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2018年11月30日
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テーマ:ニュース(99443)
カテゴリ:ニュース
歴史上にあったことをテレビドラマで忠実に表現すると「日本人を貶めようとする表現だ」とクレームを言い出す者がわが国にいることについて、27日の毎日新聞夕刊は、次のように書いている;


 先日、NHKの連続ドラマ「まんぷく」を巡り、ネット上でちょっとした騒動があった。旧日本軍の憲兵がヒロインの夫になる男性に暴行する場面で「優しい日本兵が出てこない。日本人をおとしめるのか」といった批判があがり、論争になったのだ。憲兵と「歴史の忘却」について、専門家に聞きつつ、史料を渉猟して考えた。
【吉井理記】


 昨今話題の本と言えば、「日本通史」をうたう作家・百田尚樹氏の「日本国紀」だろう。

 不思議な本だ。特に戦前の日本、治安維持法や特別高等警察(特高)憲兵など治安当局による言論・思想弾圧が一切存在しなかった国のように描かれ、1923年の関東大震災の時、東京憲兵隊麹町分隊の甘粕正彦大尉らが、無政府主義者・大杉栄ら3人を連行し、絞め殺した著名な事件にももちろん言及しない。

 だから、というワケでもないだろうが先日、NHK朝の連続ドラマ「まんぷく」で、憲兵がヒロインの夫になる男性に拷問まがいの暴力を振るうシーンに「日本人をおとしめる描き方だ」といった批判の声がネットであがった。

 「論語」に「過ちて改めざる、これを過ちという」とある。負の歴史に光を当てることは「自虐」ではない。専門家によると、憲兵は現代の私たちと無関係ではない、というのだ。

 実は「まんぷく」と似たような論争、かの国民的朝ドラ「おしん」(1983年4月~84年3月放映)でもあった。教えてくれたのは小樽商科大名誉教授、荻野富士夫さん。戦前の思想弾圧に詳しく、防衛省防衛研究所などの史料をもとにした大著「日本憲兵史」(日本経済評論社)を著したばかりだ。

 国会図書館で、東京憲兵隊のOBで作る「東京憲友会」の機関誌「東憲」を読んでみた。なるほど、83年の第174号に「おしん」の作中で、憲兵が主人公・おしんが尊敬していた脱走兵を射殺する場面に対し、あるOBが「射殺は考えられず、憲兵を侮辱している」「戦前の反軍反戦運動は自由で憲兵の弾圧はあり得ない」と、NHKに抗議文を送った、とある。

 35年後の「まんぷく」はどうか。ドラマはインスタントラーメン生みの親・安藤百福さん夫妻をモデルにした立花万平・福子夫妻の物語だが、問題の場面は、戦時中、根菜切断機の製造会社を共同経営していた万平が、資材横流しの容疑で連行され、憲兵に拷問を受けるシーンだ。

 放映されると、ツイッター上に「日本兵=悪者という印象操作。NHKの悪意を感じる」「韓国人が作っているのか」といった投稿が相次いだのだ。

 ドラマは安藤氏の自伝に基づいているから、不当な批判というほかはない。荻野さんの著書に詳しいが、日中戦争前にも「反軍思想」の監視が憲兵の任務で、学者や議員の言動も抑圧された。作家の菊池寛も、関東大震災の時に無政府主義者・大杉栄と婦人解放運動家の伊藤野枝、6歳のおいの3人を虐殺したことで有名な東京憲兵隊麹町分隊に連行され、取り調べを受けた(38年11月10日付読売新聞)。「弾圧はあり得ない」ということ自体、あり得ないのだ。

 荻野さんは「憲兵がさまざまな暴力を国民や日本軍占領地の民衆に振るったことは、憲兵教習で使われた内部資料などで明らかです。戦時中はキリスト教宣教師が獄死もしている。小説やドラマなどでそんな憲兵が描かれましたが、それだけ民衆にとっても、憲兵の記憶は生々しかった。でも現在はそんな民衆の共通認識が、忘れられつつあるのでしょうか。憲兵は遠い過去の出来事ではないんです。今、安倍晋三政権は改憲に乗りだそうとしていますね。かつてのような憲兵が復活する恐れすらあるのですが・・・」

 なぜ、現代に憲兵が復活すると考えるのか? 後ほど聞くとして、もう少しかつての憲兵の実相を見ていこう。

 憲友会の全国組織「全国憲友会連合会」が編んだ「日本憲兵正史」(76年、以下「正史」)には、戦時中の中国を含むアジア各地での憲兵による残虐行為が、当事者である憲兵OBによってつづられている。もちろん「責任逃れ」や事実の矮小(わいしょう)化に見える筆致は多いが、「歴史修正」としか呼べないような書籍や言説があふれる現代からみれば、驚くほど率直である。

