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2009年02月18日
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木曽駒ヶ岳・夏(1)
 八月初旬、嫁さんの田舎に行った。田舎は長野県伊那谷、中央アルプスと南アルプスに挟まれた、山好きには結構な土地である。今年はなんとなく山登りは止めておくかな、といったテンションであったが、いざ、出発の数日前になると、ムラムラと登りたくなってきた。折角間近まで行くのに、やはりもったいない…。行くと決めたら候補はいくつかあったが、今回は車が使えないので電車、バス、タクシーを使わざるを得ない。やはりタクシーが便利だが、調べてみるとかなりの値段である。ええい、面倒くさい、そもそもこんな間際になってあれこれ考えるのはイカン、いっそ、全部歩いて行くか。で、結局、木曽駒ヶ岳に登ることにした。過去3度登ったが、いずれもバスとロープウェイを使用、今回は中央アルプスの主峰に敬意を表して自分の足で登ることにしよう。
 お世話になっている「渡場のおいちゃん」こと飯島さん宅を3時45分に出発する。辺りはまだ真っ暗である。天竜川に架かる春近大橋を渡り、飯田線を横切る。そこは前日、お墓参りに来た場所だった。更に進むと広域農道へ出る。ここで何台もの駒ヶ根行きの観光バスとすれ違う。皆、朝一番のバスとロープウェイで千畳敷に行くのだろう。信号待ちをしているバスの乗客らが、一応登山者の格好をしている私をジロジロ見ている。私は一瞥した後、ふん、と鼻を鳴らして先に進んだ。出発して一時間、伊那スキーリゾートに到着。見晴らしが良く、伊那の町が見下ろせた。ちょうど日の出時刻で随分明るくなっていたが、東方向、伊那谷と南アルプス方面はだいぶ霞んでいる。しばらく進むと権現山・駒ヶ岳への標識があり、そこからようやく舗装されていない、土の道である。権現山へは毎年地元の学生が集団登山をする、と聞いているが、道はそれ程歩かれている感じではない。しかし、私はそれが気に入った。ホトトギスの花がいくつも咲いているのを見つけて、早くも三脚を構えてのマクロ撮影を行う。

01-4385-20ホトトギスシャープ強めに.jpg
ホトトギス

 朝陽がようやく現れ、鳥やセミが一段と大声で鳴き出し、リスが走り、辺りは一気に夏山の雰囲気に包まれた。権現山直下は笹の藪がものすごく、私は頭がかろうじて出ている状態で進んだ。藪の切れている所ではホトトギスやホタルブクロ、白い花、黄色い花、数々のキノコが目に付いた。まだまだ先は長い、というより登山は始まったばかりなので、撮影は控えたが、うっかりするとその辺りだけで2~3時間過ごしてしまいそうである。

02-4385-27ソバナ?アップ.jpg
ソバナ、かな?

 写欲を押さえ、無事に権現山山頂に到着。景色はますます霞んで、ほとんど見えない。しかし、日差しは強く、汗と朝露で濡れた服を乾かし、パンツ一丁でコーヒーを沸かす。ちなみにこの権現山の標高は1749.3m、中国地方の最高峰の大山よりも高く、近畿地方でもこれ以上高い山は数少ない。もし権現山が近畿にあれば、よく晴れた日曜日、見晴らしも良く、花も豊富な山のことだから随分混雑するであろう。下手をすれば百名山に選ばれていたかもしれない。そう考えると、こうしてパンイチでコーヒーを飲んでくつろいでいられるのは何だか贅沢なことに思えて、気分が良くなってきた。

