カテゴリ:くれーじーくえいる的ハイテク色々
<←2009年に高松に来港した時の『しんかい6500』。外装と耐圧殻・各種機器類以外は浮力材を詰め込むスペースになっているため、割とスカスカな中身だなぁという印象でした(笑)>
(独)海洋研究開発機構(JAMSTEC)が運用している大深度有人潜水調査船『しんかい6500』は、世界でもトップクラスの潜水深度を有する潜水艇であり、日本近海をはじめとして太平洋・大西洋・インド洋等で海底地形や深海生物の調査に従事し成果を挙げています。2012年には推進装置の改修が行われ運動性能の向上が図られましたが、1989年の就航から24年が経過しており、後継船の建造が検討されていました。 しんかい6500の後継船については、内閣府の総合科学技術会議が定義した"国家基幹技術"の一つである『海洋地球観測探査システム』の中に盛り込まれ、今後優先的に開発されるべき科学技術と位置付けられていますが、その具体的な後継船となる『しんかい12000』の概要が明らかになりました。 *深海底に滞在可能、2本の腕を持つ有人潜水船 <読売新聞社> (注:Web上のニュース記事のため時間経過により削除される可能性があります) 海洋研究開発機構の基本デザイン案では、しんかい12000は現6500(全長9.7m)より一回りほど大きい全長12〜15mで、名称の通り潜水深度12,000mまで潜航できる耐圧性能を持ち、北西太平洋のマリアナ海溝にある世界最深部(チャレンジャー海淵 約10,911m)まで余裕を持って潜水可能となります。また、球形耐圧殻を複数繋いだ広い船室を備えて4人搭乗で2〜3日間の滞在調査が可能な居住性も備える予定です。2023年頃の就航を目指しており、東日本大震災の震源付近の深度8,000m級の海底や深海生物の調査等への活用が期待されています。 現在でも世界最高水準の潜水能力を持つしんかい6500の後継船については、現6500を発展させた深度10,000m以上の潜水が可能なタイプと、潜水深度を3,000m程度に抑える代わりにアクリル耐圧殻を採用して目視での観察能力を重視したタイプの2案が検討されていたようですが、どうやら前者を基本に現6500では実質3時間程度とされる深海での活動時間や居住性を向上させる方向になるようです。本来なら両方の調査船を保有するのがベストでしょうが、予算の制約もあり難しいところでしょう。 耐圧殻を複数繋いだ船室構造は何だか海上自衛隊の潜水艦救難艦に搭載されるDSRV(深海救難艇)を連想させますが、この辺は潜水深度や用途こそ違うものの運用環境は同じなので技術的に応用が利く分野でしょう。また、現6500の建造から20年以上が経過し、潜水調査船の建造技術を次世代の技術者に継承する意味でも後継船の建造には大きな意義があるといえます。 近年はROV(遠隔操作式無人探査機)やAUV(自律型無人潜水機)の性能向上が著しいですが、過去には10,000m級の潜航が可能だったROV『かいこう』のビークルをケーブル破断トラブルで喪失した苦い経験もあり、臨機応変な対応が必要なミッションは今後もしんかいシリーズのような有人調査船が担うことになるようです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2013.12.31 10:31:06
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