ミステリーの陰に人生の深遠を覗いてしまう、というのはアガサ・クリスティーの技。
北村薫の場合は女性がさりげない日々を過ごしていくうちに遭遇する不思議、しかもかもしだす雰囲気がなんとも好ましい。
この「秋の花」は秋、読むにふさわしい。巻頭にある「秋海棠(しゅうかいどう)」の写真をじっと見る。
未読の時は秋らしさを、読了後は意味がこもってくる。
葉のハート型は心、可愛らしいピンクの花が枝分かれして咲くさまは心模様、芯の黄色は心のともし火。(お手持ちの方はご覧ください 笑)
私はもちろん知らなかったのだが、この花の別名がミステリーにかかわってくるなんて、やはり秋…。
やっぱり外の登場人物の名前はくっきりしているのだが、ヒロイン「私」は誰でしょうというのも奥ゆかしいやら、気にかかるやら。
「空飛ぶ馬」「夜の蝉」
「秋の花」「六の宮の姫君」「朝霧」