テーマ:ゴルゴ13(71)
カテゴリ:東郷農機広報部/ゴルゴ13関連
今回の『ゴルゴ13』は8日の大阪行きのため土日ではチェックできず、ぐずぐずしてるうちにテレビせとうちでの放映日となったのでそちらを先に視聴しました。
〔Target.43:空白の依頼〕 原作:『バスク・空白の依頼』リイド社SPコミックス第105巻収録(1993年初出) CAST クリスタ:安藤麻吹 ヴァーノン神父:宮本充 ビクトール:梅津秀行 ミゲル:田中一成 ニコ:並木伸一 マギーレ神父:金子達 ヨーロッパの某国、とある街のホテルに到着したゴルゴ13。だが、彼がホテルの入口に入った直後、彼の命を狙う何者かによってロビーに仕掛けられた爆弾が爆発した! その夜、仕事帰りの女性クリスタは一台の車が猛スピードで街路樹に激突したのを目の当たりにする。その車に乗っていたのは、ホテルの爆破から辛うじて生き延びた重傷のゴルゴ13だった。彼は構うなと呟くが、クリスタは構わず彼を自宅へと連れ帰って手当てをする。 意識を取り戻したゴルゴ13は急いで彼女の部屋を後にしようとするが、負傷が原因で自身の記憶を失ってしまい、自分の名前すら思い出せなくなっていた・・・ クリスタは彼が日本人らしいと見当を付けるが、所持品には身分を示す物はない。何も思い出せないゴルゴ13だったが、何処かへ行って何かをしなければならないということだけが頭の中にある。ふと手元の車のキーを見た彼は、それに付いていた三角形のマークから南ヨーロッパでNo.1と言われるプロの自動車泥棒のアンドレイのことを少しだけ思い出した。自分の中の急げという声に従い、ゴルゴ13はクリスタと共にアンドレイの家を訪ね、そこで自分が東郷と呼ばれていたことと、彼から別の車を入手してある場所に隠したことを知る。ひとまずアパートに戻ったゴルゴ13とクリスタは、部屋で待ち構えていた殺し屋二人に襲われるが撃退する。 翌日、ゴルゴ13は重傷の身体を押してクリスタの運転する車で山脈の麓のとある村へと向かう。ゴルゴ13は彼女を巻き込むことを避けようとするが、クリスタはどうせ自分も狙われるからと彼に付き従う。やがて、二人は藪の中に隠された車を発見するが、その頭上の断崖には洞窟があった。 この村の地域は近年自治権の拡大が進み、明日には政府との和解の象徴として国王の来訪が予定されていた。地元の教会のマギーレ神父は国王の世話役を村人の信望も厚いヴァーノン神父に任せるが、ヴァーノン神父は国王の命を狙うテロ組織の動向を懸念する。この地域で活動するテロ組織のリーダーは未だ当局もその正体を掴めていないという。その神父たちの会話を通りすがりに聞いたゴルゴ13は、神父の提げる十字架を見て何かを感じるが・・・ その後、二人はヴァーノン神父の教会に宿を借りる。二人が案内された部屋には、以前泊まった老人が教会に処分を依頼して置いていった狩猟用のライフルが残されていたが、ゴルゴ13は無意識にライフルを手に取ってトリガーを調整する。 だがその夜、ゴルゴ13の命を狙うテロ組織の一団がまたも部屋を襲撃してきた。ゴルゴ13とクリスタは敵たちを撃退すると車で教会を脱出し、断崖の洞窟へと逃げる。一方、テロリストたちは警察に情報をリークしてゴルゴ13を追わせようとする。 洞窟に逃げ込んだクリスタは、先程襲ってきた敵の一人を咄嗟に射殺したことに震える自分に思わず苦笑する。かつて、彼女は18歳の頃にレイプされた嫌な思い出があった。彼女はその時一緒にいたボーイフレンドが自分を放置して逃げたことが許せず、それ以来ただひたすら強くなることだけを考えて生きてきたのだった。ゴルゴ13の強さに心惹かれた彼女は縋るように彼に身を委ねる―――――― 翌日。風の流れを辿って洞窟の奧へと向かったゴルゴ13は、国王の演説が行われる村の広場を見下ろす断崖に出る。彼はそこが自分の確保した狙撃地点であることを思い出すが、自分が狙うべき標的は誰か? ゴルゴ13は部屋から持ち出していたライフルをわざと空に向けて発砲し、警備の武装警官たちからの銃撃に身を晒す。銃弾飛び交う中、ゴルゴ13が思い出した記憶、それはとある教会関係者から依頼された国王に対するテロを画策するテロ組織のリーダーの抹殺。そして、そのリーダーの正体は・・・・・・岩陰から広場にライフルを向け、トリガーを引くゴルゴ13。その銃弾が捉えたのはヴァーノン神父の眉間だった。銃弾に斃れたヴァーノン神父の手から爆弾のスイッチが転がり落ちる。ヴァーノン神父こそがテロ組織のリーダーだったのだ。 すべてを思い出したゴルゴ13だったが、その一部始終をクリスタが目撃していた。彼がプロの殺し屋だと知った彼女は自ら殺される覚悟を決めるが、そこへテロ組織のメンバーが襲来、ゴルゴ13は敵を倒すが、クリスタはテロリストの銃弾に斃れる。