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カテゴリ:07読書(フィクション)
薔薇豪城さんの記事で漫画版の「蟹工船」が大学生協などでよく売れていることを知った。小説の漫画化は長編にならない場合は成功しないことが多い。(成功したのは「宮本武蔵」を漫画化した「バカボンド」あるいは鉄腕アトムの「プルートゥ」)
この漫画の場合はぎりぎりのところだろうか。努力賞はあげることが出来る。 いい所は、原作では分かりにくかった方言を当時の地方性を残す程度に分かりやすい現代語に置き換え、時代性で分かり難いところを、絵の描写ということである程度描くことが出来たところである。結果非常に分かりやすくなった。 一方で、原作の中の息苦しさ、臭い、そして一番肝心な登場人物の感情が描きこみ不足もあり、不十分。もちろん、ページ数の制限もあるが、力量不足と取材不足もあるだろうと思う。 「蟹工船」をこうやって改めて漫画で見ると、つくづく名作だと思う。ひとつの船の中に、無権利状態の労働者の命をモノとしか見ていない資本家、それを助ける政府陸軍、資本家におもねる労働者たち、そしてやがて労働意識に目覚める底辺の労働者、そして結果的に当時の日本そのものを重層的に描くことに成功している。そして非常に視覚的、映画的なのだ。 抵抗の仕方はだんだんと進化する。途中までは個人で、やがては組織的なサボタージュ、そしてリーダーを中心とした船中を巻き込むストライキ、それを政府陸軍の介入により潰されると最終的には労働者一人一人の自覚のもとでのストライキへ。畳み掛けるようにラストに持っていく様は非常に映画的だ。 一度映画化されているが、現代にもう一度映画化する意義は十分にあるだろうと思われる。この原作の中の、ワンカットワンカットを積み重ねる作り方や、群集シーンのモンタージュ理論の応用などはそのまま使えるだろう。惜しむらくはおそらく時代的制約もあったのだろう、最後のストライキの部分があまりにもあっさりとしているので、そこをきちんと描いてもらったなら、映画史に残るような力作になるかもしれない。描けるような監督はいるのだろうか。うーむ、それが問題だ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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マンガがあるなんてビックリしました。実は今、クリックして楽天ブックスで注文しました。これなら子どもでも読めそうですね。届くのが楽しみです。
(2007年03月01日 21時41分40秒)
こういう本が、大学生協などでもよく売れているっていいですね。でも、時間のある大学生には、やっぱりまんがで読んだ後でもいいから、原作も読んで欲しいです。
(2007年03月01日 21時57分29秒)
「蟹工船」の映画化・・実現されればきっと、重厚で心を揺すぶる作品となることでしょうね。
山本薩夫を超えるような監督の出現に期待。 まんが「蟹工船」がよく売れているのですか?とてもいいことですね¥(^o^)¥ ついでに多喜二の生涯を描いたまんがなんかも、是非とも出版してもらいたいものです。(まんが版の「山本宣治」ならば出ているのですよ。KUMAさんならご存じでしょうか?) (2007年03月01日 22時39分20秒)
さくちゃんのママさん
>マンガがあるなんてビックリしました。実は今、クリックして楽天ブックスで注文しました。これなら子どもでも読めそうですね。届くのが楽しみです。 ----- 小林多喜二は中学生の頃、高校生の頃、二回挫折したので、確かにマンガから入るのはいいかもしれませんね。ボクも岩窟王は小学生の頃、マンガから入りました。まあ、あの小説を一冊のマンガにまとめるのはあまりにも無理があったようです。 (2007年03月02日 00時43分51秒)
N.カナエさん
>こういう本が、大学生協などでもよく売れているっていいですね。でも、時間のある大学生には、やっぱりまんがで読んだ後でもいいから、原作も読んで欲しいです。 ----- 本当に売れているかどうかは知らないのです。でも二版になっているから、全然売れていないということはないのでしょう。 何しろ本の副題が「30分で読める大学生のための」となっているのです。大学生の読書時間って30分が限度なの? (2007年03月02日 00時46分47秒)
eudaimoniaさん
>「蟹工船」の映画化・・実現されればきっと、重厚で心を揺すぶる作品となることでしょうね。 >山本薩夫を超えるような監督の出現に期待。 >まんが「蟹工船」がよく売れているのですか?とてもいいことですね¥(^o^)¥ >ついでに多喜二の生涯を描いたまんがなんかも、是非とも出版してもらいたいものです。(まんが版の「山本宣治」ならば出ているのですよ。KUMAさんならご存じでしょうか?) ----- 監督は私もまずは山本薩夫を思い浮かべました。次に作れるとしたら、黒澤明でしょうか。どっちにせよ、現代生存者では思いつきませんでした。 マンガ「山本宣旨」全く知りません。検索したけどヒットしなかった。でもあったら面白いですね。私なんか、中江兆民の生涯を大河ドラマ風に考えたことがあります。まずはフランス留学から始めるのです。パリコミューンの残党と西園寺公望と中江兆民が居酒屋で議論する‥‥‥。誰かマンガか映画かで作ってくれないかなあ。アイディアだけなら売るほどあるんだけど。 (2007年03月02日 00時54分05秒)
北海の荒海よように荒れに荒れながらすこしずつ進歩してきた労働運動ですが、いま急速に後退しているようです。残念!!。
(2007年03月02日 10時30分10秒)
ましまさん
