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つれづれなるままに―日本一学歴の高い掃除夫だった不具のブログ―

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2010.08.29
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SF文庫とあるけれども、それはただ主人公の中国人が火星に不時着し、そこで出会った猫人の国で生活したからで、内容的には一種の反ユートピア的諷刺小説。猫人=中国人、迷葉=阿片、外国人=列強、チビ兵=日本兵の暗喩と考えてまず、間違いはあるまい。『ガリバー旅行記』ほどの舌鋒の鋭さとユーモアはなく(これは作者も認めているところだ)、どちらかといえば「ヤフー国滅亡記」のような悲観的かつ陰鬱な小説ではあるが、それだけ老舎の国を憂い、国を愛する切ない思いがひしひしと伝わってくる長編でもある。

猫人たちの堕落の源は「迷葉」だった。今ではほとんどの国民がこれなしに生きていくことができない。ということで、この国は中毒者たちの国であり、一種の破綻国家である。その破綻国家の様相が、第三者たる中国人の目を通して次々に明らかになっていくのだが…

彼らの徹底した自己中心主義、自民族中心主義、拝金主義に基づく、無教育、官吏や政治家や学者の堕落などをみると、確かに滅亡は必然であったように思える。作者は犬や兎ではなく「猫」にしたのは偶然だと強調するが、「猫」はなるほど犬に比べて統率が取れず、自己中心的で快楽主義的ではないか? だが、忘れてはならないことがある。「迷葉」はもともと外国からもたらされたものであった、ということだ。

なお、作者は文化大革命の最中に死んだ。それは本書が古い中国を諷刺しているように見えながら、その実「革命」をも(予言的に)ターゲットにしていたこと、「猫」と「毛」とが同じ発音であったことと、まるっきり無関係ではないと考える。…


あまり多くを語りすぎて、これ以上興をそぐような真似は控えておこう。ただ、最後に一言だけ言っておきたい。

日本人は果たして猫人たちを笑えるだろうか?
笑う資格があるだろうか?







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Last updated  2010.08.30 17:46:14
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