 例えば、旧満州(現中国東北部)にあった関東軍防疫給水部、通称「731部隊」(指揮官・石井四郎大佐の名から石井部隊と呼ばれた)による中国での人体実験。昨年8月、やはりNHKが特集番組を放映した時は「そんな事実はない」「731部隊は感心」といった声がネット上にあふれた。

 だが「正史」には、「人体実験の問題が巷間噂され、現在も多くの出版物に面白く描かれているが、これは事実で、チチハル憲兵隊などから、ハルピン憲兵隊宛て『丸太一本送る』と連絡があると、これは死刑囚を石井部隊へ送ることであった。(中略)この死刑囚にペスト菌をもつノミをくわせ、健康な人間かペスト病になっていく経過を記録研究する」と明記されている。「丸太」とは、人体実験の被害者を指す隠語である。

 荻野さんは「死刑囚とは、反満・抗日活動の容疑で捕まえた中国人のことで、日本軍が使う『逆スパイ』にならないような人は、何人かずつ憲兵が引率し、731部隊に送っていたことが憲兵側の記録に残っています。『正史』には、まだそれなりに過去と向き合おうとする姿勢がうかがえます」と解説する。

 実際、同書は731部隊のほか

▽シンガポール占領中(42~45年)、憲兵らが華僑を虐殺した事実(シンガポール側の見解では被害者約5万人)
▽シンガポールで42年2月、窃盗の疑いを持たれたインド人3人を射殺し「さらし首」にした事件
▽44年11月、フィリピン・マニラで現地住民約460人を地下留置場で窒息死させた事件

――などについて、直接・間接の憲兵の関与を認めている。

 「国内よりも、植民地や満州国のようなかいらい国家、日本軍占領地のほうが憲兵や日本軍の『恐怖政治』は過酷でした。ケンペイ、という日本語は、現地徴用された労働者を指す『ロームシャ』(労務者)という言葉とともに、東南アジアでは戦後も人々の間で生々しく生きていました」と荻野さん。

 文献を探すと、例えば42年11月から43年5月まで、日本占領下の現在の東南アジアを視察した元中央公論編集長、黒田秀俊氏は著書「軍政」(52年)で、ジャカルタの街で住民と「ケンペイ」という日本語を交えた会話をした経験に触れ「占領地の住民たちが憲兵をおそれることは非常なものであった。(中略)シンガポールでは、多少の誇張はあるにしても、憲兵隊の窓から中国人の呻(うめ)き声のきこえない日はなかったとさえいわれた」と回想している。

 余談だが、作家・百田尚樹氏が近著「日本国紀」で「大虐殺はなかった」と主張する「南京事件」について「正史」には「確かに事実であり、戦史の上からも日本軍最大の汚点として、まことに恥ずべき行為であった」とある。



 書店を歩けば、当事者たちですら認めていることに触れない、あるいは「なかった」と主張する「歴史書」があふれている。ネットの世界はもっとすさまじい。

 「『優しい憲兵』はいたかもしれませんが、それは問題の本質ではありません。憲兵自体、民衆を抑えつける存在だったからです」と荻野さん。では、現代との関わりは何か?

 自民党が2012年に公表した改憲草案では、自衛隊の「国防軍化」に伴い「国防軍に審判所を置く」(草案9条の2の5項)とある。つまり裁判所とは別に「軍法会議」を設置する、ということだ。

 荻野さんがまとめた。「軍法会議が置かれれば、かつてと同じように、捜査権だけでなく、起訴権を持つ憲兵が必ず必要になります。現在ですら、例えば07年には自衛隊の情報保全隊がイラクへの自衛隊派遣に反対する市民や報道関係者らを違法に監視していたことが明らかになった。かつての日本は共産主義はもちろん、民主主義や自由主義、個人の権利や市民生活までも、弾圧・監視され、戦争に動員されました。その役割を担ったものの一つが憲兵です。憲兵が復活するのは、決してあり得ない話ではないんです」


2018年11月27日 毎日新聞夕刊 1ページ 「憲兵と歴史修正主義」から引用

 NHKテレビが「おしん」を放送したときも似たようなクレームがあったとは知りませんでした。我々が子どもの頃は、軍人や憲兵や特高の暴力的体質を実際に見たり聞いたり体験した大人が大勢いましたから、映画やテレビでそのようなシーンを見ても「昔はそういうものだった」と思うだけで、「おしん」や「まんぷく」を見てクレームを言う人間というのは、何を考えているのか、まったく理解できません。戦前の実話に基づいたドラマを演じる中で、「こんな優しい兵隊さんがいました」などというシーンを挿入しても、あらすじとして意味をなさないわけですが、クレームを言い出す人たちというのは、ありもしない作り話をテレビで放送すれば喜んで受信料を払って視聴する、まったく理解不能です。しかも、百田某が書いたありもしない作り話の本が40万部も売れたというのですから、私たちの社会は今、かなり歪んできているのではないかと思われます。





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最終更新日  2018年11月30日 01時00分05秒
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