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2019年10月19日
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テーマ:ニュース(99465)
カテゴリ:ニュース
右翼の妨害を克服して再開されたあいちトリエンナーレの企画展「表現の不自由展・その後」に対し、安倍政権は一度決めた予算の支出を取りやめるなどという不当な攻撃を、まだ続けていますが、「天皇の肖像を焼いた」と批判された美術家で映画監督の大浦信行氏が、12日の朝日新聞インタビューに応えて、次のように述べている;


 批判や脅迫で一時は中止に追い込まれた、あいちトリエンナーレの企画展「表現の不自由展・その後」。大浦信行さんの映像作品「遠近を抱えて Part2」も、作中で「天皇の肖像を焼いた」と抗議の対象になっている。天皇と表現をめぐり30年以上も格闘してきた大浦さんの目に、この国の“自由”はどう映っているのか。


――「表現の不自由展・その後」は、中止・再開という異例の展開を見せています。今回、一番驚いていることは何ですか。

 「令和と呼ばれる時代になっても日本の人々の中に天皇タブーというものがこんなに根強く残っていたのか、ということです」

――そこで言う天皇タブーとはどのようなものでしょう。

 「芸術、表現の中で天皇を扱うこと自体が認められない、そんな風潮です。どのような動機からであれ、どのような形であれです」

――表現の具体的な中身に問題があるから、ではないのですか。

 「そうとは限りません。昭和天皇が存命だった時期には、劇映画で昭和天皇を正面から演じること自体がほぼ不可能でした」

 「表現する側の自主規制が大きいと思います。表現の中に天皇を入れることは不敬だと実は多くの人が思っているのではないでしょうか。ふだんは意識の底に眠っているその感覚が、僕の映像をきっかけにして噴き出したと見ています。天皇を神聖視する感覚。近代に明治政府がつくった『日本は神聖な天皇を頂く国家だ』というイメージに由来するものでしょう」

     ■     ■

――今回大浦さんの映像は、昭和天皇の肖像写真を焼き、灰を靴で踏みにじったものだという批判を受けていますね。実際、天皇の肖像を焼いたのですか。

 「いえ。燃えているのは僕の作品です。80年代の作品『遠近を抱えて』のうちの4枚を燃やしました。天皇が入った版画です」

――「遠近を抱えて」は昭和天皇を主題にした全14枚のコラージュ作品です。古今東西の芸術作品や仏教図、人間の骨格、女性の裸体などの多様なイメージが天皇の肖像と組み合わされています。

 「天皇の肖像が燃えたという部分だけを切り取って批判されていることを残念に感じています。批判している人々のうち映像(約20分)全体を見た人は、まだ少数にとどまっているはずです」

――SNSでは、誰かが映像の一部分を切り出した短い動画が見られます。私も最初にそれを見たときは、「大浦さんが天皇の肖像写真を焼き、その灰を踏みにじった作品であり、天皇批判を表現している」との印象を持ちました。

 「誤解です。残念です」

――ただ、焼かれたのが作品だとしても、その中に肖像が含まれていたのは事実ですね。人の肖像が焼かれる光景がそもそも、見る者の心を痛ませるものでは?

 「そういう側面もあるとは思います。ただ理解してもらえるかどうかは分かりませんが、僕にとって燃やすことは、傷つけることではなく昇華させることでした」

――正直よく分かりません。

 「祈りだと言い直せば伝わるでしょうか。燃やすという行為には、神社でみこしを燃やすような宗教的な側面もあるはずです。僕は今回の映像で、30年前から向き合ってきた『内なる天皇』をついに昇華できたと感じました。抹殺とは正反対の行為です。そもそも、もし天皇を批判するために燃やしたのだとしたら、そんな作品は幼稚すぎて表現とは呼べません」

 「灰を踏みにじったと批判されているシーンも同様です。踏みにじったと見れば天皇批判の行為に映るでしょうが、残り火を足で消火したと見る人には昇華を完結させた行為と映るはずです」

――「自分の祖父の写真を焼けと言われて、焼けるのか」という反発も自然だとは思いますが。

 「常識でいえば、もちろん共感できます。ただ表現する行為は、日常や常識というものの最も遠くへ身を一度置く作業が必要です。本質的に現実社会との食い違いが避けられないのです。どうしたら常識から見方をずらせるかが課題なので、常識の範囲内で表現すべきだとの要請には従えません

