与党が推薦した参考人も野党が推薦した参考人も一致して集団的自衛権の行使は憲法違反であると発言した「衝撃」について、14日の「しんぶん赤旗」は次のように論評している;
「あり得ない」「相当やばい」-。「戦争法案」を強行しようとしている自民党議員らに衝撃が走りました。衆院憲法審査会(4日)で、与野党から推薦された参考人の憲法学者3氏全員が、「戦争法案」は「憲法違反」だと表明したからです。戦争法案の根幹が問われる事態です。
田中倫夫記者
同審査会に参考人として出席したのは、長谷部恭男(やすお)・早大教授(自民推薦)、小林節(せつ)・慶大名誉教授(民主推薦)、笹田栄司・早大教授(維新推薦)の3氏。「安保法制」(戦争法案)への認識を問われ、「集団的自衛権の行使が許されるというその点について、憲法違反だ」(長谷部氏)、「私も違憲と考える。憲法9条に違反する」(小林氏)、「定義を踏み越えてしまったというところで、やはり違憲だ」(笹田氏)と全員が、戦争法案は「違憲」との認識を示しました。
同審査会で日本共産党の大平喜信議員は、米軍への後方支援(兵たん)など「安保法制はどれをとっても、(武力行使を禁じた)憲法9条に反しているのでは」と指摘。3氏は「武力行使との一体化が生ずる恐れが極めて高くなる」(長谷部氏)、「一体化そのもの。露骨な戦争参加法案であり、ついていけない」(小林氏)、「私もそうだと思っている」(笹田氏)と違憲性を強調しました。小林氏は「長谷部先生が銀行強盗して、ぼくが車で送迎すれば、一緒に強盗したことになる」と皮肉りました。
◆「憲法を適応」
「与党が推薦した人まで違憲だと断じたことは、この法案の根幹にかかわる」(自民党関係者)と与党は大ショック。菅義偉官房長官は記者会見で「まったく違憲でないという著名な憲法学者もたくさんいる」(5日)と弁明したものの、具体的な名前をあげることはできません。自民党は急きょ、「決して憲法違反だとか立憲主義の逸脱ということはありません」との反論文書を作成したほどです。
憲法研究者ら173人が発表した、「戦争法案」は「憲法9条違反」だとして廃案を求める声明(3日)の賛同者は、さらに広がっています。
5日の安保法制特別委員会では、中谷元・防衛相が「現在の憲法をいかにこの法案(戦争法案)に適応させていけばいいかという議論を踏まえ閣議決定を行った」と答弁。憲法より法案を上に置くこの発言にも批判が巻き起こっています。
2015年6月14日 「しんぶん赤旗」日曜版 2ページ「戦争法案は『違憲』-与党大ショック」から引用
3人の参考人が「違憲だ」と証言したその日の記者会見で、菅官房長官は「まったく違憲ではないという著名な憲法学者もたくさんいる」と大見得を切ったものの、著名でたくさんいる割にはすぐには名前を出せない、つまり、本当はマイナーで誰も知らないような学者だったわけです。それから数日たって、自民党は党員向けに「集団的自衛権は合憲です」という文書を配布するのであるが、その内容たるや「違憲だ」と発言した3人の憲法学者に対する反論は一切なく、単に今までの説明を繰り返しただけというお粗末なものでした。自民党にはこんな文書で納得するような政治家しかいないとすれば、深刻な問題ですが、いずれにしても現在審議中の安保法制案は違憲であるということがはっきりしたからには、このまま審議を継続するわけには行きません。与野党でよく話し合って、審議未了、廃案とするしかありません。