カテゴリ:邦画
ヱヴァンゲリヲンの衝撃再び シン・ゴジラ SHIN GODZLLA 日本(2016年7月29日公開)147分 ■ 監督 庵野秀明 /樋口真嗣 ■ 出演者 長谷川博己 /竹野内豊 /石原さとみ /高良健吾 /松尾諭 ■ もくじ ■ - コラム -「庵野秀明の孤独な戦い」 1. 大ヒットの裏側で 2. 庵野監督自身が投影された庵野作品 3. 難解な作風にあるもの - STORY - - 解説 1 - 1. はじめに 2. 本作の内容は 3. 特撮映画という原点回帰 4. 会議サスペンスという着目点 5. 社会問題を見据えたテーマ性 - 解説 2 - 【ネタバレ解説編】 『シン・ゴジラ』の謎の数々 1. ラストの意味 2. 宮沢賢治「春と修羅」との関連性 3.「ヤマタノオロチ伝説」との関連性 4. 『安保関連法案』に関わる描写に付いて 5. 日本的な描写に込められた驚きの日本人の性質 ●キャスト・スタッフ ▲目次へ▲ - コラム -庵野秀明の孤 独 な戦い 1. 大ヒットの裏側庵野 秀明 (wikimedia) 東宝は2016年11月16日時点で 『シン・ゴジラ』が『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』を越えて 興行収入が公開から111日間で80億円を突破したと発表し 2016年邦画実写一位、歴代ランキング61位となり 庵野監督作品としては「エヴァンゲリオン」シリーズ以外での 「エヴァンゲリオン」シリーズを超える大ヒット作となりました。 これは庵野監督の代表作に『シン・ゴジラ』が加わったという だけでは無く 庵野監督が 『エヴァンゲリオン』シリーズ以外にも エヴァンゲリオン級のヒット作を生み出す映像作家であると 世の中に認識させた大ヒットであり それはひとえに 庵野監督が抱え続けて来た 大ヒットする事がもはや国民的行事となった 『エヴァンゲリオン』は成功させなければならないという オリンピックアスリートが抱く様な 巨大なプレッシャーの中の「孤独な戦い」から 開放された事を意味する大ヒットでもあったのかもしれません。 ■ 『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』の公開から二年以上経った2015年4月1日 エヴァンゲリオン公式サイトに 『シン・ヱヴァンゲリヲン劇場版』及び ゴジラ新作映画に関する庵野秀明のコメントが掲載されました。 それは『ヱヴァンゲリヲン』新作公開遅延の理由が語られると共に エヴァ公開の前に『ゴジラ』を撮るという 『エヴァンゲリオン』の新作公開が待たれる中の 突然の実写映画制作の表明でした。 思わぬ庵野版ゴジラの実現に ファンならずとも期待が高まるニュースとなりましたが 掲載されたコメントは庵野監督の近況を記したものというよりは エヴァ公開後「鬱」になり最近までリハビリ状態にあったという 庵野監督の身に起こった受難の告白文とも言うべき 衝撃的内容のものでした。 『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』新作の制作近況を待つファンにとっては 二年のインターバルの真相を知る本人コメントとなりましたが ネットの反響は、庵野監督が「鬱」を患っていた事実に 必要以上深く立ち入る様子は見られませんでした。 それは、 「鬱」というデリケートな問題には触れないという 社会通念上の気配りの上からの事であったと 信じる事として・・・ あるいは、 庵野版ゴジラ実現の「驚き」と「期待度」と「不安」が 庵野監督がなぜ「鬱」だったのかという 至極当然の「疑問」を上まった為 というのが 本当の所だったのかもしれません。 ■ 以前、当サイトで『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』の記事を掲載した時に 「旧作からのファンを突き放す様な衝撃的展開で観客の5感を削ぎ 主人公の真理を追体験させる所に真意があったのでは」 と解説し 『旧劇場版エヴァンゲリオン 』 の 物議を醸したラストを解説した記事では 問題の「ラストの首絞め」に付いて ネット上の殆どのレビューが「発作的激昂」と括る解釈に対して 「世間がその様な定説に落ち着く様に 意図的に誘導させる作りになっている可能性があり まるで本当の真意を悟られない様に ミスリードさせる事を目的とした所に 狙いがあった様でもある」 と 解説した事がありました ・・・ラストの「首絞め」の、当サイトの解釈に付いて詳しくは、 コチラ『新世紀エヴァンゲリオンAir/まごころを君に』 の記事をご参照頂くとして・・・ それは『エヴァンゲリオン』という作品が 何を描いているのかという事の前に、 作者が鑑賞者をミスリードさせてまで口が裂けても言えない何かを 盛り込んで作っている作品の様に感じられたのが 理由なのですが 今回のコメントを期に エヴァンゲリオンを含めた庵野作品を 改めて見直した所、 『エヴァンゲリオン』という作品自体が、 主人公「碇シンジ」の境遇に重ね合わせて 庵野監督の追い詰められた様な疎外感や心境を映した 「緊急サイン」の様に見えた所から 作者の庵野監督自身が まるで 旧劇場版では 真意を悟られたく無くて 新劇場版では 真意を知って貰いたくて 作品を作っている様な 庵野作品が庵野監督自身の心境の変化を そのまま作品に投影して作られた 「プライベート・ムービー」の様な印象を受けた事で そもそもなぜ『エヴァンゲリオン』が 人間の醜さ愚かさを描き 人の心の旅と受難が描かれた様な 「アニメ」という一言では語れない程の異質な作品になったのか ラストで少年に首絞めをさせる様な特異で奇異な物語にして 後に改める様な新作を作ったのか 今回の庵野監督の告白と 関係者の証言から これまで制作されて来た作品の中に それらの答えへと導く「サイン」が残されていた事に 今更ながら気付いたのでした ▲目次へ▲ 2. 庵野監督自身が投影された庵野作品今回『シン・ゴジラ』の制作に当たって 「エヴァではない、新たな作品を自分に取り入れないと先に進めない」 という庵野監督のコメントがありましたが 実は庵野監督は旧映画シリーズ終了時も 今回と同じ様に「鬱」を患い 今回と同じ理由で エヴァではない 新たな作品として 実写映画を制作した事がありました 倖田來未がブレイクするきっかけとなった事でも知られる (04)『キューティーハニー』や CUTIE HONEY キューティーハニー CUTIE HONEY 日本(2004年5月29日公開)93分 ■ 監督 庵野秀明 ■ 出演者 佐藤江梨子 /市川実日子 /市川淳 /及川光博 /小日向しえ 村上龍の原作を実写化し プレイク直前の仲間由紀恵が出演した (98)『ラブ&ポップ』 などの他、 映画作家として知られる岩井俊二監督を俳優として迎え 『平成ガメラシリーズ』の藤谷文子演じる「彼女」と 岩井監督演じる「カントク」が 非現実な心象世界を旅する様な日常を描いた (00)『式日』 が その一つでした。 この映画は主演の藤谷文子が執筆した 自身の家族問題をベースにした私小説的作品『逃避夢』を 映像化した作品で 毎朝廃墟ビルの屋上から身を投げる意思を試す「儀式」を行う「彼女」の 世間と隔絶した非現実的世界の中で生きるその変移を描いた 『エヴァンゲリオン』の世界を実写化した様な 庵野監督らしい特異な切り口で演出された どちらかと言えば芸術作品の括りに入る、 多分に前衛演劇的性質の強い商業映画とは異なった作りの作品でした この作品には 主人公「彼女」が 毎朝廃ビルの屋上に立ち 飛び込む意思があるのかどうかを試す 朝の「儀式」という特徴的な場面があるのですが これは庵野監督の著書 『庵野秀明 スキゾ・エヴァンゲリオン』に書かれた 「ガイナックスの屋上に立って、実際に飛び込めるかどうか試してみた」 という記述の、 会社の屋上で自殺未遂とも取れる行為をした 庵野監督自身の衝撃的体験を元に 描いたものと思われ この作品に登場する「カントク」が エヴァ放送終了後 先が見えなくなったと語る 庵野監督自身が投影された人物の様でもある事や 加えて、 ロケ地となった庵野監督の故郷山口県宇部市が まるでエヴァンゲリオンの世界そのもののビジュアルだったり 主人公「彼女」の深刻な家族問題を起因とした非現実な言動が 「居所を失い廃屋で憔悴するアスカ・ラングレー」の様だったり 先が見えなくなり安らぎを求めて「彼女」と共同生活をする「カントク」が 「過酷な二重スパイの任務から逃避する様にスイカの栽培をする加持リョウジ」 の様だったりなど 多分に『エヴァンゲリオン』を彷彿とさせる映像やキャラクターで 占められている事からも この映画は、 藤谷文子の私小説的作品をベースにした 庵野監督自身の追い詰められた様な息苦しい程の 分裂症的心象風景をトレースして描いた 「プライベート・ムービー」という性質が強い 実写作品の様な印象を受けました 当時サラリーマン必見とまで謳われる程の超話題作となった 庵野監督の出世作 『新世紀エヴァンゲリオン』 は 本放送が始まるまでの制作状況から推定して 初回放送の時点で制作が破錠する事が予想出来ていたという様な 毎回ペース配分を考慮しない全力投球での作品作りが行われ それが大きな要因となり 激しく状況が悪化して行く中で制作された作品と言われていますが ほぼ伝説と化した、物語を放棄した様な賛否両論の最終回では これも「サービス」の一種であると言及しながら 途中で制作が破錠した事を作品に盛り込み、 ラストでは画面が割れた先に拍手をするキャラクター達を並ばせて 終了する様な 演劇の世界で言う「第4の壁」を破る展開を取り 全てを描き切り 開放された様な心境を描くといった 人間の醜さ愚かさや人の心の旅と受難を描く物語に重ねて 作品そのものが壮絶な制作現場を物語るという 正に持っているもの全てをさらけ出して作られた作品でした その一方で ラストシーンをなぜ「第4の壁」を破る演出にしたのかという 真の理由に付いては「理由は墓まで持って行く」とコメントし 真相を不明にしたり 『旧劇場版エヴァンゲリオン』では 誰も理解されない苦悩を自分一人で抱える 庵野監督の分身の様な主人公が ラストで何の説明も無く「首締め」を始めて 「行動の真意」を不明なままで映画を終了させたりと 作品の真意が掴め無い難解なラストで物語を締めるのも 庵野監督の作風でもありました。 実写でもアニメでも一貫して全てをさらけ出す様な 「プライベート・ムービー」の様な作品作りを行い その一方で、「首絞め」には「意味がある」という様な 作品の「核心」を示す「サイン」は出しても 肝心の「核心」には触れないという矛盾が 「難解な作風」と呼ばれる所以なのですが その「核心」に潜む「闇」の様なものの存在を感じる所に ラストで少年に首絞めをさせる特異で奇異な物語を作り 更には後にそれらを改める様な新作を作った 理由がある様に 思われるのでした。 ▲目次へ▲ 3. 難解な作風にあるもの庵野監督はインタビューで 「自分がパッと思い付いた事には必ず元ネタがある事に嫌気がする」 と語り 自作の『ラブ&ポップ』に付いては原作者 村上龍を 「敵と自分という存在を認識しないとプライドを維持できない何もない人」 と評し、そんな村上龍にシンパシーを感じるとコメントした事があります (出典 「スキゾ・エヴァンゲリオン」より) それは 日本中が熱狂し絶賛する様な 刺激的で独創的な作品を生み出しながらも 思い付くものには必ずオリジナルが存在し 自分で生み出している気になれないと言った 何もない「空」なのは自分自身の事であるという創作活動上の苦悩を 村上龍に重ねて語っていた様にも捉えられる発言にも聞こえます 又、 宮崎駿監督の代表作『風の谷のナウシカ』に 原画として参加した新人時代、 いきなり巨神兵が出撃する重要な場面を任されるという大役を果たし かつて所属した製作会社「GAINAX」の出世作となった 『王立宇宙軍オネアミスの翼』では 戦闘シーンのリアリズムを追求する為 