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2021年01月14日
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テーマ:ニュース(99462)
カテゴリ:ニュース
トランプ氏はアメリカの大統領なのに、なぜか日本にもごく一部ではあるが熱烈な支持者がいるという不思議な現象について、医師でエッセイストの香山リカ氏が月刊「創」2月号に、次のように書いている;


(前半は省略)
 日本に限らず、アメリカでも同様のことが起きている。大統領選でバイデン氏に敗れたトランプ大統領は自身の負けを認めようとせず、逆に民主党側に大規模な不正があったと言い出し、各地の裁判所に告発を始めた。また、支持者たちは「不正の証拠」としてさまざまな情報をネットにあげ、動画で流した。支持者たちの中心はQアノンという「世界はティーブ・スデート(闇の国家)に支配されている」と真顔で主張する陰謀論者の集まりだが、アメリカではいまやそれが一大勢力となり、このたび1名の下院議員までが誕生する予定となっている。

 Qアノンなどトランプ支持者がネットにアップする情報は、すぐに報道機関や有志によるファクト・チェックを受け、大部分がデマだと即座に特定されている。たとえば、「トランプ票がトラックで運ばれて大量に山に捨てられた」という動画がツイッターで拡散されたが、実際には「2016年のサウジアラビアの衛星放送局が放映した、期限切れの鶏肉を廃棄しているニュース動画」であった。しかし、日本のツイッターでそれを拡散させて間違いを指摘された人は、いっこうに謝ったり削除したりする様子はない。情報発信者も受け取る側も、その情報が正確かフェイクなのか、気にしていないのだ。それよりも重視されるのは、「やっぱり。そうだと思った」と腑に落ちたり膝を打ったりできるかどうか、つまり”納得感”なのだろう。

 真実かどうかよりも納得感を重視する傾向は、当然のことながら容易に歴史修正主義にも結びつく。とくに日本では、GDPが中国に抜かれどんどん水を開けられ、科学技術力や学力なども国際的な順位が下がる一方というのは、いくら否定したくてもできない事実である。そうなると目を向けるのは、いくらでも改ざんのできる過去ということになり、太平洋戦争に関して「従軍慰安婦は捏造」「日本はアジアを占領したのではなく解放した」といった歴史修正が盛んになるのも必然的だ。また現在の問題でも、数値化されにくい差別問題などについては「そんなものはない」と主張され、被差別の経験を語る在日韓国人や外国人労働者に激しい敵意が向けられる。

 驚くべきことに、アメリカ大統領選のあと、日本でもトランプ支持を表明し、アメリカの陰謀論者たちと同様に民主党の不正選挙工作を語る人たちが大量に現れた。その中には、安倍前総理と昵懇の仲である作家の百田尚樹氏、門田隆将氏、ジャーナリストの有本香氏などの著名人も含まれている。そして、同し安倍支持派でもトランプ勝利を消極的にながら認める評論家の上念司氏やユーチューバーのKAZUYA氏は、これまでのファンたちからも「失望しました」と激しく糾弾されているのである。

 私か驚いたのは、当選が確定的となったためバイデン氏が勝利演説を行ったユーチューブの動画に、日本だけはどの放送局アカウントから発信されたものにも「高評価」の数倍程度の「低評価」がついたことだ。トランプ大統領寄りといわれているアメリカの放送局FOXニュースでさえ、高評価と低評価はほぼ同数であり、その他の英米仏などの局では高評価が何倍も多かった。これだけを見ると、世界でいちばんトランプ大統領の支持者の比率が高いのは日本ではないか、と思うほどだ。

 アメリカの報道では、Qアノンなど陰謀論の支持者は「将来への不安や権力に対する不信感を持つ人」と分析されている。はたして日本のQアノン支持者、いわばJアノンとでもいうべき人たちも同じなのだろうか。

 考えてみれば、12月半ばがすぎても「最後に勝つのはトランプ」などと言っている識者たちは、安倍前総理をただ支持していただけではなく、直接、会って食事をするような人たちだ。安倍氏と親しい櫻井よしこ氏は、『週刊新潮』の連載に『米新政権下、日本の気概が問われる』というタイトルをつけたが、本文の冒頭では「米国大統領選挙の結果はまだ正式には確定されていない」と未練たっぷりに書く。しかも、これが12月10日号の話なのである。そういう意味では、安倍総理という絶対的な後ろ盾を失った彼らは、まさに「将来への不安や権力に対する不信感を持つ人」なのかもしれない。

