125452 ランダム
 ホーム | 日記 | プロフィール 【フォローする】 【ログイン】

Welcome to My Homepage

Welcome to My Homepage

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
2009年03月08日
XML
081122~24 仙丈ヶ岳(2)

 15時20分、角兵衛沢出合着。ここは鋸岳の登山口で、3つ程テントが張ってあり、肉の焼けるいい匂いがしている。オレも空腹を憶えて菓子を食べる。この時、問題発生。テープを巻き込んでビデオが使用不能に。登山開始わずか2時間で役立たずの重たい荷物に変わってしまった…しかし、あまりガッカリもしていられない。山の渓なので既に薄暗い。森の入り口赤河原分岐に着いたのは16時45分、もうだいぶ暗い。また壇渓を跳ぶゴッコをしてようやく森の中へ。もう真っ暗でヘッドライトを点ける。ここから八丁坂と呼ばれる急登が始まる。つづら折りの道がヘッドライトの明かりだけでは分かりにくい。時折響くシカの甲高い声に驚く。夜の森は不気味だ。疲労も相当溜まっており、心細いことこの上ない。「だからやめとけ言うたやろ」ああ、懐かしい台詞や…「このプランですと、かなりの無茶になりますが、そのスリルが堪らない、というお客さんもおられます」…誰や、お前?景色が見えないからか、神経が研ぎ澄まされているからか、やけに雑念が混じる。「まだやで。そんな考えが浮かぶようならまだまだ歩ける」そうや。オレは知ってる。雑念がほとんどなくなって真っ白になるんや。ほんだら歩くだけのマシーンになるんや。「おい、初日から真っ白になってどないすんねや?」いや、無茶をするなら初日やで。2日目、3日目になる程、体は動かんようなる。後立山縦走でも槍穂縦走でもそうやった。「そうやった」。…19時35分、大平山荘到着。山荘は勿論閉鎖中。山荘前の林道でブッ倒れた。大きく胸が上下し、その度に白い息が立ち上って闇に消えていく。ここから北沢峠までは近い。大きな安堵感があった。やはり真っ暗な森での独り歩きは相当なプレッシャーである。アスファルトに積もった雪を沸かしてコーヒーを淹れ、煙草を飲む。ライトを消して大の字で寝ころぶと、満天の星空が広がっていた。ああ…山に来たんだな。なんだか慌ただしく歩き始めて余裕がなかったせいか、これまでそんな当たり前の実感がなかった。オレはやって来たのだ。

 北沢峠に着いたのが20時20分。テントを張り、昼食兼夕食のラーメンを作って食べた後、地図を出して翌日の行動を確認する。今日はよく頑張った。上出来だ。しかしまだ登山口に着いたに過ぎない。本番はこれからである。ここ、北沢峠より大滝の頭・五合目まで二時間。前衛峰の小仙丈ヶ岳まで一時間。山頂の仙丈ヶ岳には更に一時間。夜明けの6時に小仙丈ヶ岳に着きたい。つまり出発は3時。起きるのは2時か…これまでほとんど雪は積もっていなかった。明日はそうもいかない。初めてのルート。雪山。夜間。単独。重い荷物。ほんまにアホやな…写真メインのそんなにしんどくない登山はどこにいったんや…この夜は寒いテントの中にもかかわらず、珍しく早くに眠れた。

 23日、1時50分起床。外を見上げると星が見える。よし。晴れてる。準備を済ませて3時出発。温度計を見ると-8度だった。食料とフィルムの半分、役立たずのビデオカメラをビニールでくるみ、デポしておく。荷物はかなり軽減されたが、まだかなり重い。アイゼンを装着し、ヘッドライトを点けて登り始める。昨晩確認しておいたのだが、トレースはない。三連休で人気の山だからあるいは誰か、と期待していたのだが。登山道はつづら折りになっており、分かりにくい。雪がなければ、あるいは明るければ何ということはないのだろうが。二合目に着いたのが4時、ここまでは順調だった。しかし、寝不足、疲労は深刻で、早くも足が言うことをきかなくなってきた。まずい…小仙丈ヶ岳までは無理そうだ…しかし、なんとか見晴らしの良い森林限界まで…5時20分、四合目に着いた。あと一時間ほどで日の出である。積雪が徐々に増し、歩きにくい。それでも息を切らせて登る…空が明るくなってきた。そして…6時、見事な朝焼けが始まってしまった。間にあわんかった…それを木々を通して見たオレは気力を失い、ヘタりこんでしまった。あ~あ、間に合わんかったあ…昨日今日と無理を重ねたのは当にこの朝の景色を写真に撮りたかった為だったのに。哀号。このパカタレめがっ!そこからはガクンとペースが落ち、6時10分五合目の大滝の頭に到着、そこから1時間ほどでようやく森林限界に達した。

02-2702-31北岳とタテ虹.jpg
北岳の上に奇妙な虹が出ていた。

 景色が広がったところで勿論、大休止。タバコを吸い、辺りを見渡す。一番目に付くのがお隣の甲斐駒ヶ岳。尖っとるなあ。その左にギザギザの鋸岳。右にはアサヨ峰。更に右、太陽のある東側には北岳を主峰とする白嶺三山。富士山も見える。その北岳の上に奇妙な虹が出ていた。以前テレビか何かで見た「三つの太陽」がこんなだったか?しかしあれは北極だか南極だかの話だったような?気分はよくなったが、体は全くダメのままだった。今日はまあ、昼頃に頂上直下の冬季小屋に入ればいいので余裕である。すると、下方から二人組の登山者が登ってきた。「速いですねえ」と声をかける。「いや、あなたのラッセルのおかげですよ。それに我々は往復なので荷物が軽いんです」と言うと先に登っていった。彼らが先行してくれたことは全くラッキーだった。このあと、積雪はますます増え、オレは体力が尽きてフラフラになった。フラフラにもかかわらず、休憩の度にヤケ気味に煙草を吸うものだからますます体は動かなくなった。小仙丈ヶ岳に着いたのが9時半、仙丈小屋にたどり着いたのは12時過ぎだった。いくら雪山だとはいえ、地図上2時間足らずの距離を5時間もかかっている。先行の二人がいなければ夕方になっていたかも知れない。

03-2698-29カール.jpg
小仙丈ヶ岳よりカール





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2009年03月08日 09時48分26秒
[日本アルプス登山記] カテゴリの最新記事


PR

カテゴリ

バックナンバー

2024年05月
2024年04月
2024年03月
2024年02月
2024年01月
2023年12月
2023年11月
2023年10月
2023年09月
2023年08月

カレンダー


© Rakuten Group, Inc.