|
カテゴリ:トレーニング
まず初めに、長距離における"スピード"と"持久力"がスポーツ生理学の観点からどのように記述されるかを説明します。
これは一見練習方法の説明とは関係ないように見えます。 しかし、それらを理論の観点から理解する事が出来れば、それらをどのように引き上げればよいかの見通しがつきやすくなります。 そのため、少々難しくなりますが、説明することとします。 まず、スピードと持久力の定義ですが、これは次のようにします。 スピード=エネルギー産成効率の高さ 持久力=疲労物資代謝効率の高さ 上記を初めに説明します。 まず、スピードについて。 エネルギー産成効率の高さについて、それを決定づける要素は筋細胞内のミトコンドリアの量と質となります。 長距離の場合、エネルギー産成は有酸素系で行われます。 肺で酸素を取り込み、それを血液へ。そして血液から細胞へ回され、細胞内のミトコンドリアで酸素を使用してエネルギー産成が実行されます。 筋細胞内のミトコンドリアの量、質が高ければ高いほど、エネルギー産成効率は高く、短時間で強い力を発揮、すなわちスピードを出せます。 よって、長距離のパフォーマンスを向上させたいとするならば、ミトコンドリアの量、質を改善する事が必須となります。 改善と記しましたが、具体的にはミトコンドリア内の酸化酵素を活性化させる事がそれにあたります。 この改善は主にスピード練習により成されます。 ただし、一概にスピード練習と言っても、その質により改善の仕方が異なると考えられます。 質が高い→速筋細胞内のミトコンドリアの酸化酵素活性化 質が低い→遅筋細胞内のミトコンドリアの酸化酵素活性化 ここら辺の話は正直、まだ自分の中でも理解しきれていません。 速筋でのエネルギー産成効率は高そうだが、その分乳酸の発生が強そうと考えられますね。 競技レベルが低いうちは、質の低い練習で遅筋内のミトコンドリアの改善を図ればいいですが、競技レベルが高くなるとより質を高くし、速筋内のミトコンドリアを改善しなければならないと推測します。 というのも、競技レベルが高ければ、それだけ単位時間あたりより高いエネルギーが必要になるからです。 ただし、それをする際にはLTレベル(後述します)も高くしなければなりません。 そうでなければ、すぐ体に乳酸が溜まり動けなくなるはずです。 このエネルギー産成効率の高さを示す指標がVO2MAXと考えられます。 これは上記で少しと記しましたが、どれだけ酸素を吸えるか、血液から細胞に回せるか、細胞内で使用出きるかに依存します。 ただ、この"値"はトレーニングにより改善はされますが、上限に至りやすい、成長し続けづらいものです。 ここらは推測ですが、おそらく換気能力に限界が生じやすいので値そのものには上限が付きますが、細胞内での酸素の使用効率には大して上限がないのではと考えられます。 スピードに関してはひとまずここまで。 次に持久力に関して説明を行います。 持久力については、それを決定付ける要素は二つあります。 その前に持久力について概念的な事を説明しますと、これは単純に"量"で表されるものではないと考えられます。 それより、持久力の高さ=疲れにくさ、と捉えた方がいいのではないでしょうかね。 イメージ的には、持久力を数値化して運動するにすれそれが減少する、と捉えるのではなく、運動し続けるにつれ疲労が溜まりそれを減らす効率が持久力、と捉える方が妥当なはずです。 注意しておきますが、ここでは5000mに関して記述しているため、このような捉え方をしています。 マラソンなどを考えるのならば、量的な捉え方、すなわち貯蔵されているグリコーゲンの量をそのまま持久力と捉えるべきだと思いますね。 それを考えると、上記の説明は"持久力"ではなく、"スピード持久力"なのかもしれません。 さて、上記を考慮しつつ、要素についての説明を行います。 まず一つ目は、"身体内の使用可能な毛細血管量の多さ"です。 この毛細血管量が多ければ多いほど、疲労物質の代謝量は増加し、また疲労除去効率も上昇します。 具体的に説明しますと、使用可能な毛細血管量が多くなると血流の速度が低下するものらしいです。 血流速度が低下すると、その分時間をかけて代謝できるから、代謝効率が上昇します。 