 評論家の赤城智弘氏は、「トランプの逆転を諦めない一定数の日本人が主張する『陰謀論』と『仲間意識』の正体」(『現代ビジネス』11月18日掲載)というウェブ記事の中で、彼らの多くがSNSやユーチューブの情報を信頼していることを指摘し、その中核にあるのは「共にオールドメディアと戦う仲間意識」だと指摘している。たしかに「新聞やテレビはウソばかり。自分たちこそ真実にアクセスできている」という優越感や連帯感が、そこにはあるのだろう。だからこそ、百田氏はバイデン氏勝利を認めたKAZXUYA氏に激怒し、訴訟さえちらつかせているのである。

 このように、長く続いた安倍政権が終わり、頼みの歴史修正ではどれくらいの本気度で臨んでくれるかいまひとつわからない菅総理を支持しきれない人たちにとっては、Qアノン的な陰謀論こそひととき現実を忘れ、”仲間との絆”を強めてくれるものだったことはたしかだ。

 ただ、そこで残るのは、なぜそこで熱狂的に傾倒するのがトランプ大統領なのか、という疑問だ。トランプ氏は安倍氏とも何度もゴルフをするなどウマがあったとはいえ、格段の日本びいきとは思えない。それどころか、在日米軍駐留経費の日本側負担を現在の4倍以上に当たる年間80億ドルに増やすよう求めるなど、容赦ないところもある。

 ウクライナ出身で英国で活躍するジャーナリストが書いた『嘘と拡散の世紀』(ピーター・ポメランツェフ著、築地誠子ら訳、原書房、2020)という抜群に面白い本の中で、著者は、トランプ氏は「事実の重みを放り投げて、辛気臭い現実にざまあみろと言ってやるという子供じみた喜び」を支持者に与えてくれた、と述べる。現実、事実、真実には認めがたいもの、辛いもの、苦しいものなどが含まれているが、トランプ氏はツイッターでそういうものすべてをひとことで「フェイクーニュースだ!」と切って捨てる。「そうか、それでいいんだ。自分に都合が悪いものや見たくないものを突き付けられたら、フェイクだと言えばそれですむんだ」と目からウロコが落ちる思いを昧わった人は、実は世界に無数にいるのではないだろうか。

 そして、そういう人たちはとくに日本に多かった、ということだ。それはつまり、日本社会にはそれだけ、目を背けたくなる現実、認めるのがはばかれる真実がゴロゴロしているということに他ならない。言うまでもないが、それは経済の衰退に加えてコロナ対策の失敗、そしてその中で強行しようとしているオリンピックへの強い不安などである。

 とくに安倍晋三氏が政権の座を去ってからは、現実から目を背けさせてくれる人がいなくなった。これまでのように「悪いのは朝日新聞だ、北朝鮮だ、日教組だ、悪夢の民主党政権だ」と外部に敵を作ってくれ、自分の生活や内面を直視せずにいさせてくれる安倍氏は、彼らにとってまさに夢のようなリーダーであっただろう。

 トランプ氏を支持したくなる社会は不幸なるかな。クリスマスもあったせいか、そんなフレーズが頭に浮かんだのであった。いまは無事にバイデン新大統領の就任式が終わり、Jアノンたちも「それでも勝ったのはトランプだ」といった共同幻想から脱出できるように、と祈るばかりである。


月刊「創」 2021年2月号 78ページ 「『こころの時代』解体新書-なぜ日本にはトランプ再選に執着する人たちが多いのか」から引用

 安倍晋三やドナルド・トランプが何故人気があるのか、香山氏のこの考察は真実を言い当てているように思われます。かつては「ジャパン・アズ・ナンバー・ワン」とまで言われた経済力も、韓国や中国に追い越された今は、現実を見ても救われず、どうにでも改ざんが可能な歴史修正主義に逃げ込む。なるほど、そういうカラクリだったのかと思いました。しかし、現実の世界で、トランプ氏も適当なところでバイデン氏の勝利を認めて、普通に引継ぎを行えば、4年後に再挑戦の目もあっただろうに、暴徒を扇動して死者まで出すような失態を演じてしまったのでは、「再挑戦の目」は完全に消滅したとみるのが妥当ではないかと思います。





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最終更新日  2021年01月14日 01時00分06秒


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