サウンド・オブ・ミュージックとザルツブルグ(11) メンヒスベルクからの眺望
2003年10月25日、ザルツブルグ市街を1日かけて歩いた私が、まず向かったのが、メンヒスベルクの丘。映画『サウンド・オブ・ミュージック』のオープニング、メインテーマが流れ終わると、ザルツブルグ市街とホーエンザルツブルグ城が映し出され、"Salzburg, Austria, in the last Golden Days of the Thirties"のタイトルが現われる。その景色こそが、ここメンヒスベルクの丘からの景色である。そして、この場所もまた、"ドレミの歌"のシーンで登場する(右)。この日の朝、ミラベル宮殿を後にして歩き出した私は、その30分後には、メンヒスベルクの丘に立っている。ザルツァッハ河畔を歩き続けると、旧市街地の端にさしかかるのだが、その辺りは、ゲトライデガッセという名の旧市街メインストリートが突き当たるブラジウス教会の背後にあたる。そして、メンヒスベルクの岩肌を背に小さなお店が並んでいるのだが、その並びの一つの建物の奥に入ったところに、丘に上がるエレベータがあるのだ。そして、丘の上のエレベータを降りて、屋外に飛び出すと、眼下にザルツブルグ旧市街、そして右手にホーエンザルツブルグ城を臨んだのである(下写真:2枚貼り合わせ)。この当時、丘の上には、小さなギャラリみたいなものがあったようにも、あるいは工事中の建物だけがあったようにも思うが、定かではない。ただ、2006年に再訪した時には、オープンテラスの展望レストランが出来ていたので驚いたものだ。 ともあれ、この日の朝は、人影もまばらで、また丘の上にも眼下にも雪が多く残っていて、朝日に輝いていた。そして、これから丘を縦走して、彼方に見えるホーエンザルツブルク城を目指すのである。山道は、まさに森林の中の小道である。山道には、早めの冬の到来を知らせた降雪が残ってはいたが、まだ晩秋。黄色く色づいた木々と、そして落ち葉、それらと白い雪とのコントラストが美しく、木漏れ日に輝いていた。ホーエンザルツブルク城までは、のんびり歩いて、約1時間の山歩きだった。視界が開けると右に左に、白い山々を臨み、また眼下の景色も真っ白で美しかった。途中には、城塞の遺構の一部も残っていたりしていたが、それは、まるで日本の山城に、本丸、二の丸、三の丸、そして出丸などを見るように、メンヒスベルクの丘全体が、ホーエンザルツブルグ城塞を形造っていることが窺え、面白かった。 (メンヒスベルクの丘からの写真。左上:ホーエンザルツブルグ城を出丸のような遺構が残る場所から臨む。右上:眼下にレオポルツクロン宮殿(こちら)、そして眼前にウンタースベルク山。左下:雪道と紅葉のコントラスト。右下:ウンタースベルク山の右側にあった山の眺望。)ホーエンザルツブルグ城に、丘を歩いてアプローチするというのも、なかなか貴重な体験だったと思う。やがて、眼前にホーエンザルツブルグ城が現われると(下左)、山歩きも終わりを迎える。城塞の真下までやってくると(下中)、やがて旧市街、サンクト・ペータ教会とを繋ぐケーブルカーの軌道(下右)をくぐり、一路、最後の勾配を登っていったのであった。