チキンハンバーグの詩 / 第1章 ~17~
その日もいつもの通り、帰宅バスの中では昼食の話題になった。何人かの発表を聞いたあとで「俺んとこはハンバーグ!あのお湯で温めるやつ!」ちょっと大きな声で私は言った。それを聞いた友達の1人は、「あ、知ってる。こないだダイエーで売ってた。でも俺まだ食べたこと無い。」別の友人は、「僕は食べたことある。あれってソースも美味しいねんで!」などと、レトルトハンバーグの話題に花が咲く。それを聞きながら私はちょっと得意顔だった。「今日はみんなが羨ましがるお昼ごはんが自分を待っている!!!」と思うと嬉しかった。またそう思うとお腹がすいてきた。そういえば寒い時期になって、土曜日の帰りのバスの中で空腹を感じることはなかったことにも気付いた。空腹だったはずなのにだ。しばらくすと口の中は、一度だけ食べたことがあるあのレトルトハンバーグの味がよみがえってきた。はふはふ言いながら食べたあの温かさまでよみがえってきた。口の中であのハンバーグとご飯が一緒になるときの触感と味まで感じられた。そしてバスから降りた私は一目散に我が家に向かって走った。帰りたくないときはすぐに到着してしまう我が家のくせに、早く帰りたいときは走れども走れどもなかなか到着しないもどかしさまで感じながら走った。