自衛隊に体験入隊し完璧なリサーチをし ロケット発射の場面では一コマに9枚もの絵を重ねるという 驚異の作画を担当するなど アニメーター時代の庵野監督は 特に手描きのメカの描写では ずば抜けた技術を発揮する アニメーション界でも有数のアニメータながらも 『風の谷のナウシカ』制作時から 「メカは描けるが生き物が描けなかった」と 人物キャラを描く事を苦手としていた事を告白しており その理由の一環として「家族、周囲を含め、人に興味がないから」 とのコメントを残しております (出典 「パラゾ・エヴァンゲリオン」より) そのコメントが意味する様に、庵野監督はインタビューで 対人関係を人柄や人格では無く立場のみで判断し 監督とスタッフとの立場を依存関係に捉えて 立場の違いによって人を蔑視したり アニメ関係者やファンを含めて アニメ業界特有の閉鎖感全てに嫌気がさしていた時期があったと語り 更には その様な考えに囚われた自分自身に 息が詰まる程の嫌悪感を抱き 自暴自棄にもなっていたと 人間関係に起因した問題を赤裸々に告白しております (出典 「スキゾ・エヴァンゲリオン」より) 普通なら口が避けても言えない「闇」の様な内面を語った 正に「告白」なのですが これらの言及から 旧映画版エヴァンゲリオンのラストの 映画館の観客(アニメファン)を写した実写映像パートや 主人公が説明無しで突如首絞めを始める 難解なラストシーンの意味する所は 全てをさらけ出したものを投影させる作品作りの中でも 口が裂けても言えない事は「見せられない」という 表現出来ない事を表現するジレンマに苛まれる 庵野監督の絶望 そのものにある様に感じられ この様に、創作上解消される事の無い葛藤に苛まれるという 人には見せられない理解されない尋常では無いストレスが 作品に反映され続ける図式に 「鬱」を患う程に庵野監督を憔悴させる理由が あったのかもしれません 正に身を削る思いで作り上げた 『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』制作後 精も根も尽き果て「鬱」を患う程の不安定な精神状態になりながら 今回『シン・ゴジラ』制作を決意したのは 思うに、 ・・・アニメ界全般に嫌気が差し自己嫌悪に陥り 先が見えなくなって自殺未遂の様な衝動を起こす様な自分が さながら「アスカに頬を手を当てられ許される碇シンジ」の様に まるでプライベート・ムービーの様な作品を作っても許される環境の中で 安らぎを得て、癒やされて、命の洗濯をしたい・・ という思いからだったのかもしれません。 ■ 庵野監督作品の魅力とは ひとつに、緻密な設定と構成力に裏付けられた 誰も思い付かない様なインスピレーションに満ちた 荒唐無稽な冒険活劇として描かれる 「狂気を制御しながら操る」危うい破壊タイプな物語によって カタルシスを感じる所に 骨頂がある様に思われます その様な世間の評価と期待を汲みながら 制作が進めば進む程 絶望的状況が進む制作状況をトレースし 内側へこもって行く様な特異で壮絶な環境下での 狂気すら孕む創作活動の中で 多忙が過ぎて「鬱」を患う程に追い詰められながら 正に身を削る思いで作品を生み出す所に 庵野監督の創作活動の姿があるのでしょう。 ■ エヴァ制作後 精も根も尽き果て「鬱」を患う程の不安定な精神状態となり 『シン・ゴジラ』の様な実写映画の世界に足を踏み入れるのも 自分の発想の原点となった実写特撮の世界への敬意を込めながら 机上で全ての創作をするアニメ制作とは違い 実際に存在するものを実際に配置し撮影するという 自らが画面の中に入って創作する実写の世界に身を投じて 自分の出来る事の再認識をしながら新たなものを自分の中に取り入れ アニメ制作の壮絶な創作現場に 再び挑もうという事だったのかも しれません☆ 庵野秀明 実写映画作品集 1998-2004【Blu-ray】 価格:18638円(税込、送料無料) (2016/9/28時点) 「実写映画監督」庵野秀明の長編3作品 