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2020年01月06日
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テーマ:ニュース(99376)
カテゴリ:ニュース
昨年暮れの東京新聞に、哲学者の内山節氏が昨今の世界と日本の政治の状況について、次のように書いている;


 何かを判断しなければいけないとき、私はよく、自然はこの問題をどう思っているのだろうかと考える。自然は原発を推進してほしいと考えているのか。温暖化や、いまの世界のあり方を、自然はどうとらえているのか。

 日本の伝統的な考え方では、社会とは自然と人間によってつくられているものだった。人間の論理だけで、勝手に社会をつくってはいけないと人々は考え、たえず自然という他者に思いを寄せていた。だが現代は、そういう思いがなくなって、人間の論理だけで社会づくりがすすめられる時代に変わった。

 この一年を振り返ってみると、私には今年を象徴するのは、桜を見る会をめぐる一連の出来事だという気がしてくる。なぜならそれは、権力は腐敗するということを立証する出来事だったからである。

 20世紀を代表する社会学者であるマックスーウェーバーは、「職業としての政治」のなかで、国家は暴力の独占によってつくられた強い権力機関であると述べていた。だからこの権力にたずさわるものは、腐敗、堕落しやすい、と。そうならない方策として、彼は政治にかかわる者たちに高い倫理観、道徳観を求めた。

 だが今日の世界をおおっている状況は、そんなことでは解決がつかない事態である。倫理観など持ち合わせてはいないとしか言いようのない政治家たちが、世界中で跋扈(ばっこ)している。権力の維持と取引しか念頭にないような人たちが、多くの国で大統領や首相の座についている。

 そのひとつの表れが、桜を見る会の出来事だった。税金や権力を私物化しても平気な人々が、日本の政治を握っている。その人たちに高い倫理観を求めても、そもそも倫理観など持ち合わせてはいないのだろう。

 今日の政治とは、権力を掌握するための扇動ゲームになってしまっているのである。アベノミクスという何年やっても何の成果も上がらない経済政策で国民を扇動し、外国の脅威で扇動する。野党批判で扇動し、女性活躍、働き方改革などの扇動スローガンを次々に打ち出し、格差社会の現実や、加計学園の獣医学部開設などであらわになった権力の私物化から、人々の目をそらそうとする。このような扇動型の腐敗政治の象徴が、桜を見る会をめぐる一連の出来事のなかにも表れていた。

 扇動政治とは、人々を扇動によって誘導し、自分たちの道具として使う政治のことでもある。アメリカのトランプ大統領にとっては、支持者は自分の権力を維持するための道具にすぎない。だからその「道具」を維持するために、さまざまなキャンペーンが繰り広げられる。このかたちは日本でも変わらないが、共通しているのは、自分と対等の他者がいることを認めていないことである。自分に忠誠心を見せる人だけで権力を固め、権力維持のための道具として国民を扇動する。この構造のなかでは、自分と対等の他者は存在しない。

 そういう政治が世界中に広がっているのを見ていると、私には他者を認めなくなった時代が感じられてくる。一緒に社会をつくっているメンバーとして自然という他者を見ることがなくなった時代は、他の人々という対等の他者も見失わせたのである。

 現在私たちに求められているものは、そういう時代と対決する視線をもちつづけることなのだろう。
(哲学者)


2019年12月22日 東京新聞朝刊 11版 5ページ 「時代を読む-権力者の『扇動ゲーム』」から引用

 昨年亡くなった中曽根元首相は「戦後政治の総決算」をスローガンにした改憲論者であったが、自民党総裁選に勝利して組閣をするときに官房長官に護憲派の後藤田正晴氏を起用したのは象徴的な人事であった。一国の首相ともなれば、選挙のときの支持者だけではなく野党支持者も国民であることを理解しているから、全国民に係わる憲法論議ともなれば、反対派の意見もよく聞いて取り組まなければならないという発想が出てくるわけで、それだけに憲法論議は一朝一夕に出来上がるものではありません。しかし、高い倫理観や道徳観などとは無縁の安倍首相ときたひには、批判的な声は即座に敵視し「こんな人たちに負けるわけにはいかない」などと聴衆を扇動する始末で、こういう人物が首相をしている下では、うっかり憲法論議を始めたりすると、国民はどんなペテンに会うかも分からない状況ですから、憲法審議会の運営には慎重であるべきです。「そういう時代と対決する視線をもちつづける」とは、そういうことだと思います。





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最終更新日  2020年01月06日 01時00分10秒


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