン・ツェリン

ユンス山頂にて裸.jpg
ダワ・ザンブー

 ラーメンを食べたり写真撮影をしたりと楽しい山頂での2時間弱はあっという間に過ぎた。陽もだいぶ傾いた15時45分、山頂を発。斜光の西日が作り出す陰影により、周りの山々がよりかっこよく目に映る。御嶽山はほぼ逆光だが、シルエットだけでも存在感は抜群である。遠く南アルプスの連峰は陽が当たって輝いていた。秀逸であったのは宝剣岳から縦走路をたどっての空木岳、南駒ヶ岳の端正な三角の姿。その隣の三ノ沢岳も一際大きく見える。風は相変わらず強いが、我々は幸福の絶頂の中、稜線を歩いていた。

夕方櫻井.jpg

 私は正直、安堵していた。今回のアルプス紀行はサクライのためと決めていたものであった。いつも、時には体を張って私を援けてくれた私のシェルパに素晴らしいアルプスの景観をみせてやりたかった。立山はダメであったが、ここ木曽駒ヶ岳でそれが達せられ、ほっとしていた。小屋に着いたのは日没間近の16時30分、撮影のため、再び小屋を出て沈む夕陽を眺めた。といってものんびりしたものではなく、烈風吹き荒れる中で必死に立っていたのであった。

006-7826-34雪紋斜面夕方.jpg

 再び小屋へ戻り、ストーブに当たりながら夕食。この日の小屋は我々だけの貸し切りで邪魔もなく心おきなく楽しめた。食事は一日分余っているので豪勢である。カレー、中華丼、カルビ丼、缶詰にコーンスープ。菓子類も余る程ある。食後もコーヒーをすすりながらゆったりと団らんを楽しんだ。19時半、部屋に戻り就寝。私は夜中の3時に小用で目が覚め、トイレにいった。外をのぞいてみると期待していた星は見えず、風と濃い霧があるのみであった。5時に再び起きて外を見ても同じ。宝剣岳に挑戦する考えはすでになく、無事下山できるか心配になってきた。もう、眠るつもりもなく、コーヒーを沸かして飲みながら記録をまとめたりして時間をつぶした。6時を過ぎて二人を起こし、朝食。小屋の主人はまだ寝ている模様。サクライがストーブをつけてくれてやっと温まった。朝食にはスープカレーに食パン。これがうまい。

夕方哲シルエットピッケル.jpg

 準備を整え、8時15分、小屋の親父に挨拶をして宝剣山荘を辞した。霧が深く、昨日とうって変わって景色は見えない。風も強かったが、それも乗越浄土までで、そこから下りにかかると風はなくなった。八丁坂の下りは急で危険ではあるが、相変わらず夏道も見えていてそれほど困難ではない。8時55分に八丁坂を下りきり、そこからは平坦な道が続く。霧の中、雪が静かに降り、我々の息づかいと足音だけが聞こえる…例年より早い雪山気分を味わう。冷たい空気も清々しい。しかし、その清廉な雰囲気をブチ壊すロープウェイ駅からのサイレンの音が聞こえた。我々はため息をつき、駅へと向かった。駅では平日で、こんな悪天候にもかかわらず観光客が群れていた。我々の登山は終わった。時間があったので、しらび平で日暮の滝を見にいき、駒ヶ根の温泉ではいつもより長くつかっていた。大阪に戻ってユンオ推薦の韓国料理店のハナで夕食後、解散した。

007-7826-36宝剣岳夕方.jpg
宝剣岳、空木岳(うつぎだけ)、南駒ヶ岳





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最終更新日  2009年02月16日 12時54分53秒
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