メディアが「嫌韓」を煽る異常な事態となっている社会で、在日の人々がどのような心境で生活しているのか、14日の東京新聞は次のように報道している;
最近のかつてなく激しい「嫌韓」の風潮にさらされ、若い世代の在日コリアン3世、4世が不安に襲われている。フェイスブック(FB)を荒らされ、テレビではコメンテーターが暴言とも取れる発言をする。子ども時代から北朝鮮による拉致問題や韓流ブームなどの影響を受けて育った世代は、何を感じているのか。
(大野孝志、佐藤直子)
今月8日、専門学校講師文英愛(ムンヨンエ)さん(35)=広島県福山市=のFBのコメント欄に突然、罵詈雑言が書き込まれた。日本から出てけ、死ね、日本で悪さばかりするな-。文さんは、父が在日一世で母は三世。10年ほど使っていて、こんなことは初めてだ。
8日だけで約40件。知人のFBをフォローしている一人が書き込んだようだ。文さんは在日コリアンが税関で北朝鮮の土産を没収された問題や、「表現の不自由展」中止の反対を書いており、それへの反応が中心だった。
警察に相談すると、相手を特定する捜査はできないと言われ、「差し迫った危険が生じそうになったら通報を」との対応だった。人権救済の申し立てを考え法務局に電話しても「弁護士に相談して」とだけ言われた。ヘイト対策法や、各地で禁止条例ができているが、現状では刑事罰はない。
レストランで近くに座った中年の男性が「韓国人の知性は幼稚園レベル」と話しているのを耳にして動悸がしたことがある。食事中、知人の「反日」という発言が聞こえた時は食べ物の味がしなかった。「声を潜めて語られていた差別や偏見が、大きな声になってきた」
「要るとか要らないとか、宗主国の目線そのものじゃないか」。東京都内の法律事務所に勤務する在日三世の李イスルさん(29)は「韓国なんて要らない」と題した今月の週刊ポストの記事に、日本が朝鮮を植民地にした時代と変わっていないと感じた。
李さんは小中高と横浜の朝鮮学校に通い、青山学院大法学部在学中、国が朝鮮学校を高校授業料無償化の対象から除外した。その後、除外は違法として元生徒らが起こした裁判を見守ってきた。先月下旬、最高裁が原告の上告を棄却。「除外は適法」とし元生徒らの敗訴が確定した。「日本の司法は朝鮮人を守ってくれない。淡い期待も打ち砕かれてしまった」と李さん。
小学6年の時、北朝鮮による日本人拉致被害者が帰国。その日は何者かに危害を加えられる可能性を懸念し、教員に付き添われて集団下校。翌日から制服を着ないで登校した。「子どもながらに、いつもと違う空気を感じた」と振り返る。
以後、日本社会の北朝鮮バッシングには驚かなくなったが、「今の朝鮮・韓国たたきは異常」と思う。
高校無償化除外に反対し、署名集めを手伝ってくれた友人が、FBで安倍晋三首相を支持しているのを見て気分が沈んだ。「私たちを苦しめている張本人を、事柄が変われば応援する。日本人の在日朝鮮人に対する無理解の根深さを感じて悲しかった。傷つくのが怖くて、私自身が内にこもってしまっている」
2019年9月14日 東京新聞朝刊 11版 24ページ 「司法は守ってくれない」から引用
高校授業料無償化については、普通の日本の高校の他にそれと同等の教育を行なっている外国人学校も無償化の対象になっており、朝鮮学校だけを除外している現在の政府の政策は明らかに「差別」であり違法である。しかし、日本の裁判所は昔から三権分立の意識が希薄で、内閣総理大臣に任命されたことに恩義を感じるというヤクザまがいの価値観に支配されているため、独立した司法としての判断ができず、政府に迎合した判決を出したことは、将来に大きな禍根を残すことになってしまっている。ポスト安倍政権では、早急に改善に取り組むべきだ。