収録 (98)『ラブ&ポップ』(00)『式日』(04)『キューティーハニー』 [映像特典] アマチュア特撮作品 (83)『帰ってきたウルトラマン マットアロー1号発進命令』 短編 (02)『流星課長』他 スキゾ・エヴァンゲリオン【電子書籍】 [ 庵野秀明インタビュー1/ 庵野監督に付いての関係者による座談会(前編) 収録 ] 価格:691円 (2016/10/24時点) パラノ・エヴァンゲリオン【電子書籍】 [ 庵野秀明インタビュー2/ 庵野監督に付いての関係者による座談会(後編) 収録 ] 価格:691円 (2016/10/24時点) □ という訳で今回は 公開から数ヶ月が過ぎ 既にネットのレビューが散々立ち上がり切って もはや新作レビューとは言えないこのタイミングで 公開後物議を醸した あのラストシーンに付いても それなりに触れてみながら 楽天ブログが仕様変更で大幅アップさせた 5万字の文字制限も かるく越えて 渋々カットながら執筆したという 驚異の文字数を誇る更新となり 面白いのかどうか お勧めなのかどうか ましてブログ主が好みの作品なのかどうか そんな記事を更新する意味はあるのかどうか そもそも 本ブログの記事に需要があるのかどうか 全く見えてこない いつもの切り口でレビューしたいと思いますw ▲目次へ▲ - STORY -突如起こった 東京湾アクアトンネルの陥落事故を受けて直ぐ様 政府官僚各位が出席する緊急会議が開かれる。 当初は地震や火山活動が原因とされたが ネットにアップされた動画から 内閣官房副長官 矢口(長谷川博己)は 未知の巨大生物の可能性を指摘する・・・ ▲目次へ▲ - 解説 -■はじめに(前列左から) 庵野秀明、竹野内豊、長谷川博己、石原さとみ、高良健吾 (後列左から) 樋口真嗣、尾上克郎、市川実日子、大杉漣、塚本晋也、松尾諭 (wikipediaより) 本作は、2016年公開ゴジラシリーズ第29作『ゴジラ FINAL WARS』以来 12年ぶりのゴジラシリーズで 12月上旬まで上映が続いたロングランとなり 10月からは海外の公開も始まり 批評家からも高評価を受けているという 2014年公開 ハリウッド版ゴジラとなった『GODZILLA ゴジラ』の 世界的大ヒットを受けて制作された 日本製完全新作ゴジラ映画です。 総監督・脚本には『エヴァンゲリオン』シリーズの庵野秀明 監督・特技監督に『進撃の巨人』の樋口真嗣 出演は 『家政婦のミタ』でブレイクした長谷川博己ほか 総勢320名による俳優陣 ゴジラのモーションキャプチャーアクターは 狂言師 野村萬斎が担当 ■ 本作は 庵野秀明、樋口真嗣 両監督が手がけた特撮短編作品 『巨神兵東京に現わる』がきっかけで映画化が決まった作品で 特に 社会現象にもなったアニメーション映画の続編 『シン・ヱヴァンゲリヲン劇場版:||』製作中の 庵野秀明 監督へのオファーは エヴァンゲリオンの新作を控えていた多忙な時期だった事と 個人的にも『鬱』を患った後の精神的にも不安定になっていたという理由から 一度は断られるという中で 盟友 樋口真嗣監督の説得により「一度きりの挑戦」として実現し これまでに無い起用となった異例の これまで誰も見なかった異色の これまでに存在しなかった異才による 「ゴジラ映画」誕生となった 話題作です ■ 本作には 「子供が理解できるテーマ性 という これまで『ゴジラ映画』として神格化されて来た様式に欠ける」 点や 「総勢320名もの俳優陣を起用したリアルで未曾有の群像劇でありながら キャラクターを演じる俳優一人ひとりの個性に基づいた 深みと魅力を感じる演出がなく アニメ畑出身の映像作家によく見られる傾向としての 登場人物達に感情移入が出来ないまま 映像と物語のみを見せられた感は否めない」 の様な演出上の難点や 「日本の文化背景に深く根付いた設定による作風は 往々にして海外での評価は低い」 などの マイナス要素がありましたが これまでの『ゴジラ映画』として蓄積されてきたものを一旦リセットし 