>北海の荒海よように荒れに荒れながらすこしずつ進歩してきた労働運動ですが、いま急速に後退しているようです。残念!!。 ----- 総評解体の80年代から、労働運動の急速な後退は起こっていたように思えます。労使協調の行き着く先が現代なのではないかと。そして95年の経団連の「21世紀ビジョン」で「労働者を三つの階層に分ける。正規労働者と中間的な労働者、そしてアルバイト、パート、派遣による低賃金労働者」と展望したことが、たった10年で隅々まで日本にいきわたりました。つくづく彼らの組織力、戦略つくりは凄い。 生まれよ!21世紀のマルクス! (2007年03月02日 12時40分24秒)
蟹工船、表現よみにかけて、仲間とよみました。
中味があるので、表現よみに耐えるのですね。 何度も何度も読み、聞いて、工夫をしますから、 多喜二の全集の半分は、表現よみにかけて読みました。3年ほどかけたでしょうか。 読みながら、生きる姿勢を正されました。 (2007年03月02日 18時29分07秒)
>監督は私もまずは山本薩夫を思い浮かべました。次に作れるとしたら、黒澤明でしょうか。どっちにせよ、現代生存者では思いつきませんでした。 >マンガ「山本宣旨」全く知りません。検索したけどヒットしなかった。でもあったら面白いですね。私なんか、中江兆民の生涯を大河ドラマ風に考えたことがあります。まずはフランス留学から始めるのです。パリコミューンの残党と西園寺公望と中江兆民が居酒屋で議論する‥‥‥。誰かマンガか映画かで作ってくれないかなあ。アイディアだけなら売るほどあるんだけど。 ----- 劇画「山本宣治」は吉田英一作で1989年に機関紙共同出版から発行されています。 昨年念願かなって、映画「武器なき闘い」をようやく見ることが出来ました。予想どおり、山宣の生きざまがあまりにも感動的に胸にせまる作品でした。さすが、山本薩夫監督だと思いました。こんな映画が普通に見られた時代がうらやましくて仕方ない。 大河ドラマ「中江兆民」ですか。いいですねぇ~ 見てみたいなぁ。 植木枝盛なんかも登場させたいですね。 (2007年03月02日 21時19分26秒)
今日9729さん
童話とかではなく、プロレタリア文学を国語教材として教師集団が読む練習をしている姿を想像して感動します。本来国語とはそのようにいろんな教材に挑戦するべきなのだとも思います。今日9729さんみたな先生の授業だと現国の時間は楽しかっただろうに。 (2007年03月02日 22時54分07秒)
eudaimoniaさん
>劇画「山本宣治」は吉田英一作で1989年に機関紙共同出版から発行されています。 紹介ありがとうございました。わかりました♪ >昨年念願かなって、映画「武器なき闘い」をようやく見ることが出来ました。予想どおり、山宣の生きざまがあまりにも感動的に胸にせまる作品でした。さすが、山本薩夫監督だと思いました。こんな映画が普通に見られた時代がうらやましくて仕方ない。 「戦争と人間」「ああ野麦峠」あたりから山本薩夫に入ったものにとり、初期の作品は大きなレンタルビデオ屋があってもおいていないという状況でよく知ることが出来ません。昔の日本映画の発掘をこまめにやっていくことは必要なのかもしれません。 >大河ドラマ「中江兆民」ですか。いいですねぇ~ >見てみたいなぁ。 >植木枝盛なんかも登場させたいですね。 ----- 中江兆民は案外行動派でドラマになる男なんです。あまり知られていませんが、日本に帰るとすぐに勝海舟をたきつけて、大久保を追い出すクーデターを画策したり、自分の弟子の塾生が西南戦争で熊本にいったので、それを追って兆民も熊本に行きます。そこで何を見たのかは彼は一切書いていません。想像が膨らむところですね。植木枝盛は兆民とは全く180度性格が違う新しいタイプの人間です。そこのあたりの描きわけも面白い。最近やっと歴史から発掘されている新しい女性の登場も描けるはず。絶対面白くなると思うのだけどなあ。 (2007年03月02日 23時03分45秒)
このブログにはじめて入室しました。
映画「蟹工船」は、山村聡主演で、函館で撮影しました。藤生ゴオ原画・白樺文学館企画:アニメ「蟹工船」が出来たらどんなに素晴らしいことでしょうネ(・o・) (2007年03月05日 18時27分17秒)
akioさん
コメントありがとうございました。 昔の「蟹工船」は見た事はないのですが、現代には現代の課題があるはず。でもスポンサーが着くかなあ。 (2007年03月06日 23時30分49秒)
ときおさん
>SABU監督の映画とは違う本格的な海洋スペタクルと >骨太のある人間ドラマを描きたいと思い、いま >シナリオを書いています。 ----- すばらしい! SABU監督の映画は正直がっかりでした。海洋スペクタルがあるということは、ロケで作るということですね。期待できます。 たとえば、ラストはどうなるのでしょうか。私は原作のラストがたった1ページで終わったのは、時代の制約であまり具体的に書けないせいだと思っています。現代ならば、みんなが具体的に立ち上がる力がわいてくるようなラストが描けるはずです。……というようなことも夢想したりします。 ぜひ実現してください。期待しています。 (2010年04月27日 17時29分19秒)
ときおさん
>KUMA0504さん >蟹工船 1/6.短縮版 kanikosen >原作に近い映画です。 ----- 完成したのでしょうか。 ぜひ見てみたいです。 (2010年10月29日 22時29分40秒)
youtubeで観られます.sabuの短縮版 完成はわかりませんがシナリオのほうは20ページ位進んでいます。
(2010年11月02日 04時03分12秒)
youtubeで観られます.sabuの短縮版 完成はわかりませんがシナリオのほうは20ページ位進んでいます。
(2010年11月02日 04時06分31秒)
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