結果、疲労物質は消失やすくなる、すなわち疲れにくくなります。 また、疲労物質のうちには乳酸も含まれるため、LTレベル向上にもつながると考えられます。 毛細血管量を増加させるのに必要な練習は、jogです。 jogで血流量を増やせば、末端の未使用だった毛細血管が開発されて、使用可能な毛細血管量が増加します。 これがjogをすれば体力が増加するのメカニズムとなります。 もう一つは、これもまたミトコンドリアの話となりますが、"ミトコンドリア内の乳酸輸送担体(MCT)の量"です。 これは乳酸処理の能力と関連します。 ここでは、この数が増加すれば、乳酸が処理されやすくなると捉えておけば良いでしょう。 LTとは乳酸性作業域値の略です。 この値は運動をしていて、その強度を徐々に増加していった際に、血中乳酸濃度が急激に増加する時の"血中乳酸濃度の値"を言います。 ちょっと間違いかな・・・? このLT値での運動強度=スピードが高いほど、長距離的能力に優れるといえます。 LT値での運動強度が高いとは乳酸の観点から如何に表現されるか。 基本的には、乳酸は速筋で産成され、遅筋で処理されると言われています。 また、乳酸濃度が一定に保たれるというのは、産成量と処理量が等しいという事です。 決して、乳酸が産成されていないというわけではありません。ここは注意が必要なところでしょ う。 乳酸が多く産成される=速筋が使われている=単位時間あたり高いエネルギー産成=速いスピード、という図式が成立します。 これより、パフォーマンスが高い状態とは、乳酸産成量が高く、かつ乳酸処理量も高くて血中乳酸濃度が定常になる状態をいいます。 これがLT値での運動強度の高さを説明するはずですね。 さて、多少脱線したが上記説明から、乳酸産成が強ければそれはスピードが出せる事を表し、乳酸処理が高ければ持久に優れているといえます。 その意味で、ミトコンドリア内のMCT数の多さは持久の目安、というかスピード持久の目安か、と考えられます。 これを改善する練習はPR。インターも改善するかもしれないが、もっともらしい記述はなかったので、不定。 さて、とりあえずここまでの部分をまとめます。 説明したものは以下の通りです。 スピード=エネルギー産成効率が指標 エネルギー産成効率=ミトコンドリアの量、質(酸化酵素活性)に依存 持久力=疲労物資代謝効率が指標 疲労物資代謝効率=使用可能毛細血管量、ミトコンドリアの量、質(MCT量)に依存 改善するのに必要な練習は、 使用可能毛細血管量改善=主にjog ミトコンドリア量、質(MCT量)=主にPR ミトコンドリア量、質(酸化酵素活性)=インターバル (*低質は遅筋内のそれ、高質は速筋内のそれ) 乳酸処理改善には使用可能毛細血管量改善とMCT量改善が必要。 以上を考慮して、ようやく5000mの練習の方法論を説明します。 記すものは、5000mのレベル別に必要な能力、及び能力改善のために必要な練習方法についてです。 ここは自分の感覚による所が大きいので、注意してください。 ところで、以下を記す前に方法論について基本的な考えを記します。 基本的な考え方は、競技レベルが高くなるに連れて、単位時間あたりのエネルギー産成能力の高さが必要になるという事です。 レベルが低ければ大したエネルギー効率は必要ないため、とりあえず疲労(というか乳酸。より詳しく言えば、筋肉なphの低下)が溜まらないように有酸素能力を高めておけばいいはずです。 しかし、レベルが上がるに連れて、次第に高いエネルギー効率、単位時間当たりに多くのエネルギーを産成する必要が生じてきます。 その意味で、ミトコンドリアの量、質(酸化酵素活性)が必要となります。 一方、単位時間当たりでより高いエネルギー産成をすると、その分より高い乳酸が生じます。 よって、身体を動かし続けるためにはより高い乳酸処理能力が必要となります。 その意味で使用可能毛細血管量の改善、ミトコンドリア量、質(MCT量)改善が必要となり、故にjog、PRが重要となります。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2014.02.20 20:33:11
コメント(0) | コメントを書く
[トレーニング] カテゴリの最新記事
|