科学と宗教の統合 ケン・ウィルバー
「科学と宗教の統合」 ケン・ウィルバー /吉田豊 2000/10 春秋社 単行本 278p 原書The Marriage of Sense and Soul: Integrating Science and Religion, 1998★★★★★ 妻トレヤがなくなったのが89年で、その経過を二人の日記などで綴った「グレース&グリット」が1991年にでたとすれば、この本が出るまで7年が経過したということになる。日本では1999年2000年と相次いで翻訳出版されているが、その間にある著者の心境には、大きな変化があったのではないだろうか、と推測する。 科学と芸術と宗教、時には科学と芸術と道徳、というビック・スリーの中から、科学と宗教という二つの要素を摘出し、タイトルにあるような感性と魂の結婚、というようなシンプルで分りやすい図式に置こうとする。このウィルバーの着想と努力は、必ずしも独創的とは言いがたいが、それまでに彼がつくってきたフィールドで、しかも彼のオーラに包まれながら進行すると、すっきりして分りやすいものとして見ることができないわけではない。 しかし、すっきりしているだけに、本当だろうか、という疑問も湧く。もう少し著者の一連の著書を読み進めないとなんとも言えないが、この時期はインターネットが台頭してきて、社会やビジネス、あるいは世界観というものが変わりつつあった時代だ。しかし、変化の兆候はまだまだ途上にあった。 そして9.11を経過して、宗教というものが、もう一度見直されなければならない。リチャード・ドーキンスのように「神は妄想である。宗教と決別せよ」という極論までしなくても、この書でとっているような「宗教」に対するウィルバーの「寛容」な態度は、本当に何事かの力になりうるのだろうか、という疑問を持つ。 芸術、道徳(宗教)、科学。あるいは、真、善、美。私、私たち、それ。このビックスリーのたとえは、ケン・ウィルバーの力を借りるととてもすっきりして分りやすいのだが、卓上の論理というか、書斎のインスピレーションというか、どこか青二才的弱さも感じないわけではない。とくに、この時の、私、私たち、それ、の「それ」に対応するであろう「彼」もまた、このブログの大きなテーマだ。しかし、まだそこまで思索が進んでいない。 余談だが、ウィキペディアにおいて、次のような表記があった。なんだか気になったので、メモしておく。 With Cornel West, commentary on The Matrix, The Matrix Reloaded and The Matrix Revolutions and appearance in Return To Source: Philosophy & The Matrix on The Roots Of The Matrix, both in The Ultimate Matrix Collection, 2004