吉本隆明『日本近代文学の名作』
吉本隆明『日本近代文学の名作』(新潮文庫)を読んだ。 吉本さんが深い教養に支えられて、日本近代の作家の作品を独自の観点で捉え表現している興味深い内容だった。 独特の表現ということでいえば、中野重治についての「たくさんの鋭角的な屈折が、そもままキラキラした結晶になっていった」(p.104)などの表現は、非常に感性的な捉え方で、五感情像の豊かさが表れていると思う。 言語学や文学論の構築を目指すとは言っていても、私自身、あまりに日本の作家に無知であることが良く分かった。1作1作読み込んで、明治から大正、昭和初期の日本の風景も含めて、自らの頭脳に生き生きした像を描けるようになりたい。 また、折口信夫の項では、日本語の起源にも触れてあったので、ここの辺りも深めていく必要がある。加えて、柳田國男の最後には、小林秀雄が文芸評論の元祖とあるので、小林にも学んでいかなければと思った。