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脅《おど》かせ
ビスマルクが或時|仲善《なかよ》しの友達と連立つて猟に出た事があつた。すると、何《ど》うした機《はづ》みか友達は足を踏み滑らして沼地《ぬまぢ》に陥《はま》つた。 友達は慌ててビスマルクを呼んだ。 「君お願ひだから遣《や》つて来て僕を捉《つか》まへて呉れ、さもないと僕は沼地《ぬまぢ》に吸ひ込まれてしまふ。」 ビスマルクは大変な事になつたなと思つたが、強ひて平気な顔をしてゐた。 「馬鹿を言ふない、僕が其処《そこ》へ飛ぴ込んで見ろ、一緒に吸ひ込まれてしまふばかりぢやないか。」とビスマルクは相手が狗《いぬ》のやうに腕《もが》いてゐるのを見た。「もうかうなつちや、迚《とて》も助かりつこは無い。君がいつ迄も苦しんでるのを見るのは僕も辛《つら》いから、一思ひに打ち殺してやらう。」 ビスマルクはかう言つて、平気な顔で身動きの出来ない友達に狙《ねら》ひをつけた。 「おい、じつとして居ないか、的《まと》が狂ふぢやないか。僕は寧《いっ》そ一思ひに遣《や》つ付けたいから、君の頭に狙ひを付けてるんだ。」 ビスマルクの残酷な言葉に、友達はもう泥淳《ぬかるみ》の事など思つてゐられなかつた。何でも相手の銃先《つゝさき》から遁《のが》れたい一心で、死物狂《しにものぐるひ》に腕いてゐるうち、古い柳の根を発見《めつ》けて、それに縋《すが》つてやつとこさで這《は》ひ上《あが》る事が出来た。 ビスマルクは笑ひく銃を胸から下した。その糞落付《くそおちつき》が自分を救つたのだなと気づいた友達は、 「君有難かつた/\」 と溝鼠《どぶねずみ》のやうな身体《からだ》をして、両手を拡げて相手に抱きつかうとした。ビスマルクは慌てて逃げ出した。 「もう好《よ》い/\。そんな様《ざま》をしてお礼などには及ばんよ。」 神戸の船成金|勝田《かつだ》氏は国民党の立場を気の毒に思つて、三十万円もふり撒くといふ墫がある。それも一つの方法には相違ないが、もつと好《よ》いのは、ビスマルク流に落選でもしたら、犬養始め皆の首根つこを縊めると脅かす事だ。ーすると五十人は屹度当選する。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2006年06月05日 20時12分12秒
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