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2018年11月29日
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テーマ:ニュース(99630)
カテゴリ:ニュース
元徴用工損害賠償裁判に関する安倍首相の自国政府見解とも矛盾する発言に追随した日本のメディアについて、16日の「週刊金曜日」は次のような論評を掲載している;


 10月30日の韓国大法院(最高裁)による、新日鉄住金に元徴用工4人への損害賠償を命じた判決に対し、大手5紙は翌31日朝刊で一斉に「社説」や「主張」で批判を加えた。各紙の論説で最も共通する欠陥は、元徴用工の問題が「1965年の日韓請求権協定によって、完全かつ最終的に解決している」という、安倍晋三首相の発言を何も疑っていない点だろう。

 『朝日』も「日本政府や企業側は、1965年の国交正常化に伴う請求権協定で元徴用工への補償問題は解決済みとし、日本の司法判断もその考えを踏襲してきた」とする。「完全かつ最終的に解決している」から元徴用工の訴えを認めた韓国最高裁はおかしいという理屈だ。しかし、日本が韓国と請求権協定を取り決めても、個人が請求する実体的権利をすべて消滅させることにはならない。

 実際、政府は日韓請求権協定があっても個人の損害賠償請求権を認めてきた。1991年8月27日の参議院予算委員会において、外務省の柳井俊二条約局長(当時)は次のように答弁している。

 「いわゆる日韓請求権協定におきまして両国間の請求権の問題は最終かつ完全に解決したわけでございます。その意味するところでございますが(中略)日韓両国が国家として持っております外交保護権を相互に放棄したということでございます。したがいまして、いわゆる個人の請求権そのものを国内法的な意味で消滅させたというものではございません

 この「外交保護権」とは、個人が外国からその身体や財産を侵害され、損害を受けた場合、その個人が所属する国家がそうした侵害を自国に対する侵害と見なし、相手の国家の責任を追及する権利のこと。日韓請求権協定で双方の「外交保護権」は消滅したが、個人の請求権は存在するということだ。

 従って、「日韓請求権協定によって、完全かつ最終的に解決している」という首相の言い分は政府見解に照らしても不正確で、「国際法に照らしてあり得ない」と述べているが、具体的に何の「国際法」を指すのか。ところが『毎日』は、「徴用工については、協定の合意議事録で補償金の支払いなどに関し、いかなる主張もなしえないと確認している」と指摘。にもかかわらず、韓国最高裁が一請求権協定に徴用工に対する賠償問題は含まれていないとの見解を示した」ことが、一方的に条約や協定の解釈を変更する」ことになると書く。

◆「言われなき要求」?

 だが、行政府の締結した協定を最高法規の憲法に照らし、問題が生じた際に最終的に解釈するのは司法の役割だ。司法の解釈が行政府の解釈と違う結果になっても、三権分立の原則ではおかしくはない。司法が、政府解釈と異なる解釈をするのは憲法上許される。

 今回の判決では、「日本政府の韓半島に対する不法な植民支配および侵略戦争の遂行と直結した日本企業の反人道的な不法行為を前提とする強制動員被害者の日本企業に対する慰謝料請求権」を認め、日韓請求権協定の対象には含まれないとした。「いかなる主張もなしえない」ということではなく、「反人道的な不法行為」の被害者は、慰謝料を請求することができるという判断だ。これは韓国最高裁の判決であり、被告の新日鉄住金はこれに従う法的義務がある。

 ところが『産経』は、「政府は前面に立ち、いわれなき要求に拒否を貫く明確な行動を取るべきだ」などと書いている。この民事事件の被告は新日鉄住金という民間会社で、日本政府ではない。当然ながら、当事者でもない日本政府が法的に「要求」を突きつけられているわけでもない。いったい『産経』は、日本政府が他国の民事事件の最高裁判決に対し、どうやって「拒否を貫く」だの、「明確な行動を取る」だのといったことを可能にできると思っているのか。

 この点、『日経』も同様だ。同紙によると、「新日鉄住金は『日本政府の対応状況等もふまえ、適切に対応』するという。日韓関係の土台にかかわる問題だけに政府と緊密に連携しつつ対処していくべきだろう」という。民事事件の裁判での争いではなく、国家同士の争いごとのような図式に持ち込もうとしているようだ。民事事件の最終審で被告が有罪判決を下されたら、まずやるべきことは命じられた金額を原告に支払う以外あるはずがない。今になって「日本政府の対応状況等もふまえ」などと新日鉄住金が考えていたら、どんどん遅延損害金がかさむだけだ。

