世の中には、男女共学は男の子が元気をなくすとか、男女共同参画社会では社会が乱れるなどと馬鹿げた主張をする政治家がいるのだそうで、20日の「しんぶん赤旗」日曜版は次のように論評しています;
安倍首相が掲げる「美しい国、日本」。それはどんな国でしょうか。憲法9条を変えて、アメリカといっしょに戦争できる国。それだけではありません。国家や社会は-。
こんな主張があります。
「男の子が萎(い)縮して気力のない子が増えるのは男女共学が続きすぎるからであって、男女別学にすると男の子は男の子らしくなる」
これは、過去の日本の侵略戦争を美化する「新しい歴史教科書をつくる会」の名誉会長(当時)の言葉です。
もう一つ。
「国際連合が提唱する女子差別の廃止条約や児童権利条約は、家族軽視や家族崩壊を導いています」
こちらは「日本会議首都圏地方議員懇談会」がインターネットに公開しているブログ(日記)。
男女共学や、女子差別撤廃条約とそれにもとづく「男女共同参画社会基本法」を社会が乱れる、と攻撃する。夫婦別姓を認めない。離婚後300日以内に生まれた子が「前夫の子」とされる問題の改善もつぶす・・・。
これらは根が一つの動きです。その特徴は『靖国派』。つまり、日本の過去の侵略戦争を『正義の戦争』と発信する靖国神社と信念を同じくするグループです。中心は前出の「日本会議」。安倍首相自身もふくめて閣僚18人中15人がその関連組織に参加しています。憲法を変え、戦前の国家・社会への回帰をめざす『靖国派』のえがく日本とは…。
1997年に発足した「日本会議」は「美しい日本の再建をめざし、『誇りある国づくりを』を合言葉にした国民運動」として設立されました。安倍首相のいう「美しい国」のルーツがここにあります。
02年には設立5周年記念大会が開かれ、次のような決議をあげました。
(1)国会が速やかに憲法改正の発議に踏み切るよう強く働きかける(2)わが国の歴史・伝統を基調とする、教育基本法の全面的改正を求める(3)靖国神社を蔑(ないがし)ろにする国立追悼施設計画を阻止し、首相の靖国神社参拝の定着化を求める(4)崩壊しつつある家族と地域社会の再生をめざし、道徳心涵養(かんよう)の国民運動に取り阻む。
「日本会議のめざすもの」(ホームページ)として「美しい伝統の国柄を明日の日本へ」「日本の感性をはぐくむ教育の創造を」をあげます。
同じ97年に生まれたもう一つの『靖国派』の組織が「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」(のちに「若手」を削除)です。「従軍慰安婦」問題で反省の態度を明らかにした河野官房長官談話の取り消しを要求して結集し、中川昭一代表、安倍音三事務局長の体制でスタートしました。
安倍内閣の閣僚は首相を筆頭に、「日本会議」の国会版、「日本会議国会議員懇談会」のメンバーが12人、「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」のメンバーが7人。『靖国派』が政権中枢を握っています。
今年2月18日に、明治神官の参集殿で発会式を行ったのは、その名もずばり「美しい日本をつくる会」。設立趣意書には次のように書かれています。
「男らしさ・女らしさを否定し、伝統的な結婚を少子化の原因として敵視するような風潮さえ見られる」
「こうした社会や学校の乱れの原因は、共産主義的フェミニズムに根ざした男女共同参画社会基本法です」
「個人の人格を破綻(はたん)させ家庭を壊す男女共同参画社会基本法を廃棄しなければ、遠からずわが国は亡国の危機に直面することになりましょう」
今、男女共同参画社会基本法の廃棄を求める署名を呼びかけています。
4月26日に国会内で設立総会が開かれた「家族の絆を守る会」は「日本会議首都圏地方議員懇談会」の常任幹事会で提唱され、結成されました。
来賓あいさつし、顧問となったのが、自民党の古屋圭司、西川京子、萩生田光一、稲田朋美の各議員です。4人はいずれも「日本会議国会議員懇談会」の有力メンバーです。
古屋氏は、民法772条の離婚後300日規定見直し問題で、「家族の絆や一夫一婦制を解体するグループの介在」があったとし、「憲法改正やジェンダー問題などでいっしょに闘っていきたい」などとあいさつ。西川氏は、「社会の基準単位は家族」という価値観の重要性を語り、稲田氏も300日規定問題で、自民党内で「闘う政治家」が求められていると強調したといいます。(「日本会議地方議員連盟」のブログなどから)
「会」は、国連NGOの資格取得をめざし、「国連の主張する反家族的政策に歯止めをかけたい」としています。『靖国派』の標的は国連にまで向けられています。
「日本会議国会議員懇談会」には民主党からも、前代表の前原誠司氏や、松原仁氏などが参加(同会議機関誌)しています。前原氏は憲法改悪に反対する日本共産党などの主張にたいし、「『9条を守ることが平和を守ること』という勝手な平和主義」などと攻撃しています。
2007年5月20日 「しんぶん赤旗」日曜版 10ページ「男女共同参画社会が『国を亡ぼす』!?」から引用
男女平等を否定したり河野談話の見直しを要求するような考え方では国際社会に通用しないことを、国政を担当する者は考えるべきです。それを理解できない内閣は、あまり長く続かないのではないでしょうか。