恐ろしい怪獣が街を破壊する恐怖を描いた一作目に立ち返り 現代の都心が壊滅的被害を受けるという大きな流れの中で 「主演が演じるヒーローが物語を牽引する 登場人物一人一人の深みのある演技で描かれるドラマ」 とは異なり 近年の震災に於ける 日本人の礼節をわきまえた行動が 世界の絶賛を受けた事を重ね合わせた様な 誰が主役という事では無く 大衆として纏まった集団が 一丸となって困難に立ち向かい共に乗り越えて行く様を リアルなタッチで追った ヒューマニズムを描いた作品であり 近年制作された邦画の中でも高い評価を受けた 映像作家庵野秀明の新たな代表作となった作品でもあります。 ▲目次へ▲ ■本作の内容海ほたるパーキングエリア (wikimediaより) 物語は、 東京湾を縦断する「東京湾アクアライン」の トンネル陥落事故引き起こした巨大生物が 二足歩行で歩くまでに徐々に形態を進化させながら都心を目指し 甚大な被害を出していく中、 かつて無い想定外の災害に政府の対応は遅れ 議論は2転3転し方針が定まらないまま被害は拡大して行くばかりとなり ようやく巨大生物駆除を目的とした方針を定め 自衛隊に出動命令を出すのだが・・・ というリアルなタッチの流れで描かれ 「災害」目線の流れで 「政府」の対応が物語の核となった 「会議映画」という これまでのゴジラ映画には無かった 新たな切り口で物語が進んで行きます ■ 「敵の怪獣と戦い、時には人間の味方もする」 という これまでの「ゴジラ映画」とは 根本的に異なった 行動の目的も理解も出来ない 生物としても コミニュケーション不可能な 現代社会に突如として出現した異質で不気味なものとして 庵野監督の代表作『エヴァンゲリオン』シリーズに出てくる 「使徒」を髣髴とさせる描写でゴジラを描き 都市が壊滅的被害を受ける「災害」という側面と 先の震災を彷彿とさせる「人災」というもう一つの側面を 「核の申し子」という怪獣誕生の経緯と重ね合わせた 第一作目のゴジラ映画に立ち返り 政府の会議室を舞台にしたポリティカル・サイエンス・フィクションという パニック映画とは異なった独自の切り口で緊迫した物語が進行する 日本にしか出来ない日本映画による日本らしい 画期的な「ゴジラ映画」に仕上がった作品です ▲目次へ▲ 3. 特撮映画という原点回帰figma 巨神兵東京に現わる 巨神兵 全高約16cm ABS&PVC製 塗装済み可動フィギュア/送料無料 価格:7562円(税込、送料無料) (2016/10/24時点) 本作が制作されるきっかけとなった 一切CGを使用せず制作された『巨神兵東京に現わる』は 社会現象にもなった『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』の 併映作品として上映された短編作品で 特撮映画に敬意を込めて制作された 全編精巧なミニチュアと旧来の特撮技術のみ使用して 「特撮映画日本」と呼ばれた 日本映画の伝統に則り作られた オマージュに満ちた内容でしたが まるでCGを使用した実写と見紛うかの驚異の映像に仕上がった 気迫に満ちた意欲的な作品で 過去の特撮映画を仲間と共に懐かしんで作った様な類の作品では 決してありませんでした この短編が旧来の特撮技術のみで制作されながら 特異な先進的映像に感じられた理由の一つとして 特筆すべきは ミニチュアを実写の様に見せる 実存感ある「視点」にあった様に思われます。 周りを本物の様に見せると本体も本物に見えるという 旧来からある特撮映画のセオリーを 映像だけではなく 脚本にも適用させ 庵野流の独特の「視点」でそれらを切り出して 怪獣が21世紀の現代に現れた様に観客に「疑似体験」させる イベント性という側面を持った 決してCGによるビジュアルに頼らない 特筆すべき「視点」によって構築された これらの特異な「手法」が 本作『シン・ゴジラ』の「核」となっている印象がありました。 ▲目次へ▲ 4. 