クリスタは女に戻れた喜びを彼に感謝しつつ息を引き取る・・・ その後、武装警官たちが洞窟に駆け付けたが、そこには胸で手を組まされて安置されたクリスタの亡骸だけが残されていた。そして、ゴルゴ13は藪に隠していた車で村を後にするのだった―――――― ○○○○○○ ゴルゴ13が敵の攻撃により記憶喪失に陥るという本作。思えば、TVアニメ版でゴルゴ13が重傷レベルのダメージを負うのって今回が初めてですね。 自分の名前すら思い出せなくなってしまったゴルゴ13ですが、偶然彼を助けた女性の助けを借りて、僅かな記憶の断片と「何処かに行って何かをしなければならない」という自らの本能の導きに従って自分のしようとしていたことを辿っていきます。手にした銃の僅かな不具合を無意識のうちに察して調整したり、敵の襲撃から逃れる際にも銃と弾を自然に持ち出したりと、記憶を失っていても本能レベルまで身体に染み込んでいる彼の行動理念が面白い一方、自分を助けて犠牲となった女性への恩も忘れない彼の情も印象的。ゴルゴ13が自分に関わった死者の手を胸の上で組ませて安置してやるのは、原作の『ラ・カルナバル』に登場するカルロス・ジモノーサ以来だったりします。ただ、アニメ版では彼が車の調達を依頼した車泥棒のアンドレイに記憶をなくした状態で再訪して相手に驚かれたり、洞窟に残された旧石器時代の壁画で自分の記憶のヒントを掴むといった原作の描写がカットされているため、ゴルゴ13が記憶を取り戻すまでの流れが原作に比べてちょっと説明不足&尺足らずになっている感はあります。 今回、ゴルゴ13を偶然助けたことから事件に巻き込まれることになった女性は、原作では名前なしですがアニメ版ではクリスタという名前になっています。また、アニメ版では二度目の敵の襲撃の際に相手のサブマシンガンで敵を射殺するという原作にはない展開が加えられています。 一方、本作の裏のテーマは原作タイトルにもある通り、スペインのバスク地方独立問題です。ヨーロッパのピレネー山脈西部、フランスとスペインに跨るバスク地方は南部がスペインのバスク自治州、北部がフランスのピレネー・アトランティック県の一部となっていますが、スペインにおいてこの西仏のバスク人地域の分離独立を掲げて1960年代から武装闘争を行っているのがETA(バスク祖国と自由)です。2006年3月に無期限停戦を発表したもののその9ヶ月後に爆弾テロを起こし、翌年6月には早くも停戦を破棄してテロ活動を継続しています。なお、本作は1993年初出ですが、その2年後の1995年にはマジョルカ島においてETAがスペイン国王フアン・カルロス1世に対する暗殺未遂事件を起こしています。 ただし、アニメ版では以前の『硝子の要塞』『冷血キャサリン』で英IRAの名前が出なかったのと同様に政治的配慮なのかETAおよびバスク問題に関する描写はなく、ヨーロッパのどこの国かすら明確に描かれていません。一応、作中でのヴァーノン神父の台詞の中で自治権云々について語らせており、バスク問題について知っている人が見ればなるほどと思える演出にはなっていますが。しかし、原作でゴルゴ13に射殺される直前にヴァーノン神父がバスク独立の烽火とすべく国王を爆殺しようとする決意の台詞は語句を変えてそのままアニメ版でもやった方がよかったんじゃないかと思う次第。この辺のやりとりがカットされたため、アニメ版ではヴァーノン神父がテロ組織の首魁であることの説明が不足している感があるのがちょっと残念かも・・・ 今回は記憶喪失がテーマだけあって、ゴルゴ13を演じる舘ひろしも記憶をなくしている状態ではちょっとだけ感情的に、しかし記憶を思い出すにつれて徐々に感情を抑えた声になっていくのを上手く演じていたように思います。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[東郷農機広報部/ゴルゴ13関連] カテゴリの最新記事
予想通りではありますが、元のタイトル「バスク・空白の依頼」から地名の部分だけカットされてましたね。まあ、南ヨーロッパで国王がいてテロ組織が活動している国といえばひとつしかないですけど。洞窟でクロマニヨン人の壁画を見るシーンがカットされたのも、地名を推測させるような場面を見せないようにという配慮の結果かもしれません。
(2009.05.20 21:55:41)
そのために原作に比べて色々とわかりにくくなるのは困りものではあります(苦笑)まぁ原作を知っている人やそれなりに知識のある人なら見れば大凡の推測は付くようになってはいますが・・・
(2009.06.08 15:25:33)
|
|