 ――自分本位すぎると批判されたら、どうこたえますか。

 「『すみません、そのようにしか生きられないのです』と応えるしかないと感じます。芸術とは、爆弾や毒をはらむものです」

――映像を見ると、作品を焼いた人物は大浦さんではないのですね。まるで戦争中の従軍看護婦がなぜか現代によみがえって焼いたかに見える、不思議な作品です。

 「作中で女性は文章を朗読しています。悲劇的な戦闘として知られるインパール作戦に従軍した19歳の女性が出撃直前に母親に出した手紙です。『私は死んだら靖国にまつられるのです、そのときは、うちの子は偉かったとほめてくださいね』という手紙で、僕は胸をえぐられました。『天皇の戦争責任を追及した映像』と解釈する人もいますが靖国への深い思いも刻まれており、多義的です」

――天皇と表現をめぐって右翼側から抗議を受けるのは今回が初めてではありませんね。今回の映像に登場したコラージュは、1986年に富山県立近代美術館に出品され、のちに右翼団体などから不敬だと攻撃されたものです。

 「美術館や富山県庁には右翼の街宣車が全国から50台以上も押し寄せたと聞いています。私を狙ったテロ行為を警戒して、自宅にも警察の警備がつきました」

――美術館はその後の93年に、大浦さんの作品が載った図録を焼却処分しました。

 「そこまでやるのか、と思いました」

――右翼思想を持つ人物の来訪も受け、焼却を迫られましたね。

 「ある宮司が工房に来て、『遠近を抱えて』を買い取りたいと言いました。買ってどうするのか尋ねたら、焼いてこの世から抹殺すると言われたので、売れるわけないだろうと断りました」

――映像を見た人の多くが、大浦さんが今回自作を焼いたのは図録が焼かれた富山の事件を下敷きにした表現だと見ています。

 「その解釈もありえるのでしょうが、30年近く前の件へのアンサーやリベンジを意識して創作したわけではありません。あくまで直観に従って焼いたまでです」

     ■     ■

――そもそも約30年前、なぜ天皇が主題になったのでしょう。

 「当時は芸術家を目指して米ニューヨークに住んでいて、アイデンティティーの不安に襲われました。自分とは何なのかと考え、裸になって僕自身の内面を見つめ直したとき、意識の奥底に『内なる天皇』がいると感じました。皮膚の毛穴の中にまで入り込み、意識の奥にあるものです。そうした自分自身の底にたゆたうもの、かつて自分の中を通り過ぎていったものなどの様々なイメージを組み合わせたのが『遠近を抱えて』です。つまり僕の自画像です」

――思想家・竹内好(よしみ)が残した有名な視点、“一木一草に天皇制がある”が思い出されます。

 「その感覚に近いものです。天皇への肯定や否定ではありません」

――とはいえ今回は、天皇にかかわる表現でまた社会の一部と衝突した形ですね。30年前と今回、違うところはどこですか。

 「前回は基本的に右翼関係者による抗議でした。しかし今回は一般市民からの批判も可視化されています。しかも、実際には作品を見ていない人たちの間で批判の情報が拡散されている。ネット社会ならではの事件だと感じます」

――論争的な作品を公的施設で展示しようとした津田大介・芸術監督の姿勢をどう評価しますか。

 「試みたこと自体は評価しています。ただ彼が天皇タブーをどこまで深く理解していたか、本当に腹をくくっていたかは疑問です」

――「不自由展・その後」の再開をどう見ていますか。

 「再開は歓迎しています。ただ、一度中止になったことや文化庁が補助をやめると宣言している問題は消えません。萎縮と自主規制がさらに進んでしまうでしょう。日本を『天皇の表現がない社会』にする決定打になってしまうかもしれません。表現者が勇気を持って、表現を封印しない道を探し続けることが必要だと思います」

     *

 おおうらのぶゆき 1949年生まれ。富山県立近代美術館に出品した版画「遠近を抱えて」が抗議を受け、図録が焼却処分された。映画「靖国・地霊・天皇」など。


2019年10月12日 朝日新聞DIGITAL 「(インタビュー)天皇は「表現の自由」か」から引用

 大浦信行氏のインタビュー記事は、これまでにも何度か読んだが、どれもあまり要領を得なかったのに比べ、この記事は、インタビュアーの質問が我々の意識とよくシンクロしているようで、大浦氏の回答も理解しやすいという印象を受けました。天皇の写真を燃やして、その後で灰を踏む動作は、天皇制批判ではなく、自分なりの祈りの動作を完結させる行為に過ぎない、という説明は、「なるほど、そうなのか」と納得できました。劇映画の中で天皇を扱うのは畏れ多いことで不敬である、などという観念は、明治の政府が国民支配の道具として活用した天皇制イデオロギーに過ぎず、日本の伝統などというシロモノではないことを、私たちは認識するべきと思います。





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最終更新日  2019年10月19日 01時00分07秒


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