会議サスペンスという着目点本作の異色な点としてまず感じられたのは、 これまでのゴジラ作品や怪獣映画などに見られる、 「主人公をヒーロー」とした、 又は 「主人公を語り部」とした軸を持つパニック映画という 「伝統的舞台劇手法」が見られない所にありました。 本作は タイトルが出た後 何の前置きも無く いきなり巨大生物出現となる本題に入り 有事の対応に追われ専門用語が間断なく飛び交う 内閣の緊張感溢れる慌ただしいやり取りで 映画の幕が開き 庵野作品の特徴である 明朝体の仰々しいスーパーが 読む間も無く表示されては消え 想定外の巨大生物による予想だにしない被害が都内に及び 対応に追われる政府の姿を物語の主軸に置き、 これまでのゴジラ映画に良く見られた 烏合の衆の様な脇役扱いの政府関係者達や ゴジラに破壊される事をステイタスとするお約束の建造物破壊描写や 怪獣を見ても何の恐怖心も抱かない底抜けの勇気を持った主人公という 大衆映画的な大味な演出をせず 災害に対応する政府のめまぐるしい対応処置をひたすら描き、 会議室を舞台にした 新たな切り口で物語が進行し 殆ど付いて行けずに置いて行かれる様な 慌ただく描写される映像と 息もつかせぬセリフの応酬に圧倒されながら 市街地を破壊しながら上陸した巨大生物が 再び海へ戻って行くという 圧倒的質量を持った情報量による演出で 映画前半が終了します これらは『エヴァンゲリオン』シリーズでも良く見られた 画面と音声に過剰なまでの情報量を詰め込んだ 特徴的な緊迫感ある庵野作品らしい演出が 本作でも発揮されたと言えますが 観客が聞きそびれたり、見落とす程の 過剰なまでの情報量で作られており これはそもそも 見せたり読ませたり聞かせたりする事を目的として 描いているのでは無く 特撮の所でも解説した 「周りをリアルに仕上げると中身もリアルに見える」という この後展開されるエヴァンゲリオン的な奇想天外巨大生物対抗作戦を 現実のものの様に見せる為の「疑似体験」を目的とした演出の一環と考えられ 庵野監督流の「布石」として描かれた様な印象を受けました。 ▲目次へ▲ 5. 社会問題を見据えたテーマ性「こんな時代のこの国で日本を代表する空想特撮作品を背負って作る」 という庵野監督のコメントにもあった通りの仕上がりとなった シン・ゴジラですが 本作で描かれる政府は 一様に緊迫感溢れるやり取りを行いながらも 現場では怪獣の被害が拡大しつつある中で 一向に定まらない方針を話し合うという無為な集団となっていたり 長谷川博己演じる主人公は、 主役に相応しいヒロイズム溢れる行動や言動を取りつつも その言動によって対局が大きく変わって行くという様な演出は無く ヒーロー足り得ない、あくまで集団の中の一構成員の範疇を超えない 描き方になっていたり 一般市民の描写が逃げ惑う群衆のみで 閉鎖感が否めなかったり ゴジラ映画が築き上げてきた 「行く手を遮るものを練り歩きながら壊す畏怖の存在」 という様式を廃し、 エヴァンゲリオンの使徒か、リドリー・スコット監督の『エイリアン』の様な コミュニケーション不可能な絶望的なまでの異型な存在として描いたり と これまでのゴジラファンは元より 海外のゴジラファンを考慮しない 独自の展開が 一部の物議を醸した様に、 実際、ヒーロ然とした主人公を描き、派手な展開に派手な大仕掛けを好む ハリウッド映画圏の国での映画ファンにとっては 何が面白いのか分からない、面白味を感じられない という見解も見られる事からも これはひとえに「日本を代表する空想特撮作品を背負って作る」という 庵野監督の言及から ハリウッド映画を意識しない 「日本にしか作れない日本の(観客の)為のゴジラ映画」を目指した事を 意味する仕上がりの為の様にも取れました。 加えて、 王道のゴジラ映画を愛する層の一部不信を買いながらも これまでゴジラ映画が積み重ねてきた様式を一旦リセットし 原発が生み出した恐怖の存在として描かれた 1952年制作の第一作目の『ゴジラ』に立ち返り 先の震災をイメージする場面や、安保新法に関わるプロットなど 現代の日本に関わる様々な事柄や問題や事象を作品に重ね合わせ 衝撃的展開に絶望的状況に対し 一丸となって立ち向かい共に再び立ち上がる人々の姿を描いた 多分に現代の日本を意識した 社会問題を見据えたテーマ性を含んだ側面を持つ 日本ならではのゴジラ映画となった様な印象がありました ▲目次へ▲ 【ネタバレ解説編】シン・ゴジラ |