 それとも『日経』も、他国の民事事件の最高裁判決に日本政府が被告の新日鉄住金と「緊密に連携」すれば、何かできることがあるとでも本気で考えているのか。韓国政府ですら、司法判断に介入などできないにもかかわらずだ。

◆問われているのは日本だ

 『読売』は、今回の判決を「反日ナショナリズムに迎合」したなどと決め付けている。韓国の最高裁が、「日本政府の韓半島に対する不法な植民支配および侵略戦争の遂行と直結した日本企業の反人道的な不法行為」を認定して、被害者である原告の元徴用工に慰謝料請求権があるのを認めたことが、なぜ「反日ナショナリズム」なのか。

 自国の植民地支配や侵略の歴史的責任すら認めようとしない安倍晋三首相や自民党、およびそうした勢力を支える『読売』や『産経』こそ、自身の偏狭な「ナショナリズム」を反省すべきだろう。常に隣国の民衆から不信の眼差しがこの国に注がれているのは、「反日ナショナリズム」が理由ではない。安倍首相の「完全かつ最終的に解決している」という発言に象徴される、日本の過去の政策がもたらしたおびただしい被害者の痛みに無頓着な姿勢こそが元凶なのだ。

 しかも、『読売』は、「日韓併合条約が合法かどうかは、国交正常化交渉でも決着しなかった。両国がこの問題を棚上げして、和解の道を進んだ経緯について、韓国司法が無視したのは理解できない」などと書いている。日本がこの交渉で植民地責任を頑なに認めず、当時の韓国の軍事政権も「政治決着」を急いだことが、後に人権侵害を受けた被害者の救済が後回しにされる様々な悲劇を生んだ。今回の元徴用工の問題もその一部である以上、韓国の司法が原告の救済のために「不法な植民支配および侵略戦争の遂行」に踏み込んだのは一つの見識として評価されるべきであって、「理解できない」と批判するのは、元徴用工の人権侵害の実態に関心などないからだ。

 だが、『産経』は、韓国最高裁判決が「『植民地支配や侵略戦争遂行と直結した反人道的な不法行為』などと決めつけ、個人の請求権を認めた」のは、「史実を歪め」るものだと批判する。新日鉄住金の前身の旧日本製鉄に対する韓国人原告2人の未払い賃金、慰謝料等をめぐる訴訟で大阪高裁は02年11月19日、請求は認めなかったが、「日本製鉄の監視下に置かれて、労務からの離脱もままならず、食事を十分には与えられず、劣悪な住環境の下、過酷で危険極まりのない作業に半ば自由を奪われた状態で相当期間にわたって従事させられ」たと事実認定し、「違法」と断じた。『産経』は、これも「史実を歪め」たと見なすのか。

 各紙に言えることだが、「主体的に問題解決を図るべきは韓国政府だ」(『毎日』)などと主張するのは論外だ。まず当事者の新日鉄住金が判決に従い、被害者に誠意ある謝罪を示すことが先決だ。同時に今回の判決を契機に改めて植民地支配の負の歴史に向かい合い、日韓条約を含めそれを未だに清算できていない現実を克服する日本側の努力が問われている。それを無視して韓国側に責任をなすりつける各紙の論調は、有害無益だろう。


2018年11月16日 「週刊金曜日」 1209号 16ページ 「元徴用工韓国最高裁判決報道はここがおかしい」から引用

 この記事にも書いているように、「日韓請求権協定によって、完全かつ最終的に解決している」から、今となっては日本も韓国も戦前の植民地時代の問題に関しては外交保護権を消滅させているのであり、今さら日本企業が当時の労働者に訴えられて賠償金を請求されたからといっても、もはや日本政府には外交保護権は無いのであるから、訴えられた新日鉄住金を日本政府が保護する権限は「完全かつ最終的に」消滅しており、日本政府のチカラでなんとかするというのは、どう頑張ってもムリということのようです。したがって、新日鉄住金は安倍首相の妙な口車に乗ることなく、速やかに命じられた賠償金を支払うのが賢い対応ということになるわけです。





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最終更新日  2018年11月29日 01時00分06秒
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