070805CA340163木曽駒権現山山頂.jpg
権現山にてくつろぐ


 この先、分かりやすい尾根沿いに進み、五合目、見晴台に到着。さらに霞んで真っ白、景色は全く見えない。すぐ先の樹林に覆われたコブ、恐らく辻山、を越えていよいよ一番の難所と思われる権現づるねへと入っていった。地図を見ても尾根が広がっていて迷いやすそうである。しかし、この権現づるねの森は素晴らしかった。ちょうど薄く霧がかったりして幻想的な雰囲気を盛り上げる。嬉しくなって写真を何枚も撮った。しんどい急坂を登ってしばらく行くと八丁立、更に進んで長尾根ノ頭に到着、12時少し前で伊那スキーリゾートから7時間20分程。地図では8時間20分とあるので、写真をよく撮っていたにしては悪くないペースである。あまり時間がかかるようならこの先の西駒山荘で泊まろうと考えていたが、今日中に駒ヶ岳に登れそうである。西駒山荘で昼食と決めて、また登る。森林限界を越え、景色が広がるものの、相変わらず霞んでいてあまり遠くは見わたせない。
 13時過ぎ、いきなり、西駒山荘に着いた。少し前の将棊ノ頭から遠くに山荘が見えており、ああ、もうすぐだな、と思いながら歩いていた。ハイマツに埋もれた道を進み、大きな岩を登ったり巻いたりしているうちに、ひょっこり小屋の前に着いてしまった、という感じだ。小屋の前のベンチに老夫婦が腰掛けており、急に現れた私にかなり驚いたようで、しげしげとこちらを見ている。私もちょっとビックリして、少しの間老夫婦を見ていた。老夫婦はこざっぱりした服装で、いかにも「爽やか・アルプス稜線漫遊散歩」といった風である。ひきかえ、私の出で立ちは幾多のぬかるみで足下はドロドロ、湿気の多い森を抜けてきたので全身べたべたで、何の植物かの黄色い花粉にまみれた姿であった。「こんちは」ととりあえず声を掛けたが、応えはなく、余程驚いたか、ジイさんの方はマグカップを持ったまま固まっている。これまで誰にも会わなかったが、ここからはロープウェイを使った「観光客」のテリトリーに入る。それを思うとなんだか残念でもある。ただし、この西駒山荘は千畳敷からはだいぶ離れており、見かけた人も数人だった。そんなことよりメシ、である。ここの「西駒カレー」は随分ウマい、とネットで見かけて是非昼飯に、と考えていたのである。小屋に入り、兄さんに声を掛ける。「こんにちは、あの、昼食を頼みたいのですが…」。すると、愛想はなさそうだが人は良さそうという典型的な山小屋のあんちゃんは、やはり無愛想に「えー、ご飯はですねぇ、予約制になってまして、えー、すぐできるのはカップラーメンですが、しょうゆ味とカレー味があります」と答えた。私は内心、かなりのショックを覚えた。実は権現づるね辺りから腹が減っていた(なにせ朝食を食ったのは早朝3時である)のだが、カレーを励みに急坂もハイマツの海も越えてきたのである。しかも用意した今日の夕食はカップヌードルである。あんまりや…「じゃ、カレー味で」と答えるのが精一杯であった。メシを済ませ、スナック菓子やチョコレートを食べ、コーヒーと煙草を飲む。はあ、落ち着く。実際、ここまで来てしまえば、人が多くなるのは残念だが、行程は楽だし、標識もかなりしっかりしたものになって迷う心配もほとんどないであろう。気持ちのどこかで張りつめていた糸が緩んでいく感じがした。小屋の近くで栽培されているコマクサを撮ったりして14時過ぎ、出発。

03-4621-10コマクサピンク.jpg
コマクサ


 はっきりした道は分からなかったが、すぐそばにある将棊頭山に登った。霞はガスに変わり、真っ白で何も見えない。記念撮影をして尾根沿いに進む。半時間後、遭難記念碑に到着。何年か前、最初に駒ヶ岳に登った折、ちょうど新田次郎の「聖職の碑」を読んでいて、是非訪ねたかったのだが、間違えて宝剣岳の南にある遭難の碑に行ってしまったことがあった。今回ここを訪れるのは念願でもある。小説を思い出し、辛く寒い思いをしながら死んでしまった人達のことを考えて、しばし黙祷を捧げる。そういえば翌日は8月6日、広島に原爆が落ちた日であることを思い出し、明日も黙祷しようと思った。

070805CA340164木曽駒遭難記念碑.jpg
遭難記念碑にて

 稜線は景色はイマイチながら高山植物は見頃である。チングルマやイワツメクサ、ミヤマキンバイといった常連を見かけて嬉しくなる。しかし、気分とは裏腹に足は重く、しっかりこれまでの疲れが出ていた。撮影回数が増したこと、緊張が緩んだことも加わってペースは非常に遅くなり、駒ヶ岳の山頂に着いたのは17時9分になっていた。相変わらず真っ白で展望はない。昨年11月に雪の中ユンオとサクライと来た時を思い出した。まだ一年も経っていないのに、もう随分懐かしい。しかしあまり懐かしんでもいられない。頂上はどんどん人が登ってきて大変な賑わいになっていた。

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キリンソウ、かな?





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最終更新日  2009年02月19日 23時07分38秒
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