定期同額給与
昨年度役員給与の法人税に関する規定が大幅に改正されました。制度改正の適用は、平成18年4月1日以降開始事業年度ですから、1年決算法人を前提として考えた場合、平成19年3月決算(平成19年5月申告)から、当該新制度が適用されることとなります。従来の役員給与に関する規定は、役員賞与(使用人兼務役員の使用人分賞与を除く。)を除き、原則、損金の額に算入されることとされていました。(仮装経理をしていた部分や適正額を超過する過大支給部分は従来においても否認されます。)それが昨年度の税制改正において、役員給与(退職給与や使用人兼務役員の使用人分給与などを除きます。)は原則損金の額(税務上の経費の額)に算入されないこととされました。但し(1)定期同額給与(2)事前確定届出給与(3)利益連動給与のみ、例外的に損金の額に算入するという規定ぶりに変更されております。上記のような改正が行われた背景には、企業会計(企業会計基準第四号「役員賞与に関する会計基準」)において、役員賞与が職務執行の対価として費用処理することとなったことや、会社法における最低資本金制度の撤廃により、会社の設立が容易になったということなどが挙げられます。大きな会社を顧問先にしている税理士事務所は別として、私のように、小規模な事業者を関与先としている税理士にとってみると、実務的な最大の関心事は、上記例外的に損金の額に算入される役員給与のうち「定期同額給与」とはどのようなものか、その内容を明らかにすることだと思います。定期同額給与の実務上の取り扱いを正しくおさえておかなければ、役員に支給する給与の全てが否認される恐れがあります。但し、定期同額給与の概念を正しくおさえるといっても、法人税法34条1項の規定や法人税法施行令69条1項の規定を、税務当局がどのように運用してくるのか、現時点においては判然としない部分が多くありますので、実務的には固めに規定を解釈して、会社の決算を組む必要があるように思われます。例えば、特定の役員を被保険者及び受取人とする年払いの生損保の保険料を会社で支払った場合に、当該特定役員に支給した役員給与の額が定期同額給与に該当しないものとして、その全額が損金不算入になるのか、会社交際費のうちに役員給与と認定すべきものがあった場合に、その役員給与が定期同額給与に該当しないものとして全額損金不算入になるのかなど、取り扱いが判然としない部分が多々あります。特殊支配同族会社の規定についても規定の解釈上判然としない部分がいくつかありますし、正直、こりゃ困ったものだという気がします。法律の適用解釈が税務当局によってどのように行われるか、慎重に見極めながら、当面は安全運転を心がけるしかないのではないでしょうか?ただ、当該制度改正が行われた趣旨は、役員給与の給与所得控除額を利用した過度の節税を規制するというところにあるのでしょうから、たまたま従来で言うところの認定賞与が出たとしても、役員給与の全額が損金不算入になるということは無いのでないかと推測しております。個人的には、今回のような形で増税するよりは、所得税の給与所得控除の圧縮という形で、真正面から問題に取り組んだ方が制度としては整合性がとれるような気がしますが、やはり政治的な問題等を考慮して、今回のような形に落ち着いたのではないでしょうか。