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sinokの【私情まみれの映画考察】

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May 14, 2011
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カテゴリ:映画「あ」行
トップに立つ者は、とりわけ有事にあっては、言葉でもって人を動かせるか否かが重要である。
政治家や企業のトップはもちろんだが、現代の「君臨すれど統治せず」の君主にとってスピーチは最重要業務。
しゃべれない王の存在価値は、いまのご時世かなり低い。
この映画は、困ったことに言葉を発することがどうしてもできないトップの物語。
吃音のためにスピーチができない英国王室の次男坊ジョージが、なるはずでなかった国王になってしまい、遂には開戦のスピーチを行わなければならなくなる・・・。

映画はジョージの吃音矯正に向けての苦闘を中心に、言語療法士ライオネルとの友情、そして妻エリザベスとの愛情のという、三つを柱にそれはもうイギリス映画らしい、抑えていてかつ苦みのきいたユーモアをちりばめで展開する。
アメリカ映画だと大げさになるし、日本映画だとお涙頂戴になるところを、イギリス映画は匙加減がうまい。
わたしはドン底から這い上がってガンバルぞ!映画はアメリカ製でも日本製でも原則好まないが、イギリス製は観る。
『幸せのちから』は苦手なの。
でも『フル・モンティ』とか『ブラス』とか『リトル・ダンサー』とかは好きなの(『リトル~』は最後成功するけどそのシーンはちょっとだけ)。
この『英国王のスピーチ』は、地位は真逆だけど『フル・モンティ』に似ている。
最終的には解決できない悩み(『英国王~』では吃音、『フル~』では失業)だけれど、なんとかやっていこうという希望が見える終わり方。
なぜなら王は最後まで吃音は治らないけれど、自信なさげでコンプレックスの塊のような次男坊から、見事国民をまとめる国王となったのだから。

吃音の克服と同時に、言語療法士ライオネルとはぐくむ友情も、彼の王としての開花させていく。
ライオネルもまた英国の舞台に立ちたくてもたてないオーストラリア人役者というコンプレックスを抱えて生きている。
互いのコンプレックスを時にもてあましてぶつけ合い、共にそれを克服してゆく。
これは大人の友情だ。子供時代の無邪気な信頼関係ではなく、プライドや立場の違いという壁を突き崩して獲得する友情は、とても勇気の必要なこと。
その友情獲得のイニシエーションを通して、ジョージ6世の心はうわべだけではない真実強い心も獲得する。

クライマックスの開戦のスピーチ、うまくスピーチができるかどうか、それがクライマックスだと思っていたら、違った。
はじめは吃音を直すことに気を取られていたジョージ6世が、スピーチが進むにつれて国民に語りかけることに集中していく。
話し方をリードしていたライオネルが途中でそれをやめて一英国民として王のスピーチに聞き入っていたが、見ている私も同じだった。
ああ、いま王が誕生したのだと、そう思い、涙が出た。
この映画、王の誕生こそがクライマックスだった。


三月の震災後、立憲君主国でよかった、と思うことがある。
政治家だけが国の上に立つ国だったなら、絶望したり怒りにさいなまれたりするばかりだったろう。
皇室という存在は、仮設住宅を作ってくれるわけでも職を斡旋してくれるわけでも原発をどうにかしてくれるわけでもないけれど、私たちのことを本当に、全身全霊で案じてくれている方々なんだとそう思えた。
やっぱり皇室は国の象徴で、存在意義は確かにある。
映画の主役である英国でも同じだろう。
あちらは新しいプリンセスの誕生で盛り上がっている。
人を安心させたり喜ばせたり、王家とは偉大な存在である。





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最終更新日  May 14, 2011 10:46:35 PM
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