Re:映画「シン・ゴジラ」- ヱヴァンゲリヲンの衝撃再び(12/10) | アリエルmf666 さん |
Re[1]:映画「シン・ゴジラ」- ヱヴァンゲリヲンの衝撃再び(12/10) | Voyager6434 さん |
Re:映画「シン・ゴジラ」- ヱヴァンゲリヲンの衝撃再び(12/10) | パパ メイアン さん |
Re:映画「シン・ゴジラ」- ヱヴァンゲリヲンの衝撃再び(12/10) | mkd5569 さん |
Re[1]:映画「シン・ゴジラ」- ヱヴァンゲリヲンの衝撃再び(12/10) | Voyager6434 さん |
Re[1]:映画「シン・ゴジラ」- ヱヴァンゲリヲンの衝撃再び(12/10) | Voyager6434 さん |
PR |
Voyager6434 映画と音楽を楽しく紹介したブログです
|
サイド自由欄 |
カレンダー |
カテゴリ 洋画(5)洋画 - スティーヴン・セガール (爆笑辛口)(27)映画 - スター・トレック(13)エッセイ [70s~90s] - 新スター・トレック(21)洋画 [サスペンス/ミステリー](11)洋画 [アクション](23)洋画 [ドラマ](11)洋画 [コメディー](6)洋画 [SF](26)洋画 [冒険・ファンタジー](9)邦画(19)アニメ [映画、TV](11)アニメ - 氷菓(7)アニメ - 宇宙戦艦ヤマト(旧シリーズ)(8)アニメ - 宇宙戦艦ヤマト(新シリーズ)(10)連続ドラマ [海外](3)韓流 [映画、TV、音楽](2)音楽 [邦楽](9)音楽 [洋楽](47)音楽 [ROCK](13)音楽 [プログレッシブ・ロック](25)音楽 [JAZZ](7)音楽 [映画、連続ドラマ](6)音楽 [アニメ](1)コラム [映画、TV、音楽](16)コラム [映像、音響、PC](9)企画 [特集](60)楽天怪奇現象File (不具合、新機能紹介)(23)創作 [コント] - 連載 御留守家の三姉妹(35)創作 [スクリプト] Crossover11風コント(3)エッセイ [特集] - ヘタレ絵日記・・・(40)私信 [日記](5)NEWS[特集](33)カテゴリー未分類(1) |
コメント新着
Voyager6434@
Re[1]:2024年 新年あけましておめでとうございます(01/01)
かめばーちゃんさんへ 今更ですがw今年…
かめばーちゃん@
Re:2024年 新年あけましておめでとうございます(01/01)
あけましておめでとうございます。 『芸…
Voyager6434@
Re[1]:『Wikiの写真で一言』第10回「努力義務って義務?」(04/30)
細魚*hoso-uo*さんへ 体育会系女子なら …
細魚*hoso-uo*@
Re:『Wikiの写真で一言』第10回「努力義務って義務?」(04/30)
こんばんは 田舎の中学生は古よりヘルメ…
Voyager6434@
Re[1]:ヘタレ絵日記40『下○タ談義』(03/12)
細魚*hoso-uo*さんへ いらっしゃいませ~☆…
細魚*hoso-uo*@
Re:ヘタレ絵日記40『下○タ談義』(03/12)
こんばんは あの当時もPTAが アニメで…
Voyager6434@
Re:謹賀新年です!(01/01)
かめばーちゃんさんへ おひさしぶりですw…
人間辛抱@
Re:『竜とそばかすの姫』すずが竜を救おうとする理由とは(09/01)
どうもお久しぶりです。 新型コロナウイル…
背番号のないエースG@
エースをねらえ!
あだち充「ラフ」に、上記の内容について…
|
キーワードサーチ ▼キーワード検索
|